1759. SKET DANCEのヒメコ過去編『OGRESS』が完結したからまとめ感想したよ

どうやらオレは、ヒメコの過去編に過度の期待を抱いていたようで、全6回の『OGRESS』は肩透かしに終わった印象でした。正直なところ、高いテンションを維持して読めたのは前半三話まで。高校編は冗長だったとは言わないまでも、スイッチの過去編と同じく、せいぜい3回のボリュームに凝縮できれば、絶好の印象で片付いたと思います。

あるいは、後半三話の解決編は別の機会でよかったのに…とも感じます。お腹いっぱいの時に、さらに豪華料理が運ばれてくる感覚。個々の料理は完成度が高いが、立て続けに出されては食傷気味というか…。これは銀魂のシリアスパートも同例ですけど。

今、ヒメコの過去編の全6話を読み返して、改めて考えてみました。

オレが今回の過去編に最も期待したものは、ヒメコがいかに救われない過去を体験したかの一点に尽きます。「さあこのオレを思う存分鬱にしてくれよ!」という期待です。スイッチの過去編が壮絶な不幸話だっただけに、同レベル以上の鬱度を期待していたのです。人が死ぬとかはカンベンだけど。

篠原先生も同様の狙いをもってヒメコの過去編を描いています。「救いようのない過去」を救ったから、ボッスンはカッコイイ主人公たりえるのです。すべてはボッスンをかっこよく描くために、スケット団の友情を描くために、ヒメコの悲劇が不可欠なわけです。だからこそ自分は、救われない過去を期待しました。

そして結論からいうと、篠原先生と自分の期待では、「悲劇のポイント」にズレがあったと思うんです。

  • - あーちゃんと揉め事を起こしてヒメコの正義感が崩壊する。←篠原先生の悲劇ポイント
  • - 最初の暴行事件が負の連鎖を生み『鬼姫伝説』が築かれる。←オレが期待した悲劇ポイント
  • - 千秋と出会い、ボッスンと出会い、やがて友達になる。
  • - スケット団を結成して仲間を作り、あーちゃんと和解する。

あーちゃんの事件でヒメコの正義感は崩されました。ですが、これは悲劇の「序曲」に過ぎません。

ヒメコにとって真の不幸とは、罪に罪を上重ねして、心を磨り減らしていく過程の時期だと、オレは考えていました。「また裏切られた…」「またやってしまった…」「どうせ私なんて…」という思考の繰り返し。誰にも救われず暴行を続ける日常。それこそが本当の惨劇じゃないでしょうか。

つい最近『ひぐらしのなく頃に(DS版)』をプレイして思ったことがあります。登場人物が最も不幸になる局面では、行動の一挙動を余さず、思考の一文も省かず、生々しく、具体的に、あるがまますべてを読み手に伝える方が、読者に衝撃を与えやすいんだなあと。

あるいは『イリヤの空 UFOの夏』で、浅羽くんが自身の首筋にインプラントされた発信器を裁縫針で掻き出そうとする局面で、思考のすべてを剥き出しに描いたトイレのシーンといえば早いでしょうか。等身大の人間が考えそうなことをわざわざ物語に載せる生々しさは、時に強烈な感情移入を誘い、トラウマ級の恐怖をもたらします。

スイッチの過去編で例えれば、すべての事件が終わって「スイッチが弟になりきる」という結び。あの場面が、『スイッチ・オフ』の中で最も「惨劇」を表現したシーンだと思うんです。弟が死んだ瞬間よりも、弟を死なせてしまった精神的ダメージを負って、心が狂ってしまって、自分を捨ててしまうという常軌を逸した異常性。あの狂気こそが本当の惨劇だよなあと。

話を本題に戻します。オレとしてはヒメコが『鬼姫』へと転換してゆく生々しい過程を読みたかったのです。そこに『鬼姫』という存在の説得力を求めていたのかもしれません。残念ながら本編では、その辺りの描写は省略されました。(OGRESS-4)

ここまでの意見をまとめます。

  • 過去編は全3話くらいのボリュームが最適と感じた。(それ以上は感動の蓄積が発散する)
  • どうせ6回も使うなら、『鬼姫』として荒れた時期にページを割いていただきたかった。
  • 解決編は別の機会で小分けしてもよかった。

ヒメコにとって一番辛い時期である鬼姫』として振る舞った期間をスキップしたのが、最も残念なところでした。結果、高校入学後の「友達を作らない」という決意は、「ヒメコの感情」というより「設定」に見えてしまい、4話目からは作中に没頭できず終いでした。どこか蚊帳の外でストーリーラインを眺めている読み方になってしまったかもしれません。

少し時期を置いて、コミックス化されたら気持ちを切り替え、改めて『OGRESS』を読みたいです。

(追記)
念のため補足しておきます。今回の感想は全体的にネガティブな内容ですが、「大勢の読者はこう思ってるよね?」という前提で書いた感想ではなく、あくまでオレ個人が抱いた気持ちをを綴っています。

「起承転結の承が省略されて、思い通りの展開にならなかったからって、吠えすぎじゃね?」「気に入らないなら読むなよ/感想するなよ」的なツッコミはあるかもしれませんし(いやまあ確かにその通りな気がしないこともないけど)、「私は篠原先生の考えた展開が大好きだった!」と主張される方も多いでしょう。

むしろ、今回の感想には反論を唱える人のほうが大勢いらっしゃると想像した上で、この感想を書きました。その点、ご容赦くださいませ。