1791. 週刊少年ジャンプ06・07号

こないだジャンプ感想したら、その晩には次のWJが店頭に並んでました。今一番書き初めしたい四文字熟語は「今期絶望」。数年前のトラウマがじわじわ思い出されてきます。読んだら感想、書いたら購読、力尽きるまで無限ループ。これすなわちジャンプ感想の呪い。

今週のWJアンケートハガキ

アンケート票の扱いに際しては、ファンの作品だからってごり押ししません。純粋に『今週号で面白かったと思ったマンガ』へ投票するポリシーです。本号の投票結果はこちら。

投票先の選考会議では意見が大きく割れまして。「愛娘さんの進学先は公立でいいか私立にするか」くらい真剣な家族会議が、ド深夜のAM2:00に意見交換されました。「過去のフルカラーは勝負の決着がついて爽快だったけど、今回は黄瀬が主人公みたいでフルカラーのタイミングを見誤ってる」「暗殺教室の全面プッシュがすごくて黒子のフルカラーが霞んだ」「キルコさんは表情の描き分けが細かい!」「ヒナタと結ばれてもカモフラだからナルサス派はまだ諦める必要ない」「スイッチかわいい」「HUNGRY JOKERにハマれない理由をそろそろハッキリさせたい」「食戟のソーマは料理マンガなのに、食材を踏みつけたりちゃぶ台返しするから論外」「銀魂、やっと終わった……」「伊達先パイを評価する前に岡田あーみんのこの話を読んで!(→その場で読まされるハメに)」などと全連載を講評してたらAM4:00を回ってた。

最後は「各自10点で配点して合算トップ3を投票方式」でまとめました。二時間がんばった末の採点結果はこちら。

作品 id:SnowSwallow id:iolite 合算
氷上布武 4 2 6
SKET DANCE 0 5 5
★ 烈!!!伊達先パイ 4 0 4
  ハイキュー!! 2 1 3
  ニセコイ 0 1 1


以下、本号でアンケート票を投じた作品を感想します。

大石先生がWJで読み切りを掲載させるだけで「豪華!」て感じちゃう。メゾペン時代から振り返ると、この貫禄はパないです。

いぬまるだしっ』のラスト一年は、大石先生が新たな作風を開花させた時期でした。100点満点のギャグマンガを描いても、その振り幅では「100点の笑い」しか得られない。そこで大石先生は、笑いとは対極の「泣き」へ読者の感情をいったん寄せて、マイナスからプラスへ感情を揺さぶる手法を確立しました。感動させてからギャグで落とすと、笑いの振り幅は最大で-100点→100点の限界突破・200点を叩き出せるんですよね。

このいわゆる「助走付きギャグ」は喜劇作家が用いる一つの手法です。『泣きゲー』や『泣ける映画』に笑い・ギャグシーンが多いのも、逆をいえば、いったん笑いに感情を振ることで「より深い感動」を狙えます。『氷上布武』はギャグマンガ家ではなく、喜劇作家・大石先生が放った集大成と言っていいでしょう。泣けるマンガは緩オタ層のファンが付きやすいので、次の連載がより盤石になれば嬉しいです。

氷上布武』のシナリオをベタに描くと暗くなりがちです。そこをギャグマンガ家のプライドでもって、「質より量」作戦で、つまらなくても・くどいほどネタを仕込む努力は絶賛したいです。ブログでマジメなこと言おうとすると、ついシリアス一辺倒な文章に寄りがちだけど(今のこれも)、それだと疲れちゃって、最後まで読まれないんですよねぇ。笑い所には個人差があるからネタは多いほどよい! てな精神から、軽妙なネタテキストでマジメなことを語れる人には憧れます。

ただ、トーコが信輔にしか見えない回想シーン(3コマ)を挟んだのは蛇足でした。これいった叙述トリックは、読者が(二周目を読むなりして)自分から気付いてこそ、心を打つものでしょう。作者側の過度なネタバレはせっかくの感動をチープにしちゃいますよ。低年齢層向けに難易度を下げてフォローしたんだろうけど、小中学生の読解力を舐めちゃイケない。大石先生の読み切りマンガを読もうと思うほどの小学生なら、絶対に気付いてもらえましたよ。

* SKET DANCE篠原健太) - 第264話「ゆるキャラサマー」

オレが点数振ってないマンガを感想するハメになるとか、ちょっとした企画倒れになってやしないかなコレ……。

今話は「フィギュア回」「折り紙回」系テンプレート。ボッスンがマニアックな界隈に足を突っ込み、ヒメコが一般人視点であれこれ突っ込んでくれる鉄板ネタでした。このパターンは見慣れてしまい、当初あった強烈な爆発力は損なっています。ただ、こち亀のうんちく回と比べたらコントも十分に捻られていて、個人的には好感を持てますし、今後も読んでみたいパターンです。

今回は変化球として、スイッチがおかしな方向に豹変させたのが面白かったです。本気になれないボッスンを妙な屁理屈コネコネでねじ伏せてくスイッチ。絶好調でしたね。「周囲に流されやすいボッスン」の性格も手伝って、理不尽な説得なのに決してご都合展開とは言わせない流れが楽しいです。

ゆるキャラに扮して「媚びたブログ」を書いたら人気が出ない! というくだりで、「本音垂れ流しだけど憎めない系キャラへ転身する」んだろうとオチが透けて読めました。願わくばもっと予想外で破天荒な落としどころを見たかったです。ワンダフルさんを尋ねてからの中盤以降、笑いはしても、意外性のあるアンサーが提示されなかったは口惜しいところ。まあ、篠原先生の芸風は良くも悪くも「定番」押しだもんね……。

* 烈!!!伊達先パイ(近藤信輔) - 第17話「真田、リバース」

誤解されたくないので断っておきますが、オレ、「烈!!!伊達先パイ」のこと今まで「面白いマンガ」って評価したことないッスからね。今週がすっごく光ってただけなんだから、勘違いしないでよね!!

