1178. 第45回 - 夢の行く先

残すところ五話。情勢的には悲痛極まりないのですが、義経達があまりにも強すぎて、こいつら何があっても死なないと安心できてしまう自分がいます。変にファンタジーな所があるから、緊張感に欠けると言いましょうか…。


熊野山中

山中に鐘が響く。義経が山中に潜んでいる情報を、寺院は鐘で連絡した。これ、なかなか斬新なアイデアですね。寺の鐘の用途とは本来、誰かへの「連絡」が主だったのかも、と思わされる程です。

さて、道案内を雇って都を目指す静達。静の様態はなお悪化しており、暗に「子を身籠もった」伏線をアピール。なんだかんだ言ってヤってんじゃんと、大変に安心しましたよオレは。でも、義経ってどこかファンタジーな要素があるから、コウノトリが運んでいた可能性もあり。赤ちゃんはコウノトリがセックスして出来るんですっ!

佐藤忠信海東健)・駿河次郎うじきつよし)は共に奮闘するも、一条の兵数に圧倒され静かを見失う。ところでこの時代には多勢に無勢という言葉が存在しないようです。目算でおよそ20人以上いる兵が、ただの船乗りだったはずの次郎に叶いません。次郎は義経のように余裕ある立ち振る舞いをせず(できず)、必死に暴れ回る殺陣となりました。


スーパー大河モード

  • 静は追兵に囚われ、次郎は一人で多勢を相手し、忠信は静を追ううち山中の崖に足を滑らせた。

結果的に、次郎の殺陣演出は成功だと思います。次郎の余裕の無さはかなり死相漂い、視聴者をさぞドキドキさせたことでしょう。ここでズップリ刺されてザックリ斬られて「静様、…よ、しつね…さま…」と絶命すれば、お涙頂戴で高視聴率だったのに。…とか、非道いこと考えちゃった。昨年の新選組!は、仲間の命は相当脆く扱っていたので、同じ大河でも「スーパー大河モード」と「リアル大河モード」のギャップには驚かされてばかりです。*1

一方で、義経・弁慶(松平健)・三郎(南原清隆)も僧兵に襲われますが、こっちは「スーパー大河モード」を超越した「アルティメットファンタジー大河モード」ですから、全く心配いりません。弁慶の一撃で十人弱の僧兵が木っ端微塵でした。そう、これは特撮ドラマなんだ。大河戦隊・義経レンジャーなんだ。そう自分に言い聞かせて義経を見れば納得できると思います。ほら心なしかイケメン俳優も含まれてるよ。


鎌倉の節目

  • 頼朝(中井貴一)は「天下ノ草創」の政策を唱え、鎌倉の意に反した公家らを一斉解官した。

後白河法皇平幹二朗)を「天下の大天狗」を言わしめた頼朝は、法皇に激しい要求を下し、朝廷よりも先手を打った。
逆賊の義経・行家(大杉漣)の捜索を強化する一方で、鎌倉に逆らった全ての公家を解官させた。武家の頭に台頭するばかりか公家をも恐怖政治で縛る。平知康草刈正雄)をも解官に追われ、法皇サイドは反発。時政の報告を眺める法皇のギラギラした視線が強烈でした。これだけで今週はお腹いっぱいかも。法皇様がみてる」再び…ッ!

御上サイドは、都の仕来り*2に任せてこの状況を先延ばしする。義経を捜索し再び朝廷側に取り入れ、彼に鎌倉を牽制させるのが法皇様の狙い。先週義経が兵を集めても誰も賛同しなかった事、法皇様はもうお忘れですか? だから西国で兵を募るようと謀ったのに、法皇様自身が邪魔してたこと、忘れちゃいませんかね? 藁をも掴む事態だからか、やってる事が支離滅裂です。


天下の大天狗

  • 義経一行は、弁慶と旧知の仲の僧侶を頼り、小さな寺に留まった。そこで法皇の本意が伝わる。

義経が寺院を尋ねたら匿うよう達しがあった事、朝廷の義経追討はやむなくの決断であった事が、義経に伝わる。どうせ追われる身ならばと、時政の兵がいる都に上り法皇にお目通りすると決心。まあ、義経と弁慶がいればごり押しでミッションコンプリートでしょうよ。今のところ、スーパーサイヤ人と一般人くらいの戦力差だもの。

