1754. 理系ネタの敷居が低くなればいいのに

ノーベル物理学賞がおめでたでした。かような理系ホイホイのニュースを見たからには、あの動画を紹介しないわけにはいきません。


組曲宇宙論
♪今日もNASAから バーストとらえろ 必死で〜!

D


物理学の中でもとりわけ「宇宙論」や「素粒子論」ってのは、本や座学から入るより、映像作品から入門するのが最適です。この分野は「文章説明よりも図解解説よりも数式での証明がすべて」ですから、ヘタにつつくと藪から蛇という世界。一瞬でやる気を損ねます。

そもそも理系ネタって、表層だけでは取っ付きにくい分野なんですよ。なぜなら理系の学問は、小学、中学、高校の基礎学力を地道に積み上げる必要があり、そこまで理解してようやくスタート地点に立てます。そして、大学でやっと本番を学べるという境地です。この取っ付きにくさは酷い…。

しかも学校での勉強は一定のカリキュラムに乗っ取った「押し付け型」。理系の学問ってのは、先に「素朴な疑問」ありきで「解を探求する手段」を探求する学問なのに、順序が逆転してるわけです。この公式を使えばあの自然現象も証明できるんだよ、てな具合で解→謎を紹介していく「押し付け型」。これじゃ理系は楽しくありません。

ところが理系ネタは、動画から入るとものすごく面白そうに見えます。なぜなら、例えば宇宙や素粒子を、グラフィカルな仮想表現でぐりぐり動かして紹介すれば、直感的に「疑問」が見えるからです。それに映像作品は、圧倒的多数を占める一般視聴者を意識して、極力、数式を前面に出しません。ナレーションも易しい言葉を選んでいます。だから理解しやすい。

もちろん、そんな「理解しやすい」は嘘っぱち。本当は「理解した気になった」程度なんですけどね。理系世界に誘う導入編としては最適の代物でしょう。

オレが中高生の頃は、科学解説映像をお目当てに科学博物館などを巡って、それを眺めては胸躍りまくったわけです。宇宙というおよそ無限大に近い広大なものを、素粒子というおよそゼロに近い微少なモノで解き明かしてみせるギャップ感に、いつもぞくぞくさせられました。

その点、今の世はその手の動画もweb上で簡単に入手できます。そう考えると、理系の敷居は十年前よりずっと下がってきました。しかして、理系学問を学びやすい土壌が整ったわけです。そして今回、ノーベルをしてお祭り騒ぎで「素粒子」や「宇宙のひみつ」に興味を持った方々が、その手の動画に目を向けていただければ。

日本にも、もっともっと理系人口が増えて、理系ネタの敷居も低くなって、取っ付きやすくなって、面白い理系エンターテイメントが成熟してくれるんじゃないかなと期待しちゃいます。漫才やコントや音楽やケータイ小説にも、もっと理系ネタが増えればいいのにな。

ゆくゆくは「レイプ・妊娠・中絶」じゃなくて「タージオン・ルクシオン・タキオン」みたいな。