1776. 週刊少年ジャンプ04・05号 - バクマン。 19ページ『デビューと焦り』

ぼっけさんの感想も書きたいんだけど、仕事が落ち着かないことには、なかなか…。せっかく合併号で全感想できるチャンスだったけど、年末年始も激動の計画で身動き取れません。やっぱ、年の暮れ頃になると更新なんてできなくなるんだなぁ。

今話の要点

  • 服部さんから王道の描き方をアドバイスされる。
  • 最高「僕たちが連載するまで絶対連載続けて待っていてください」と宣戦布告。
  • エイジ「亜城木先生はボクのライバルになると思います」と見抜く。
  • ヤングスリー連載中の『聖ビジュアル女学園高等部』で亜豆のデビュー決定。
  • 最高の弱気なお祝いメールに、亜豆は叱りつつも励ます。


ポイント考察 - 改めて「善玉」対「悪玉」
エイジの「漫画を描くために漫画を描く」澄んだ動機に対し、亜城木サイドの「○○するために漫画を描く」不純な動機からして、少年マンガ的には「王道」vs「邪道」に見える構図が面白いです。おそらくルックス以外のすべての要素で、エイジは善玉要素、亜城木は悪玉要素を握ってます。

おじさんが漫画家で、おじさんの仕事場を貰い受け、漫画描きの私財も引き継ぎ、編集長は旧知の人、結婚を約束した彼女も居て、心の通い合った親友も居て、勉強しなくても成績は並程度の学力があり、地元暮らしで見知った仲間も多く、そしてルックスもイケメンだ。

対して、田舎の両親と離れ、人付き合いも苦手な中、一人暮らしを強い、担当も何らかのスキルに長けた人材ではなく、高校に通うわけでもなく、恋人も親友も友達もなく、彼自身も「そうした存在」を特別欲しているわけではなくて、ひたすらマンガしかなくて、そしてルックスも変人タイプ。

意図的に対比させて記述したにしろ、ここまで環境・境遇を逆に描いてるのは、それこそ「計算」以外の何者でもありません。そうでありながら、後者・エイジの方がマンガ力が高く、純粋に見えてしまうという。これが美内すずえ先生のマンガなら、確実にエイジの方が主人公です。


ポイント考察 - 大場先生が描く「天才」像
ネームも設定も展開も纏めず「キャラが勝手に動く」とかで物語が描けるなんて言う人、オレは絶対信じないんです。ですが確かに、エイジ並のマンガ力があるなら、『天才ゆえ』の納得感はありますね。毎度思いますが、大場先生はこういった『ずば抜けた天才』の描き方が巧いです。

バクマン。』の最高や秋人は、連載開始当初こそ、天才を描こうとして失敗してる印象を抱いていました。ですが、今となっては本物の天才との比較描写だったとさえ思えるほどです。きっと、良い意味で裏切ってもらえたんでしょう。

大場先生が描く天才って、とにかく浮世離れしてます。人間が本来必要である物事の大半が欠落してるけど、ただ一点の才能に特化してる感じ。いろんなところがダメダメなのに、その天才性が輝く瞬間の言動だけは、強烈な説得力をもたらすように思えます。むしろ、「いろんなダメ要素」すら愛らしく思えてくる始末。


きっと、最高や秋人に語らせたらなにくそと反感するフレーズも、エイジに語らせればとりあえず納得しちゃう。エイジほどの研ぎ澄まされた才能、桁違いの経験、達観した思想に裏付けられた言葉だから、軽んじて捉えられないのかもしれません。「中高生のちょっと背伸びしたような発言」とは違うのでしょう。…いや、最高も秋人も、そこいらの中高生とは圧倒的に努力の量が異なると思いますけども…。

そういう意味では、今回エイジに「背の小さい方は一人でも上ってくると思います」と言わしめたのは、大場先生からの回りくどいテコ入れだったように思えてなりません。もしやエイジは、ジャンプ界のカカシ先生や一護に並ぶ『ヨイショの達人』になれる存在やもしれないですね。


ポイント考察 - エイジの期待
エイジは対人スキルや精神年齢やが低い子だと思ってました。今までの描かれ方からして、そういった特徴が強いのは確かでしょう。ですが今話のエピソードを経て、彼の他人に興味を持たない内向的な性格は、「天然」ではなく「環境」故との印象を抱きました。

エイジは必ずしも人間嫌いや現実嫌いというわけじゃない。「漫画」という世界を介せば、エイジの興味関心は「作家」にも沸くんですね。例えば、「折り合いをつけて人間関係を維持する」なんて器用な真似、彼にはできっこないと思ってたんです。

今週、最高がエイジの反感を買う言動を発した場面でも、ああこれでエイジは機嫌を損ねただろうな、などと予想ページをめくっていたわけです。ところが、エイジの反応は意外にもクールでしたね。もっと子供っぽく逆上するイメージがあったんですよ。『漫画がデキる奴』相手なら、とことん興味を持つ、そんなエイジの偏食っぷりに、大きな好感を持ちました。


ポイント考察 - 「打ち切り権」要求のわけ

翻って、編集長に「嫌いな漫画を打ち切る権」を要求したわけも、彼が面白い『漫画』を読みたいが故の、愛情の裏返しだったのかも知れません。嫌いな漫画が掲載され続けることによる「機会損失」を最小限に抑えたい、極めて素直な要望だったのかなあ、などと推測してみました。詰まらない漫画はサッサと打ち切って、面白い新連載が始まってほしい。エイジにしてみれば、「打ち切り権」はたったそれだけの話に過ぎなかったのかも…。

そしてまた、エイジにここまで評価をテコ入れしてもらった最高が、この後、どのような理由でエイジに嫌われる(勝手に確定事項)のか、(いつもいってる気がするけど)非常に興味をそそります。今のところ大本命は「漫画を描くために漫画を描いてない」という不純さがありますが、これじゃストレートすぎて面白くない。大場先生ならではの、虚を衝いた理由でド肝を抜いていただきたいところです。


今週のバクダン
ダイの大冒険! …なんとなく。


次回予想
キャラごとに、次回やってそうなことを予想。

  • 最高 … 可愛いヒロインを描く練習(ヘタッピマンガ研究所Rみたいな流れ…)
  • 秋人 … 泣けるエピソードを研究
  • エイジ … アシスタントとの連係プレイに四苦八苦。でもすぐ慣れちゃう。
  • 亜豆 … 二宮さんのエロ攻撃を難なく回避、逆に手玉に取ったりしちゃう。
  • 香耶 … 秋人を泣かせる。暴力で。

残存するキーポイント
以下、これまでの感想で予想した内容をまとめてます。

  • [高][12-] 美保は少年誌あたりで水着グラビアを飾り、ブレイクする。
  • [高][12-] グラビアのブレイクを逆手に取り、事務所へ声優路線の意向を強気に示す。
  • [中][16-] 編集部の意向を味方に服部担当の反対を押し切り、亜城木の連載が決定する。
  • [中][06-] マンガ雑誌『少年スリー』は今後も何らかの形で再登場する。
  • [中][07-] 高校進学以後、秋人は香耶を使って「美保の情報」を入手し続ける。
  • [中][09-] エイジと最高の評価に並び、エイジのプライドが傷つく。
  • [中][09-] エイジは最高のマンガを打ち切りに指名する。
  • [低][06-] 中学の同級生「石沢」は意外とプロになっちゃう。
  • [低][18-] あくまで王道マンガの道を目指し、最高達は服部担当と決別する。


これまでのバクマン。感想