うつぼ(上戸彩)や喜三太(伊藤淳史)に鷲尾義久(長谷川朝晴)も合流。クマはいつの間に「三郎」から「義久」へ改名したのでしょう。カニと被るから変えたんだろうけど、ぶっちゃけ義久は格好良すぎて伊勢三郎が可哀想だ。一番目立ってないキャラなのに…。うつぼは登場する度、義経と再会を懐かしむのがデフォルト設定ですね。一瞬デジャビュかと思った。

義経は、自分の居所を法皇に伝える。同時に、我が身に下された追討を取り下げる事、法皇の面前に立つことを願い出た。ところが法皇様、「やっぱり鎌倉の仕打ちが怖い…」とか言い出す始末。ハッキリしろこのホモジャミラめーっ! そんなこんなで、義経は今しばらく逃げ回る事になりました。憐れ義経パトロンから振り回されまくりッス。


静を巡って

  • 静は時政(小林稔侍)から取り調べを受けていたが、静の方が一枚上手。時政も手を焼いていた。

静は時政とのやり取りの中から、義経は未だ逃亡中と察する。時政父さんはいっつもこんな役回り。「中途半端な役立たず」という、可哀想なポジションです…。一方娘の政子(財前直見)様は、法皇義経を匿っていると察し、相変わらず冴えまくり。ホントに親子なんでしょうか、この二人。義経は寺院の処罰・締め付けを強め、ついに行家オジサンが捕まります。一方の義経は、吉次の機転で都入りを果たしました。行家と義経、仲間の有無が明暗を分けましたね。

行家オジサンの転身っぷりは笑いました。「転覆した自分を助けてくれなかった!」と逆恨み。この人、寝返るためならどんな些細な事も理由にしそう。「昨日の夕飯、私の焼き魚が一番小さかった」とか。日本一のクレイマー。頼朝の言うとおり、夢さえ見なければ立派な詐欺師として活躍できたかもしれませんね。「源氏のもののふならば往生際を潔く」と頼朝の言伝を受け、行家斬首。このドラマ、斬首のシーンは皆潔い顔つきで死にますよね。そんな中、行家は放心の顔つきのまま討たれた。ある意味、これが一番リアルな斬首の形だと思うんですよ。


次郎合流

  • 吉次が用意した住まいで、次郎は義経らと合流。激しい謝罪の末、許される。

静かが捕らわれたことで、次郎の迫力ある謝罪がツボにはまりました。笑い所じゃないのにクスリときます。切腹しようとする次郎を郎党達は押さえ込み、そして義経駿河の次郎、これからも私に付き従うてまいれ」なにこの学園友情ドラマ。結局いつものパターンですよ。義経のセリフは最初からバレバレでした。なんかこう、もっと、奥ゆかしさって必要だよ…。

御所の様子は北条の塀で囲まれ、静もどの屋敷にいるか不明。打つ手無しの義経の目前に、清盛の屏風が現れます。「夢を見るには力がいる」とは清盛の言葉。まずは、力の拠り所を探す必要があると、義経は思い直しました。途方に暮れ、気持ちすら折れかかった義経の前に、このタイミングで、屏風伏線を回収させたのは巧い。結果的に、平泉を「新しき国の手本」と考え、義経が再び希望を持った事から、屏風の効果は十二分でした。ナイス活用です。

ラスト、喜三太の独白は素晴らしいッス。悲しい過去を独白する雰囲気は電車男そのものだったけど、グッときました。孤児で親兄弟を知らない喜三太が、義経と静を父と母、郎党を兄弟と思い、「これ以上、人が欠けてはならん」と主張する熱い想い。この日のために喜三太が居たと言っていいのではないか! 一番最初の家来だったのに、やっと活躍できておめでとう喜三太!

*1:元ネタはスーパーロボット大戦

*2:書面上の手続きが色々あるんでしょうか。お役所仕事のイメージ?