1669. フィナーレ感想 - 強化特訓編

今編の前衛的な試みに「草野パート」と「六氷パート」の並列進行があった。西先生は長編を描くと、イベントを詰め込みすぎて物語が長期化する癖がおありで。2パート並列運転ならば、読者の興味は振り子の如く行き来し、両方への興味やモチベーションが高く維持できる。そう、この仕組みだけなら非常に巧かった! のだが……。

ムヒョロジの人気を大きく低迷させる一大事故が起こる。第一は、魔法律検定と強化合宿を独断で乗っ取ったペイジさんの罪。あまつさえ訓練生全員の命を危険に晒した大失態は許し難い。また訓練生側も、草野たち以外は怯えるだけでさっぱり使えないダメ魔法律家っぷり。彼らは魔法律学校で何を学んだのか。しいては魔法律協会への強烈な不信感に繋がった。一方の六氷パートも、『魔法律書』や『地獄の死者』関連の設定が具体的に定まったことで、連載当初にあった内容との矛盾が明るみになった。

また、西先生は『人間の描写力』が低いと確信させる展開でもあった。両パートともに、激しいアクションを伴う戦いが続いたためだ。アクション性の高いモノを描かせると、とたんに行間(コマ間?)の動きが読みづらい…。視覚的なマイナス評価もまた、読者離れを引き起こす一因になっただろう。

そして以上は、ムヒョロジを愛して深く読み込んでいた読者(信者)ほど、穴の大きさを察してしまうジレンマ。つまり西先生は今編を通して、根っ子の方で支えていた熱いファンを多数逃がしたと予想できる。そういった人ほどアンケートを送るし、Webなどに感想を寄せるのだけど…。これ以降も継続してムヒョロジを応援していた読者は、真に『信者』と呼ぶに相応しい…。なんて皮肉な結末か。


思い出のワンシーン
ずいぶんダークサイドな感想になった今編ですが、両パートともマクロ視点で展開だけをハイライトすれば、なかなか読み応えのある内容になってるんですよね。そんな中で、思い出のワンシーンはココです。

【コミックス6巻 - 第57条『決着』】
ペイジ「――い…! 今井君……!?」
今井「……!」
(今井さん、二体のオニコマイヌを仕留めて雄々しく待機しながら)

ブイヨセン攻略後、今井さんが一人だけでオニコマイヌを仕留めたのかと思うと、そのフェニックスっぷりに笑いが込み上げてしまいます。しかも無傷っぽいし、今井さんはどんだけ最強なんですか。