真田十勇士の残り8人がずっとずっと気になってたんですが(登場しなくて気持ち悪かっただけで、あたしがアンタのこと意識してたってコトじゃないんだから、勘違いしないでよね!?)、まさか一話でチュウチョなく残り全員を投入してくるとは。見直しました、恐れ入りましたよ近藤先生。しかも十勇士の彼ら、全員いい感じに強烈な個性を放ってません? 一見してバラバラなのに「主君に忠誠誓ってる」点でメンバーが一丸となってますし。全体通して、すっごく雰囲気がいいんですよ。十勇士メインの話、もっと読みたいです。近藤先生、打ち切られる前にぜひともお願いしますよッ!

最初から登場していたキャラよりも、最近になって新登場したキャラのが面白い。これって単純に近藤先生が成長してるって証です。画力や脚本力はともかくも、キャラを作る力はあるんです。で、この作品がウケない理由の一つに、見た目が同じなモブキャラの存在があったと思うんですよ。あの手抜き感はまったくイケてません。ギャグマンガはしょせん、シナリオよりもキャラが命です。

リボーン然り、いぬまるだしっ然り、キリコさん然り、新キャラを投入し続け、ウケたキャラにスポットを当てて、そこからマンション転がすみたく話を広げてファンを増やしてかなきゃ。キャラがウケなきゃ沈むのは、一話完結型短編ギャグマンガの宿命でしょう。件のモブキャラ複製は、個性が分散して思い入れが強まらず、ずさんで投げやりな印象だけを置いていきました。

……とまあ、ケチョンケチョンに書いてしまいましたが、その反動を衝いて好感を得たのが、皮肉にも今週の真田十勇士なのです。そういう意味では、この作品の一生命を賭して「引いてダメだから押してみた」作戦を実行し、マイナスから急にプラス印象へ押し上げ、今こうしてオレが感想を書くに至ったわけです。もうわけわかんないけど、なんだかすごくすごい運命力を感じます。

* クロス・マネジ(KAITO) - 第16話「豊口お前が」

アンケ票以外からのプラスワン感想。今週書かないと一度も言及できない予感がしました。なんとなく空気を読んでのチョイスです。

まさか! なんてこった! ついにラクロスの試合が! けれど具体的なラクロスのプレイがさっぱり読み取れませんね。いつぞやに観た練習試合のやりとりと大差ありません、なんてこった! 今作品におけるラクロスってのは、『ヒカルの碁』的なスタンスのアレなんでしょうか。プレイ人数・時間・コート・道具の説明までは描いたから、興味があったら実際にプレイしてみてね! これはステマではない、普及活動だ!

KAITO先生の描く女子にはあまり惹かれるものも無いのですが、しかし、健全な女子たちがスポーツに励むシーンには、心が清まる思いがしました。すくすく育ったうら若き乙女たちが、イビツなかたちの硬いスティックを一生懸命に握りながら、一個のたいせつなボールを時に優しく包み込み、時に激しく奪い合うのでした。豊口の能力も明かされ、「無駄に動き回る体力」「予測不能な動き」でディフェンダーの裏筋を攻め、これでもって棒と玉を丁寧にもてあそぶ射精管理! もとい、クロス・マネジです。

しっかし主人公の櫻井くんは、今までも所々、その無策で場当たり的な局面が目立ちましたが、今回も「腹踊り」て。KAITO先生の発想は狂っとるよ……。ドスベりしたのを豊口は笑ってくれましたが、これ、言っとっけどさ、お情けでフォローしてもらえただけだからね? そんな彼女をして「それでもあいつにあった長所」てどういう了見だ櫻井くん!

そもそも豊口には「理由もなく仲間を惹きつけ信頼される能力」や「ドスベりした空気をいち早く察知・換気する能力」など、社会人なら誰もがあこがれ、欲する、プラスの方のアブノーマルスキルホルダーですよ。しかもWスキルて。「テクニックもないしセンスもからっきし」て、その腹芸でドスベリしといて、よくぞ言えるもんですわ……。

一方で「パスの受け手を探し続けて豊口と出会えた」という種明かしは見事で、ここに至るまでの演出は見事です。このシーンは、ずっと温めていたプロットなんでしょう。この作品は完成度の高い・低い場面の落差が激しいです。作者が深く練っていなかったプロットのワンシーンで、尺と展開の都合から場当たり的に切り抜けようとしたアプローチが多すぎた悪印象が、あまりにも蓄積されすぎたかと思います。


前回の感想から中休憩を入れず、勢いだけで感想しました。仕事が始まったらなぁ、こうはいかないよなぁ……。

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