1745. 週刊少年ジャンプ43号 - バクマン。 6ページ『ピンとキリ』

今週号の「バクマン。」について、大きくネタバレを含んだ感想記事です。最新号を未読の方は、閲覧を控えて下さい。


今話の要点

  • 前回のまとめ=成功するマンガ家の三大条件は「自信」「努力」「運」
  • 賞に入選すれば必ず担当編集がつく
  • マンガ家は担当編集を選べないから、いい担当が付くかは「運」次第
  • 最高はおじさんから、担当編集に纏わる色んな話を聞かされていた
  • 最高は実際に編集に会ったことはない
  • 「『少年スリー』にダメ原稿持ってこーぜ!」→編集見学のため
  • 亜豆母、美保、妹の三人とばったり遭遇
  • 最高と美保の周波数がピッタリ合っている話
  • 原稿タイトル『ダブルアース ふたつの地球』
  • 秋人から次々飛び出す中二設定に感動し、褒め称える最高……


ポイント考察 - 担当編集と持ち込み原稿
わずか数ページに渡る担当編集のエピソード紹介でしたが、マンガ業界の実話と本音を交えた実にバクマン。的な描写を久々に読むことができました。よし皆、ネットへの書き込みは絶対に禁止な! 絶対だぞ!!

「ダメ原稿」作ってどうでもいい出版社に持ち込んで偵察しようぜ? ってアイデアは、割と誰もが素人考えで思い浮かぶものでしょう。当然、出版者側も冷やかし対策は練られてそうです。出版社でブラックリスト入りしたり、会社によっては「二股禁止」を暗黙の了解として約束させられたり…。

そう考えると、思い付いても実行する勇者はどの程度いるでしょうね。あるいは、「ダメ原稿」でもそこそこの労力を要するので、そんな暇があったら「本気原稿」作るよって考え直す人の方が多そうです。例えば、今回の最高たちみたいに。結果的に「冷やかしの持ち込み」ってのは、思いついても絶対数は少なそうな気がします。

話題は横道に逸れますが、例えば集英社のケースなら、「持ち込み」は一日何件ほどあるのか? その辺りに個人的な興味があります。週一件、月一件のペースなら、持ち込み対応は『手の空いてる編集者』が担当するでしょうし、一日数件ペースなら、編集部で「持ち込み対応シフト」を組んだり、「素人対応の専任者」を設置するでしょう。

出版社の持ち込み対応ってのは、いわゆる「人材の採用活動」ですよね。将来性を考えれば持ち込みは多い方がいいし、対費用を考えれば持ち込みは少ない方がいい。そのバランスは、一般の会社なら自発的にコントロールできる所ですが、出版社(マンガ業界)は逆なんですよね。

要は、採用活動にどれほどのコストを掛けられるのか。そして(例えば集英社なら)どのような体制で、出版社は持ち込み原稿を受け入れているのか。その辺にも是非、メスを入れていただきたいなあを、「バクマン。」には期待しています。


ポイント考察 - さりげない情報にも注視
「少年スリー」の元ネタは、数字絡みのパロディで「少年エース」。もしくは「3→サン→サンデー」のモジりでしょうか。「少年スリー」は今回何気なく登場したキーワードですが、使いどころがあれば今後も活用されていく雑誌になりそうです。

これに関しては、マンガ家になれないタイプとして挙げられた石沢くんだってそう。数年後、石沢くんが「少年スリー」で連載して、最高たちと微妙に絡む展開も、低確率ですが予想できます。

過去の情報をリサイクルする演出は、読者サイドにも制作サイドにも有効な一手です。

  • 設定を一から生み出す労力が削減できる
  • 「ずっと昔から構想していた感」を演出できる
  • 作者〜読者間で情報共有できている状態なので、再登場時、余計な説明が不要

特に昨今のマンガは、いかに緻密な『伏線』を織り交ぜて壮大な世界観を演出できるか、的なポイントに評価が集まりがち。登場当時はノイズに近い情報が、後の展開で一個体のパーツに格上げされるケースって、あながち無視できません。過去の小畑×大場作品では「清楚高田」がそれにあたります。

