1678. フィナーレ感想 - 連続誘拐事件編

ムヒョロジは短編向きの作品だ、と評価する人は多いだろう。実際に西義之先生は、人間の心情を清濁併せ持って丁寧に描ける作家だ。ゲストキャラの内面を一話完結で掘り下げれば、毎週、最大風速のクオリティも期待できた。とは言え、物語に緊張感や危機感が乗らなければ、それは駄作にもなる。

今編では、編集部からの打ち切り宣告がなかったのだろう。後の伏線になるセリフや演出が続々と登場していた。満の過去と錠の発明は、また別の機会に掘り下げる予定だった様で。特に錠の銃弾は、後の改良を経て真価を発揮しただろうに。これじゃ『アフロの変なおっさん』て印象だけで終わってるよね…。

しかしながら、六氷と悪霊の高レベルな魔法率バトルを前に、彼らは取り付く島もなかった。満は被害者救出に一役買っただけ。錠に関しては自作の銃弾がどれも不発に終わる。結局は、主人公の最強性が新キャラの存在を丸呑みした。コミックスで表紙も飾れないほど、二人の存在感は外野へ消し飛んだ。

魔具や使者へも興味も薄れた。初期の連続短編モノでは、未知なる設定や存在に強い関心を示したものだ。しかし今、魔法律設定は充実し、本作の「楽しみ」は急激に失われていた。魔法律のインフレ後に、序盤と同レベルの日常編へ戻っても空虚に感じた。早々に、「六氷の霊根」級の新たな謎を提示してほしかった。

今編以降、魔法率の更なるインフレから脱却する術を、西先生は模索したのだと思う。その一例が、錠の科学発明だった。魔法律家以外で悪霊に対抗する術の登場。あるいは、魔具以外の対霊武器が出現した、としてもよい。その存在こそ、ムヒョロジ第二部の新たな題材になった可能性がある。

後の展開で悪霊が進化したように、人間側の『武器』も進化するというアプローチ。べクトールの悪霊集団とも、魔法律協会とも異なる、第三勢力の到来。多分だけど協会チームと科学チームは、同じ人間内でも激しく対立しただろう。三つ巴になりつつ、だけども最後には人間同士で手を取り合い、悪霊と共闘するという。

そんな新展開を勝手に妄想して、当時は個人的に楽しんでいた。この頃はまだ、打ち切りの心配もさほどしていなかったし…。現に、錠と満は二人とも、別の機会で再登板を予定していたと思われる。


思い出のワンシーン
ものすごい勢いで回収できなかったもの。

【コミックス16巻・第140条『みえないもの』】
満「霊… か… またコイツラとは 会いそりそうだな」

もうコイツラとは二度と会うこともありませんでした! うはぁ、超切ないですよ、どうしましょう…。西先生はムヒョロジに相当未練を持ってるみたいなので、数年後にリバイバルされた暁には、再登場することがあるかもしれませんよね。