1770. 眠れない夜の対処法は「無意識のイメージプレイ」

以前、R25で紹介されていた「ナチュラルハイ」の記事が印象に残っています。

記事原文では、ナチュラルハイの仕組みを生理的根拠から取り上げていました。脳内のドーパミン濃度が上がることで「ハイ=快感」が得られるとしています。とはいえ、ドーパミンは意識しても簡単には分泌できません。では、どのような状況下でドーパミンを得やすいか、以下に言及されています。

「ハイは快感だけではないと思います。誰しも何かに没頭した時、えも言われぬ心地になり、我に返ったら長時間経っていたという経験がありますよね。これも“ハイ”と呼ばれるもの。普段私たちは『私』と『ものごと』を分離して考えますが、ハイの状態ではその境界が曖昧になる。野生動物は食事の時『いま私は餌を食べている』なんて考えないはず。私と餌が一体化して、ただ食べるという行為だけがある。それがハイです」

今週号の『銀魂』で、眠りたいのに眠れない寝苦しい状況が生々しく描かれました。月に何度かはあんな風に眠れない夜を迎えるので、眼球の置き所や、目を閉じた後の視界を意識してしまうのは非常に共感できます。

寝苦しい時などは特に、次から次へ雑念が巡るもの。眼球・視界・呼吸を意識しすぎて気になったり。過去回想や未来計画へ思いが巡ったり。明日は大事な用事があるのに、と気を焦ったり。雑念が巡りすぎて疲れて寝るのを待つのもいいですが、すると平気で2〜3時間を要する時もあります。

そんな寝苦しさをやり過ごすため、個人的なコツ(対処法)を実践しています。その内容は以下のようなもの。

  • 雑念をかき消す
  • 目を開けない
  • 舌を動かさない
  • 呼吸を意識しない
  • 肉体がベッドに溶けて一体になるイメージで寝る

これ、総合すると「無意識を意識する」という矛盾染みた内容なんですよね…。例えば一つ目の「雑念をかき消そうと意識する」も雑念の一つです。そう考えると他も同様に思えてきます。

こうした「雑念対策の雑念」をどう表現したらよいものか倦ねていました。しかして、元記事の話題が結論に至ります。「雑念対策の雑念」てのはつまり「『私』と『ものごと』を一体化する手段」なんですよ! ここだけ言うと新興宗教の決め台詞みたいだ。

原文の言葉を借りて説明すると、下のような三段階を経て人間が眠りに至ります。

  • 第一段階(分離状態):『私』が『睡眠』を行為する
  • 第二段階(曖昧状態):『私』と『睡眠』の境界が朧になる
  • 第三段階(一体状態):『睡眠』という行為だけがある

第一段階『眠ろうとする私』が第三段階『眠りと一体化した私』へ遷移する手段として、「雑念をかき消そうと意識する」「呼吸を意識しないよう意識する」「肉体がベッドに溶けるイメージを意識する」のです。第二段階『境界が曖昧になる』の中で、意識は次第に無意識化していくのです。やっぱ宗教のセミナーみたいだ。

思想としてはたいへん納得がいきました。長年のもやもやが解けてスッキリした気分です。しかしこの話、科学視点からは矛盾します。有体にいうと、ドーパミンが分泌すると睡眠が阻害されるからです。(参考:「GABAの働きや効能」

  • 思想:眠るためには『睡眠』と『私』が一体となるべし(=ハイの状態)
  • 科学:眠るときにはドーパミンが抑制させるべし(≒ハイの状態)

思想的には「私と眠りが一体化して、ただ眠るという行為だけがある」がハイであると定義づけてよさそうです。しかし科学的には、ドーパミンがどばどば分泌されている状態をハイと定義します。ああ、二律背反する睡眠の命題。やっぱり「眠り」って行為は考え始めると深いです…。

今夜はこの問題で思い巡って、どうやら眠れそうにありません。