1792. 週刊少年ジャンプ08号

こちら千葉でも先週明けに雪が積もりました。二週間長にわたるWJのない生活――その寂しさを埋めるように、大はしゃぎで庭の雪をかき集め、雪だるまを2セット作り、その代償に腰がバカになりました。一週間も経ってもこの腰痛、治る気配がありません。心は少年、でも体は今月末で32歳……。今週の感想は、部位破壊された腰との戦いですっ。

今週のWJアンケートハガキ

アンケート票の選考に際しては、純粋に『今週号で面白かったマンガ』へ投票するポリシーです。本号の投票結果はこちら。

今年再開したジャンプ感想ですが、以前とは勝手が違って大苦戦中です。最たる違いは、自分がジャンプを読み終えても感想できない点。そこからさらに、お嫁さんが読み終え、家族会議で本誌を総評し、アンケート対象を決定して、これでようやく感想のお題が決まります。どのマンガを感想するか事前に判断できないので、ネタの下準備もままなりません。以前までの感想はWJ本誌に三色ペンでメモを入れながら読み進めるスキル使いで戦っていた。だが現行のシステムは、以前のノウハウが一切通用しない……。まさにスキルが通用しないスタイルの戦い状態です。

腰痛、感想スタイル、そして合間に子守もしてお嫁さんのご機嫌とりも欠かせません。ジャンプ感想者はいったい何と戦ってるんだ……。

以下、本号でアンケート票を投じた作品を感想します。

* 銀魂空知英秋) - 第431訓「神ゲーと糞ゲーは紙一重

『原作者』という名の免罪符は、はたしてどこまで通用するのか。検証実験のために、超えちゃいけないラインを考えずにアクセル全開で踏み込みました。空知先生の笑いの原点は、このハラハラするスレスレ感だ! そう再認識させてくれた、たいへん満足のいく一本でした。ジャンルは『キミ(読者)が不安になるRPG』です。

銀魂ゲーの購入者は、本誌やコミックス購読者層に包含されていますから、本編でゲームをイジるこの企画は、絶大な宣伝効果があったハズです。けれども、すごろくのゲーム要素を初っ端から切り捨てたのは断捨離しすぎ。ああ、これが『銀魂無双(六)』の正体だったのか。

さらには「別業界だから」と素知らぬ顔で各所のメジャータイトルへ無礼を働くくだりも、読者のこっちが心配してしまうありさまです。新作ゲームを応援する企画が、ふたを開けたらゲーム業界の地雷原をさっそうと駆け抜けてバンナムと正面衝突事故を起こしてしまった……そうこれは事故なのです。

編集が通したネームなのだから、無双六でテイルズオブっても土管工がハザード起こしてもきっと許されるのでしょう。さてギャグ分が補給されたところで、次の9話がシリアスなバトル展開でも戦えますね!(ごめんなさい無理です)


* ONE PIECE尾田栄一郎) - 第695話「任せろ!!!」

役者が揃った! 脇役バトルもスカッと決着した! 久々にワンピを読んで昂ぶった回でした。バッファローとベビー5の実力が不明瞭だったので少し煮え切れませんが、ガロン砲の直撃に耐えるってそれ、実はすごく強かったんじゃあ……。けれどいいんでしょうか、出張版といえどガロン砲をそんな安売りしちゃっても。

パンクハザード編は麦わら一味に個々の敵幹部戦を立てず、それでいて仲間が新戦力を発揮する見せ場もあり、振り返るとバトル構成は工夫されていたと思います。かつての弱腰ペアが、ヘタれ台詞を繰り出しながらキメるシーン、いいですよね。緩急つけた『カッコイイ演出』は見事でした。ウソップの海楼石の錠は、シーザーがルフィたちを捕縛した時に使ったものを、牢から脱走する最中に拝借してたんでしょうね。全体を通してパズルが組み合わさってく感覚も気持ち良いです。

ナミさんが、その握り慣れたテンポの棒を淫靡にもてあそんでくださいました。彼女の白い指先は黒光りの剛直をうっすらと撫であげ、細い手首を返すテクでテンポのソレを天へ仰がせるのでした。『うっ……待ってくれ、急にそんな、乱暴な扱いぃッ』そんな情けない男の声を制するかのように「いいえ 逃げられません♥」とお姉さんがサディスティックにリードする言葉責め。同時にテンポの棒を下方へ「クイッ!!」と動物の躾けのような手際でねじ伏せるのです。バリバリッ、ゴロゴロッ――。そう、テンポの棒はガマンの限界を迎えたのだ。まるで雷にでも打たれたかのように。久々にワンピで昂ぶった回でした。

海上で目覚めた人物は青キジでしょうか。赤イヌに破れて行方知れずだった彼は、パンクハザード周域で傷を癒していたのかな? あるいはスマイリーの爆発で、この地に封じられていた身柄が解放されたとか?

ところで、クザンと麦わら一味の再開は、時系列的にフィルムZが最初なんでしょうか(まだ観てない...)。だとしたら、クザンはルフィらとパンクハザードで出会わないし、ドフラミンゴとぶつかる展開を予感させますね。海軍大将・クザンと王下七武海・ドフラミンゴの衝突となれば、立場の差から双方がどう出るのかも読んでみたいシチュエーションです。

* 新米婦警キルコさん(平方昌宏) - 第8話「キルコの自宅訪問」

いつものドタバタコメディ回、と思うなかれ!

