1777. ぼっきさん(←なぜか変換できない) - 勃記感想

新年明けましておめでとうございます。奇しくもSnowSwallowは本記事で「1777」のラッキーナンバーを迎えました。盆と正月が同時に到来したようなこの幸運を祝し、本日は西義之先生の新連載『ぼっきさん』(←なぜか変換できない)を筆下ろし感想いたします。

ジャンプ本誌は年末年始の合併号を挟み、ジャンプ読者の皆様も、本編ストーリーが記憶から薄れている頃合いと思います。ここで改めてあらすじと登場人物をおさらいし、本作の魅力と見所をご案内いたしましょう。


ここまでのあらすじ
掻い摘んで解説しますと本作は、少年が好きな女の子のためならなぜか変形できちゃうヒーローマンなんです!!

【あらすじ】
松露葉町に訪れた、突然の怪奇殺人事件。まるで神の業と思える犯行に刑事たちは狼狽する。この町には「神の一族」の伝説があった。超能力とも呪いともつかぬ神通力を自在に操るかの存在を、人々は畏れを抱きながらこう呼んだ。──ぼっきさん。(←なぜか変換できない


火ノ宮満は口数の少なく大人しい美少年。しかし白湯のためなら激昂してぼっき化し「君だけのヒーロー」になる。幼少の頃、女友達の白湯をぼっきの能力で救うが、新聞やテレビでぼっきの注目を浴び、以降は人目を避けるようになっていた。


そんな満と白湯の前に来訪した怪奇事件の被害者・美々。さらに、その幼女を追って満たちと対峙した、新たなるぼっきの使い手たち。街中で白昼堂々ぼっきの形姿を見せつけ、二人の少女は恐怖に怯える。悪漢から美々と白湯を守るべく、満は今再びぼっきの能力を行使し、これを撃退するのであった。


街中でぼっきの乱闘を起こして警察で事情聴取を受ける満たち。なんとか釈放を許されるが、自らの身体に眠るぼっきの事を知りたい満は図書館を訪問する。司書の案内で『ぼっき帳』(なぜかへんかんできない)というボロボロの本を開くと、そこには様々なぼっきの形状が掲載されていた。


満のモノと類似する風貌のぼっきを発見した白湯は興奮して取り乱し、思わず「このエロっぽいの ヒノのぼっきじゃ──」と声を荒げてしまう。その発言を司書に聞かれて警戒するが、逆に「しってたぜ ここに来たときからな…」と、満のぼっきが見抜かれていたと判明する。


松露葉町はぼっきの街。ぼっき化した司書・氷髯の猛襲から白湯を守るため、満もまた再びぼっき化して反抗する。『ぼっき界のロックスター』を自称する氷髯との戦いで、満はぼっきを制御できず、ついに暴走してしまうのだった……。


火ノ宮満(ヒノ)
主人公。ぼっきの力がバレないよう、人目を避けて生活しています。学校では悪戯心からぼっきの力だけでペンを飛ばすなど、ある程度は力の操り方を会得している模様です。ぼっき化すると頭から仮面を被るのですが、こうした「避妊具教育」を隠喩する表現は、たいへん好感が持てますね。性の乱れを抑止できない現代にこそ、必要な描写と思います。

真の姿(←以後フルぼっきと記載するが、なぜか変換できない)に変形した際は、「超常のスピード」「アクロバティックな身のこなし」「何物も粉砕するパワー」でぼっきの力を行使します。フルぼっき時には仮面の装着が必要ですが、中途半端なぼっき化なら仮面は不要のようです。これはいけません。先走る前にキチンと仮面を被らないと、本来は極めてキケンです!

白湯への想いが強まるとぼっきが制御不能になり、暴走する一幕もありました。このように、ぼっきさん(←なぜか変換できない)としての経験はまだまだ未熟です。しかしながら、秘めたるポテンシャルは計り知れません。熟練者を相手に「ぼっきテク」では劣っても、本能的なパワーだけで形勢逆転し、責め立てるほどです。

口数の少ない美少年でありながら、本番では生粋のドSへと転身するギャップは、男女ともに惹かれる要素が高いはずです。男性読者は彼のヒーロー性にきっと憧れ、女性読者は彼の変貌ぶりにきっとドキドキすることでしょう。今後の成長に期待が掛かります!


