1190. 第46回 - しずやしず

義経達の山伏コスプレ。胸元の丸っこいぽわぽわが、場違いに愛らしすぎます。あれが画面にチラつく度、くすくすと笑ってしまいました。こんな小道具に笑いを仕込むなんて、恐ろしい人達だ。狡い真似するなあNHK衣装部隊も!

忠信の死

静の鎌倉行きを耳にした義経滝沢秀明)一行は、屋敷を襲うより、道中で静を奪う方が容易いと考える。しかし、厳しい尋問に堪えた静の思い、義経と大勢の身代わりとなって鎌倉に向かう覚悟を汲んで、義経らは渋々と静を見逃す。山伏に扮し平泉へ向かう一行。別れの時となり、うつぼ(上戸彩)の「また会えるね」と声を掛ける。ここで喜三太(伊藤淳史)が、またうつぼに萌えてますよ。あまりの大はしゃぎを見かねてかお徳(白石加代子)さんが咎めたくらい。

一行の都合を知らない佐藤忠信海東健)は、御輿が空とも知らず静救助に刃を立てる。助けに入りたくとも手出しできない義経達の歯がゆさと無念、痛いほど伝わりました。ついに忠信は敵の刀に倒れます。で、この一大感動シーンの最中、義経スタッフはとんでもない地雷を仕込みやがりました。朱雀の翁(梅津栄)が「この先で義経待ち伏せしてる」と敵に吹き込むと、護衛兵達は「なに! そうか!」とあっさり信用します。そればかりか…


御輿を放置して全員行動でその場を離れる護衛兵達。


うおぉおぉぉいィィ! 全員で行ってしまうなァァァ!!! この予期せぬ大空襲に、オレの笑い袋は絶頂を極めました。腹が破裂するくらい、ヒーヒー泣きながら笑ってしまいましたよ。もうね、感動シーン台無しにも程があるぞ義経スタッフ。貪欲なまでに笑いを探求するその演出力、脱帽です。

そんな一部始終はありつつも、忠信の最後は一応きっちり締めてくれました。一人で無謀に行動した事を義経に叱られて喜ぶ。平泉に向かうと知らされ故郷を懐かしむ。死の直前なのに、こんなにも感情を振るわせる忠信の姿が切ない。なにより、佐藤兄弟はどちらも静を護ろうとして死ぬのがまた切ないのだ。佐藤兄弟の死に様は、どちらもサイコーだなあ。

頼朝の面会

  • このとき既に、静は六波羅から鎌倉に移っており、頼朝(中井貴一)直々の詮議が行われた。

義経の事を全く語らない静。女心を理解できない頼朝さんは、恥ずかし気もなく「なぜ答えぬのか」と問う。静は頼朝を挑発しながらも、「義経と周囲の人々のため」と返答。次に静は、囚われの身でありながら「義経と周囲の人々平家追討の功にあった義経をなぜ討つのか?」と頼朝へ問う。これには頼朝「弟ゆえ」と返答。さっきとは逆に頼朝の武士魂は、静は全く理解できないものでしょう。頼朝と静の立場・考えはあまりに対称的なのが、この場面の見所か。

一方の政子様。この取りの中で静の身籠りをズバリ見抜きます。この辺は女の直感というよりも、政子様の鋭すぎる洞察力の賜物。頼朝は、今後一生浮気できないッスね…。一晩で浮気相手を見抜かれて、その夜の内に相手方へ八裂き焼討ちコンボを食らわせそうだ。身籠りを頼朝に伝えると「男子なら殺す」宣告。この辺りは頼朝さんも、頑として譲りません。政子様も渋々承諾です。

出産

  • 義経らの山越えは思うように運ばず、季節は夏になっても越前の辺りを彷徨った。

静は出産シーンで喘ぎまくりです。今まである種、神格化じみた「聖なる静」がここで一気に人間の女へ堕ちた…といいますか。いやらしさよりも、大変ショッキングな印象を受けました。生み子は男子。政子はその晩、即時対応します。翌朝、義経の子の居所尋ねる。ここからが凄い気迫。聖女が女になり、女がパワフル母さんに変移するという、女性の一大強化プロセスをたった五分に凝縮しました。恐るべし義経スタッフ。出産翌日にこんな動き回られたら、男としては普通に引くわい。

静は政子とのやり取りの中で、既に子は亡き者にされたと察する。『大奥〜華の乱〜』の泥試合に比べればまだまだ表現はあっさりながらも、静と政子の間に渦巻く憎悪の念は、映像中からもビンビンに感じましたよ。フジ系昼ドラ大好きっ子のオレとしては、こういうドロドロ愛憎劇、めちゃ燃えです。

女の泥試合

  • 義経の行方は途絶え、病に伏した、叡山に匿われたと噂が流布。しかし頼朝は警護の手を緩めなかった。

今週の見所へ。八幡宮の舞は、頼朝が言い出すのではなく、周囲から促されるシナリオなのね。確かにこの性格の頼朝じゃ、自分から言い出す無謀さはないですか…。政子様は嫌みを含め、鶴岡八幡宮の奉納で舞を披露するよう依頼。子を失い脱力の中、これを引き受ける静。それどころか「武家社会で風情に欠ける鎌倉ごときに舞の準備ができるものか?」と挑発を返しました。女の泥試合が激化してまいりました!

義経は山中で雑兵に発見されますが、こっちはほとんど放置プレイです。鎌倉のイベントが激しすぎて、もはや視聴者の中に義経達を心配する者は一人としていないッ!

鶴岡八幡宮の舞

  • 静は舞い始めると、義経を恋しいとする内容の歌を歌い上げる。

まず、めちゃめちゃ美声でビックリ。歌の内容が義経寄りな事に、本来なら頼朝が激怒して政子が「女の恋の執念とはこういうものですよ」と諭すのが史実の主流らしい。だけど、ドラマで怒り出したのは周囲の御家人達。まあ、このドラマの頼朝は源氏の血族を殺すイベントでしか怒らない仕様ですから。この時も、頼朝はなんとも言い難い表情を浮かべるのみです。正直言って、それ反応か訳わからんよ。怒ってるの? 感心してるの? 放心状態? 歌の意味が理解できなくて大ピンチ状態?

政子は「恋の執念」を見事と称えた。褒美を取らせて都に戻せばよいと進言します。「赤子の命と引き替えに…」となにやら真っ黒い恨みを込めつつ。政子様、それは「脅迫」って言うんですよ。頼朝は(恐怖しながら)小さく頷きました。というか政子に完全にコントロールされてました。

しずやしず

吉野山 峰の白雪 ふみわけて
入りにし人の あとぞ恋しき

「吉野で別れた義経が恋しい…」と、鎌倉では罪人の身である義経を愛しんで歌った。

しずやしず しずのおだまき 繰り返し
むかしを今に なすよしもがな

「おだまき(糸を繰る道具)を繰り返すように時間も逆戻しして、愛しい義経と一緒だった昔の頃に戻りたい」と解釈されました。この歌の解釈は多説あるそうです。