1204. 第47回 - 安宅の関

お笑い路線の大河ドラマ義経」で、まさか涙を流すことになろうとは…。

巴との再会

  • 未だ義経滝沢秀明)の行方を掴めない鎌倉勢は、奥州平泉への道を強固な警備で固めた。

冬になり加賀の国に入った義経一行。あまりの警備の固に、海へ出て船を手に入れるのは不可能。船乗りの意地を見せられない駿河次郎うじきつよし)が無念です。伊勢三郎南原清隆)の多弁の才が功を奏し(?)、木こりの小屋を一晩借り受け、義仲に仕えた巴(小池栄子)と再会。無理のある偶然にも感じるけど、残り話数もないし仕方ないでしょう。巴さんがひっそり生き長らえ家族を持ち、幸せそうな笑顔を浮かべられる事が嬉しいです。「義経」は敗者になる登場人物が多いのですが、敗者の中にも小さな幸せを持てる結末があることに、安堵できました。

義仲の「恨み憎しみが人を強くする」を巴が口にし、「私も役に立てたか?」と義経が切り返す筋書きが印象的です。巴の恨み人となり、悪者としてでも彼女に生きる目的を与えられたか、という問いかけでしょうか。義経もなかなかキザな事言うねえ。

新しい国の家族

  • 巴らの家族を見て郎党らにも里心が芽生え、『新しき国』で各々が家族を作る夢を語り合った。

長旅の中、しばらく人里や家族と触れ合う機会がなかったからか、巴の家族を見ただけで各々ホームシックになりました。巴の再登場と同じくこの展開も強引だなぁ…。ここで郎党達が自分たちの夢と本音を語ったからこそ、今話ラストのお涙展開が盛り上がるので、今話の構成には不可欠なシーンでもありました。

皆が照れつつ誰某を迎え入れると告白するシーンは、こっちまで恥ずかしくなりましたよ。人一倍シャイボーイだった弁慶(松平健は今や、恋バナでは他の誰より堂々と振る舞ってます。恋愛すると変わるもんだねえ男は。あと、喜三太(伊藤淳史)の告白「うつぼを呼んで子を呼ぶ!」の夢だけ、他のメンツとは一線を画す純愛独り語りモード。やっぱり電車男まんまだよとニヤリ。

安宅の関

  • 安宅の関にて、役人の詮議の末通過を許可された。しかしその時、関守・富樫泰家(石橋蓮司)が関所に帰着する。

一度は簡単に関の通過を許可されるも、切れ者・泰家さんに呼び止められる。「義経は山伏に成りすましたと噂も…」と語っており、泰家さんは最初から、義経らを不信に感じていたのでしょう。さすが切れ者の武士。あの手この手で山伏のボロを出さんと探りを入れ、弁慶の機転でのらりくらりと地雷をかわします。この緊張感は芸術の域。これぞ時代劇、これぞ大河ドラマ。今話は全編に渡って神脚本・神演出だなあ

。すげーよ「義経」見直した! オレの中では義経の評価って「お笑い大河」とか「アルティメットファンタジー大河」だったけど、それも今話見たら、もう改心しなきゃなあ。ところで石橋蓮司さんと言えば「火サスに登場したら必ず犯人役」というほどキワモノ俳優。氏を大河の終盤の重役・富樫泰家に充てるとは、NHKもニクイ配役考えますねこのー! 『肝の据わった際物の武士』の切れ者イメージを十二分に発揮しました。石橋さんだったから、今話ラストが極まったとさえ思いますもの。

勧進帳

  • 東大寺大仏殿再建のため先を急ぐと偽った弁慶。しかし泰家は、勧進帳を弔問願えねば関を通さんと迫った。

ここで、以前からの伏線であり、何度も登場してきた弁慶の巻物が活用されます。白紙の巻物を読み上げる弁慶。でもね巻物が白紙だってこと、なんだか裏から透けて分かる気がするんですが…。さ、錯覚ですよねっ、視聴者の勘違いですよねッあはは……っ!

何とか勧進の疑いも晴れ、通過を許可される一行。しかし、義経が腰に潜めた笛を察し、泰家に厳しく問いつめられます。弁慶は心を鬼に、笛は盗んだものと偽り、弁慶を棍で打ち振るう。挙げ句、静の笛を踏みつけた。この時、泰家さんは全てを察してます。おそらくこの秋、静が鎌倉で舞って頼朝の鼻を挫いた騒ぎの直後のこと。この笛もしや静御前の笛だとも、泰家さんは察したのではですかな?

いくらこの世では無敵を誇る義経とは言え、同じくこの世で敵無しの怪力・弁慶から攻撃を受け続けるとあっては、義経のアルティメット・ヒットポイントも赤ゲージに迫る勢い。義経は頑なに土下座しないんですけども、少しは演技しようぜ。「か…勘違いしないでよ! あんたのために土下座するんじゃないんだからねッ!」みたいな目線を弁慶に投げ掛けるの止めてください。このツンデレ九郎め!

「そちの苦しみは我が苦しみ、そして皆の苦しみ」

  • ついに心を許した富樫泰家は、義経に酒を持たせ、旅先を進ませた。

無事関を通過した後、弁慶は土下座と謝罪を重ねる。弁慶の苦しみを痛烈に感じていたのは郎党の皆も同じで、主の義経も弁慶の機転に感激して、「そちの苦しみは我が苦しみ、そして皆の苦しみ」と弁慶を慰めました。義経主従の想いはまさしく一つであることを、これほど強く感じたエピソードは他に類を見ません。美談を通して『主従の結束』を描いた今話脚本にいたく感動しました。正直、涙がこぼれました。