1526. 先行感想 - SKET DANCE(読み切り)

赤マルジャンプ2006 WINTER」号より、一番乗りの本誌掲載。今後のWJを担う期待の新星、堂々登場ですよ。

今週号の「SKET DANCE」について、大きくネタバレを含んだ感想記事です。未読の方は閲覧を控えて下さい。

当時、武装錬金ピリオド以外では最も好印象の作品でした。赤マル掲載時よりも完成度は若干高まっています。今年も金未来杯があるのなら、篠原先生に参加して頂きたいところ。あんな杯に参加しなくても、篠原先生の実力を持ってすれば、そのうち連載が始まるだろうけど。待遇的には『みえるひと』ポジションだと思います。


レーダーチャート
久々のレーダーチャート評価。この評価は、本誌読み切り作品、赤マル掲載作品を対象としています。今回、「SKET DANCE」は単独首位を奪取。なるべくして君臨した王者だなあ。レーダーチャートの評価基準はこちら(過去の評価一覧も)。

SKET DANCE

「アクション」「ハイテク」「推理」近年の売れ筋三本柱に、登場人物が各専門分野を担当。個々の骨格が面白いのだから、三つ合わせて面白くないわけがない! 一人だけでは及ばずとも、チーム力で事件を解決する『友情』描写を、特に丁寧に表現できている。さらにチームの外的要因『事件』の紆余曲折も、相当な作り込みよう。あまりの完成度に、斬やOVER TIMEが可哀想になった。

物語(4)
 赤マル時はスケット団のヒメコとスイッチにも掘り下げのスポットが照らされたが、今回は極力カット。あくまでスケット団の一活動を主軸に物語を展開した。基本、一話っきりの「読み切り作品」は、主人公達の背景説明も描き込むべきで、その責務を放棄したのは、物語の作り手として少々残念だった。赤マル読んでる人は、脳内置換できるんだけどね。そんな微細なマイナスを差し引いても、ホントは満点評価をあげたいくらい。
構成力(5)
 今回は赤マルに比べて「アクション」が弱まったものの、推理要素を強め、リーダー・ボッスンの魅力を十分に表現できている。結果的に、見事な学園ミステリモノとして収めてきた。散りばめた伏線の数と、絶妙な隠蔽工作は感嘆の域。特に構成力は、赤マル掲載時からまた腕を上げたなと唸らせた。本誌初登場の読み切りでこの完成度となると、ホント末恐ろしい逸材だわ。
画力(5)
 赤マル時も、他の作家先生に比べて頭一つ抜けていたけど、本誌でも見劣りしない。絵柄に「古さ」を感じるのは、妙に萌え絵を狙ってるから? イラストの志向性はリアル向きなんだから、デフォルメせず描いた方が見栄えが良くなるような。特に身体のラインは腕を磨いて頂きたい。色っぽいラインが描けるようになれば、篠原先生のキャラクタは大化けするよ! 一つ不満点は、ヒメコの下半身をもっと真面目に描いて下さいよバカー!
キャラ(5)
 アクション性が薄まり、ヒメコの個性が弱まった。変な味のあめちゃんを舐める元レディース女(厚化粧)としか思えない…。赤マル時は、もっと想像性に広がりのある女の子だったのに。この手のヤンデレは恋すると途端に可愛らしくなるので、今後とも丁寧に育てて頂きたいです。
 スイッチは相変わらずの変人ぷり。合成音声で喋る恋愛ゲーオタにしてハイテク発明野郎の一流情報屋(メガネ)という、頭脳キャラを美味しいトコ取りした人物造形。変人っぷりが美味しくて、背負う過去はほろ苦くて、噛めば噛むほど味のある謎キャラだと思う。赤マル時の魅力はキープできていた。
 赤マルで最も目立たなかったリーダー・ボッスンは全面的に改善。「集中力」という目に見えづらい能力を、命中率と推理の二点で端的に表現し、上手くハッタリを効かせて、読者に伝えてる。で、ボッスンの真の能力(?)はむしろ「人情に厚い性格」だと思うんだ。そこんとこ、真の魅力を余すことなく演出できていて、上手いなあ。平成の銀さんだ。
ギャグ(4)
 赤マル時はギャグが多少滑っていて、BLEACH銀魂を意識して失敗した「イタさ」が混じってたんだけど。今回はそんなイタさは微塵も感じなかった。作者が想定した笑いどころは、余すことなくニンマリさせてもらえた。こういう点も成長してるよ。一番好きなのは、依頼人が来たときのリアクション「茶とロープ!」。だけど一点だけ希望があります。決めセリフ「スケット団ス」は一事件で一回だけにして…。一回だけでも気恥ずかしいのに、まさか三回も出てくるとは!
読後感(5)
 また読みたい。すぐ読みたい。連載は今年中ですか? そんな気持ちに感化された。五点満点出さずにはいられない。

一点、改善点を挙げるなら、スケット団にとっての「事件解決」の重要性かなあ。例えば銀魂。万事屋は金と生活に追われてるから、這ってでも依頼を探して商売しないと、三人と一匹は野垂れ死ぬわけさ。一週間連続で豆パン食うわけさ。でもスケット団は単なる部活動(サークル?)に過ぎない。この子達が積極的に事件を解決し、その業務に追われるだけの説得力が欲しいなあ。

単に「人助けがしたい!」だけのお節介すぎる集団では、ちょっと平成の思想・趣向に合わなすぎる。このままじゃあまりにファンタジーで、動機面で各キャラの共感性が弱まってしまう。背景に強制力(サークル活動維持のため、とか)があれば、リアルさを帯びると思うんだけど…。気にしすぎか。

連載化、楽しみにしております。