1740. 先行感想 - ONE PIECE 第513話『救えないっ!!!』

ルフィのかつてない挫折、嗚咽、悲鳴、絶叫には強烈な動揺を誘われました。中でもナミさんに涙で命乞いさせて救えなかった演出は痛烈です。圧倒的な力差から、仲間を一人、また一人と奪われて絶望し、完膚なきまでに挫折したルフィ。これでルフィの成長伏線は出揃いましたね。


キーポイントは『3日』

今話で麦わら一味が壊滅したり、仲間集めの壮大な旅が始まったり…なんて、絶対にありません。くまの耳打ちに従いレイリーが見過ごしたシーンから考えても、ルフィたちは必ず全員無事に再会を果たせることでしょう。

今後の展開としては、なんやかんやあって3日後には、ルフィ達は全員、コーティング済みのサニー号に搭乗して魚人島を目指すはずです。これは、物語展開の都合上から逆算した結果です。

  • レイリーがサニー号のコーティングに必要な期間は3日
  • くまの肉球で弾かれた人間は「3日3晩」空を飛ぶ
  • ナミのログポーズは魚人島で固定されている

1〜2番目の条件は「3日」というキーワードで一致しており、ここに尾田先生の恣意を感じます。3番目の条件は非常に重く、一人でもシャボンディ諸島を出てしまったら、再びこの島へ戻ることも、この島から出て回収に向かうことも不可能という意味です。

くまは肉球で人間をはじき飛ばす際、必ず「旅行するならどこに行きたい?」と問います。これはおそらく、その瞬間に被体者が連想した場所へ、3日かけて弾き飛ばす類の能力だと予想します。「3日」は時間、「場所」は空間ということで、にきゅにきゅの実の能力は『時空間を弾く能力』ではないでしょうか。

さて、「旅行するならどこに行きたい?」の問いかけを皮切りに、麦わら一味は全員、どこぞへ飛ばされてしまいました。彼らはどこへ飛ばされたのでしょうか。答えは限りなく明白です。麦わらの一味の強い結束を、我々読者は何度となく目撃しました。答えは「仲間のところ(この場所)」に決まってます。

つまり、三日後のこの時間、この場所に『時空間を弾かれて』、ルフィ達は一人残らず再会を果たすのです。くまから耳打ちされたレイリーもまた、三日後のこの場所で、ルフィ達を待っていることでしょう。コーティングを終えたサニー号を手土産にして。

ところで、ゾロを飛ばす前にPX-1が肉球ではじき飛ばされていました。意思のないパシフィスタ(兵器)は空間跳躍できるのか?

兵器というか、アレにも赤い血が流れていたので、おそらくはDr.ベガパンクの技術による『くまのクローン人間を素体にした改造人間』だと推察できます。そうなると、やっぱりPX-1にも意思はあるのかなあ…とかなんとか。割とどうでもいーこと考えちゃいます。


『麦わら一味が完全崩壊を喫した』

仮に黄猿がくまの能力を熟知しているしろ、肉球に弾かれた麦わら海賊団は一人残らず離散したと誤解したはずです。つまり、今話時点で『麦わら一味は崩壊し、処罰は決着した』と海軍全体に伝令が渡るのも自然です。

ラストのナレーションは、(今日の時点で)『海軍や世間的には、麦わら一味が完全崩壊を喫したと認識された』という説明に過ぎないと読めます。その実、一味は三日後に復活を果たし、海軍の裏を掻くという。そんな逆転展開を期待します。

果たして海軍大将が、そこまでルフィ達の結束を見破れないものか? そのただ一点が気になるところです。黄猿とルフィたちは今回が初対面なので、辻褄合わせはどうとでもなりそうですが…。


「もう二度と会う事はない」の真意

スリラーバークの戦いで、くまとドラゴンは面識がある演出が為されました。セリフの細部までは覚えていませんが、くまは単に「ドラゴンの存在を知っている」だけでなく、「ドラゴンとルフィが似ている」とまで語ったハズです。(記憶違いだったらどうしよう…)

革命軍の指揮を執るルフィの父・ドラゴンに近しい、あるいは近しかった改造人間・くま。彼の正体はワンピース世界の謎や核心に迫りそうで、相当な重要人物だと感じます。くまの正体を勘繰ると、ひとまず以下のような過去が読み取れます。

  • 海軍に従事する王下七武海の一人
  • 海軍と対峙する革命軍の長ドラゴンに近しい
  • 海軍の天才科学者Dr.ベガパンクの手で改造人間手術を施された

三つのキーワードを「ひとつなぎ」して強行解釈すると、つまりこう推理できませんか。『革命軍に属していたくまだったが海軍に捉えられ(る等して)、その能力を見込まれ、海軍に服従するよう改造手術を受けた』と。

くまが二度もルフィ達を助けたのは、『ゾロの心意気』に誠意で応えたのは勿論、助ける対象がドラゴンの息子だったからとも捉えられます。(大分強引ですが)

そうすると、くまが別れ際に言い放った「もう二度と会う事はない」は、まったく違った意味を帯びます。この言葉は、ルフィへの捨て文句ではなく、自分の命運はここで尽きると覚悟した男のセリフだったのでは。黄猿の「これは大問題だよォ」の脅しからも、くまは立場を弱くしたと確定しています。

そして恐らく、海軍はくまを処刑しないのではないでしょうか。Dr.ベガパンクから更なる改造手術を受け、『完全兵器』と化したくまが三度麦わら一味の前に立ち塞がるとしたら。二度も命を救われたルフィはくまに感謝する一方、医師を剥奪されたくまは問答無用で戦闘に入るという、ある種劇的な悲しい戦いを予感してしまいます。


今後のルフィたちよりむしろ、今後のくまの進退に注目したいです。