とはいえ、ほとんどのノイズはノイズのまま飛んでいくので、漫画業界サイドに存在する「少年スリー」はまだしも、「石沢くん」の方は言い過ぎかなと思います。


ポイント考察 - 『ネーム講座』はもっと先?
前話の感想で書いた予想の答え合わせ、一つ目。

  • 今回は『作画講座』だったので、次回は『ネーム講座』? → ×

前者の『ネーム講座』は、考えてみれば最高も秋人も未経験です。前回は、最高に「漫画の描き方」の知識があればこそ『作画講座』を実演できたのした。ですが『ネーム講座』は、現時点で「ネームの描き方」を先導できる人間が身近に居ません。

頼みの綱だった「おじさんのネーム」も、普通のマンガ作品と比べて特異であり、一般的なネーム制作を勉強する資料として不適切なのでしょう。原作のテクニックや練習法を紹介するような『ネーム講座』は、現時点では望めず、先導者(=担当編集)の登場待ちかもしれませんね。

一言でまとめると、今の秋人には指導者が必要です。(秋人は天才(笑)だから一人でテクニックを見すかもですが)


ポイント考察 - なぜ最高は「ネーム」を描いうともしないのか?
前話の感想で書いた予想の答え合わせ、二つ目。

  • 原作&作画の両方を認められた『新妻エイジ』に感化され最高もネーム熱が急上昇? → ×

後者の『最高も原作を描きたくなる」は、今話を読んで逆に素朴な疑問が浮かびました。最高はマンガ家になりたいと宣言しながら、なぜ原作の道は最初から放棄しているのか。作画に関しては「自信」「努力」「運」の三拍子が揃った星の下に生まれながら、原作の方は、今まで一度も挑戦していません。

最高は結果的に秋人の才能に感化されて、「秋人の原作でマンガを描きたい!」と決心しました。しかしながら、それは順序が逆だろうと思うんですよ。「原作描いてみたい!→自分には才能がない…→秋人の原作の才能すげえ!!」なら納得なんです。今話は、その行程を踏んでいない点に、展開の強引さを感じました。


次回予想
秋人の中二病ネームが、申し訳ないのですが個人的にはサッパリつまらないんですよ。オレの感想が万人の感想とは思わないですけど、いくらなんでもこれはないと断言したいほどです。この直感的な感想を素直に評価すると、今話までの最高と秋人の自惚れはすべて大場先生の計算と読み替えられます。

詰まるところ『べしゃり暮らし』と同じですね。

『学園の爆笑王』がプロで一切通用しなかったように。最高&秋人の「自称天才」な童貞妄想は、「プロの業界」「大人の社会」にはまったく通用しないのでしょう。作中の笑いどころとして示した『どっ』が読者に受けないのは計算だったように。最高や秋人が天才と自惚れる度、なんだか「ガキの生意気」に感じる違和感もまた、計算だったという。

最高のような「絵だけ上手いだけの人間」や、秋人のような「俺はまだ本気を出していないだけ」の人間は、実のところ業界にもゴロゴロ転がってて、現場を見て思いっきり凹んでほしいなあと期待します。きっと読者の多数派は、二人のそういうシーンを早く見たくてうずうずしてると思いますし。(※ここ主観的な意見ですよ)

べしゃり暮らし』はヤングジャンプでネタ晴らしできたけど、「バクマン。」には事実上、それほどの猶予がないハズです。10話目か20話目を区切りに『価値観の逆転』を描いてくれないと色んな意味で間に合わない気がして、妙にドキドキさせられます。


残存するキーポイント

  • [高][05-] 第5話の『作画講座』同様、『原作講座』も大々的にページを割く
  • [高][03-] 最高の父の正体(マンガ編集者の部課長クラスと予想)が明かされる
  • [中][03-] 父とおじさんの過去エピソードが語られる
  • [中][06-] マンガ雑誌『少年スリー』は今後も何らかの形で再登場する
  • [低][03-] 祖父の正体が明かされる(個人的希望)
  • [低][06-] 中学の同級生「石沢」は意外とプロになっちゃう


これまでのバクマン。感想