キルコさんの過去設定を、この一話で小気味よく、話の本筋に違和感なく溶け込ませ、平常運転しながらさらっと解説してくるとは! 自分、平方先生を侮ってました。キルコさんの表情を100パターンくらい描写できるすごい萌え作家」と思い違いしてました。確かにこれまでの回も一話ごと無難に畳んでたけれど、平方先生の構成力、ひょっとしたら実はものすごいのかも……。

いやいや、何も平方先生やこの作品を馬鹿にして、こんな感想してんじゃないですよ。昨今は読み切りマンガなんて「ハイ! ここから主人公の過去回想と説明ね!」の紋切り型ばかりじゃないですか。コマの隙間を黒塗りにしたら許されるみたく勘違いしてる作家先生、すっごく多い! 今起こっている出来事に関係ないなら、そんな情報って冗長。隠し玉は絶妙のタイミングで明るみにするから効果的なのに。

そこいくと今週の話ってばスゴく締まってる。「そろそろキルコさんの過去を説明したいな〜。7才からファントムに所属してて〜、16歳の頃には隊長まで張ってて〜、”隻眼の山猫(ワン・アイズ・クーガー)”で〜!」とかゆう雑音が、驚くほどすんなりインプットできました。きっと『キルコの可愛らしい照れリアクション』がご褒美効果になって、説明の小難しさを解消したのでしょうね。

平方先生って、勉強用の教材マンガとか描いたら、その筋で才能発揮できそう。うん、やっぱデビューした雑誌を間違ってる気が……。

* ニセコイ古味直志) - 第58話「フンシツ」

アンケ票以外からのプラスワン感想。

オレがニセコイに抱いていたイメージは、率直にいって、ネガティブな感情ばかりでした。「どうせジャンプのラブコメなんて、毎話ハーレムと輪番でイチャイチャするために、ってつけた都合のいいイベントを用意して、惜しくもくっつかないけど可愛ければ許されて、でも終盤はマトモな人間性を発揮して付き合っちゃうんだろ?」とか、知ったふうに構えてたんです。

ある時、とある予想が思い浮かびました。それに至ったとき、「えっ、古見先生……まさかなの!?」と心底震えたんです。自分が、急に恥ずかしくなりました。ニセコイを甘く見ている読者は、もしかすると、古見先生の掌の上で踊ってただけなのかも……。

楽はハーレムラブコメ主人公が抱える三代疾患を例外なく患っています。これらはは現代日本でハーレムを形成するための技能です。二次オタ業界では長らく蔓延し、もはや常識と化しました。

  • 難聴 : 都合の悪い告白は絶対に聴こえない(でも終盤なら聴こえる)
  • 鈍感 : 都合の悪いアプローチは絶対に気づかない(でも終盤なら気付ける)
  • 痴呆 : 都合の悪い出来事は絶対に記憶から消去される(でも終盤なら思い出せる)


ところで楽は、幼少の頃に少女と「私達が大きくなって再会したら『鍵の中のものを取り出す』から、その時は結婚しよう」と約束しています。その願掛けとして、楽は錠のネックレスを、少女(達)は鍵を所有したのでした。

楽には幼少の記憶はありません。不自然です。楽は『難聴』『鈍感』『痴呆』を患っています。不自然です。楽は周囲の女の子から異様にモテますが、毎回フラグをへし折ります。不自然です。いったい『鍵の中のもの』とは何なのか。

鍵の中のものとは、楽が『誰か一人と結ばれる権利のようなもの』ではないでしょうか。

鍵を持つ三人の女の子。楽が自分の意思で誰か一人を選ばないかぎり、結婚できない制約があるとしたら。錠と鍵にかけた呪い(まじない)は、恋愛成就できない呪い(のろい)として、楽の純潔(!?)を守り続けているのだとしたら。一例をあげるなら、ザクシャインラブの呪いが「とてつもない恋愛成就力を発揮するお守り」の御利益を跳ね除けるほどの力を備えていたとしたら。

楽が選択した誰かの鍵で錠を開けたとき、『ニセコイ』が終わるとしたなら。

これまでバカバカしく感じて、もはや嫌悪感すら抱きはじめていた「イチャイチャするためのご都合展開」そのすべてが、一転して納得の伏線へと変貌します。タイトルの意味や受け止め方まで一変します。ニセコイはもはや、オレの中で「ラブコメマンガを皮肉る邪道マンガ」です。ニセコイの女子キャラに萌えてる読者も、知ってるふうに構えた読者も、双方にダメージを残すことになります。古味先生の一人勝ちですよ。

……という脳内設定を補完して読むと、あんなにも苦手だったニセコイの理不尽な展開が、ものすごく、緊張感たっぷり! 鍵の呪いは頑張り屋さんなので、どんな角度からでもトリッキーなフラグ破壊を見せてくれるのです。


プラスワン枠は読み切り作品を言及するために用意したものだったんですが、今週、天野先生に贈りたい言葉はこの一言だけです。『悪魔の焔』の見開き、めちゃんこカッコイイ! *1

関連リンク

*1:これ以上の言及は誰も得しないので慎みます……!