美々の母
第1怪の冒頭で、難婆と輪愚のぼっきに貫かれた挙げ句、胴体を引きちぎられて殺害された女性。愛娘の美々が敵の手に渡る前に、美々を安全な場所へテレポーテーションさせるなど、女性ながらぼっきさん(←なぜか変形できる)でした。人妻だけあってぼっきの何たるかを熟知していた様子ですが、娘を庇うために命を落とす薄幸の人となりました。


美々
第1怪の冒頭で、ぼっきの存在を察知して落書き帳に描き記すなど、幼女ながらぼっきさん(←なぜか変形できる)でした。思念を受理したり、伝達したりする描写がありますが、ぼっけの能力をコントロールできていません。難婆と輪愚が美々を狙う理由も含めて、今後もまだまだ登場と活躍の機会があるでしょう。


難婆
美々の誘拐を策謀し、怪しげな道具を使って満を追い詰めるなど、老婆ながらぼっきさん(←なぜか変形できる)でした。年の功からかぼっきに精通し、相棒・輪愚の行為もコントロールする司令塔のような存在です。『ぼっきの道具』で白湯の身体を弄ぶなど、オトナならではの戦術を展開しました。

難婆と輪愚で「ナンバリング」のアナグラムになりますが、難婆の神通力は「数字」に関連する様です。第2怪では対象をカウントダウンして爆発させました。こんな老婆に暴発させられると思うと、一男子としてはやるせません…。フルぼっきせずとも、体力の衰えを頭脳プレイでカバーするテクニシャンな女性ということでしょうか。


輪愚
頭脳派の難婆に対して、猪突猛進型のぼっきさん(←なぜか変換できない)。巨大なナリでパワフルな猛攻をみせ、これまさしく「第一話で主人公にやっつけられる敵」の鑑みたいな存在でした。フルぼっきすると満を「ウマカロウ」などと述べた点から、可愛ければ男も女も関係ないみたいです。

第2怪では満から負った傷が完治せず、コートの奥で血が滲んでいます。まさか、満が初めての相手だったのかと深読みしてしまうカットでした…。(色んな意味で深読みしたくなかった)


矢野警部
松露葉町に眠る神の一族の存在を語った刑事。ぼっきに関して非常に詳しく、満たちが警察に提示したメモの匂いを嗅ぐなど、常軌を逸する言動・行動が目に付きます。きっと鼻が利くぼっきさん(←なぜか変換できない)なんだろうなと予想してます。あるいは、あのメモから女子高生の残り香を楽しむほど生粋の匂いフェチとしか思えません。


氷髯
松露葉図書房の司書。「ぼっき界のロックスター」を自称したら女子高生に笑われたので、カチンときて思わず手を出しそうになったぼっきさん(←なぜか変換できない)。白湯をナンパしたり手を出した以前に、その二つ名だけでも最高にロックな変態だと思います。あと、セリフに妙な英語を織り交ぜてくるのは、ちょいちょいイラっときていいと思います。

満が図書館を訪問する以前から彼の正体を把握しているなど、謎めいた存在ですね。満を消そうとしなかった点から、難婆たちの同志ではないと推測しますが…。満の力を試そうとフルぼっきで迎撃したのに、中途半端なぼっき化でしかない満に負けてしまい、どこか押しの弱い印象です。


以上、あらすじと登場人物に絞って、本編二話分の内容をご紹介しました。今回は表層の言及のみに留めますが、ぼっきさん(←なぜか変換できない)の見所は『松露葉町』という舞台にもあります。人物だけでなく「町」の描写も注意深く観察すると、様々な新発見があって楽しいですよ。

松露葉町の解説は、台詞や地文からの解説だけに依存しません。例えば、西先生独特の「柔らかくて暖かな背景」からも示されています。この、ちょっとレトロな雰囲気漂う田舎町の存在感にも、ぜひご注目ください。西先生の『ぼっきさん』に、文字通り下半身を膨らませつつ、期待を寄せております!(←なぜか変換できないけどオレは変形できる!)