1662. フィナーレ感想、さよならムヒョとロージー『1/3 - 作品』

6月4日の最終巻発売をもって、『ムヒョとロージーの魔法律相談事務所』は完結しました。同日発売ジャンプSQ.でスピンオフ(?)作品「四谷先生の大冒険」も発表されましたが、本シリーズはひとまず区切りがついたと言えましょう。西義之先生、お疲れ様でした。

SnowSwallowでは、とりわけ連載当初から中盤にかけて、ムヒョロジを応援してきました。

設定上の矛盾。物語構成上のツッコミ所。人物描写の稚拙さ。ウィークポイントが多数あったのは否めない事実です。それでも応援したかったのは、偏に「登場人物の魅力」と「世界観の表現力」に惹かれたからです。そしてなにより、ムヒョロジは少年少女に『夢を与える』作品だったからです。

『魔法律協会』や『幽世』に代表される空想世界の独創的なデザイン。『魔列車』『冥王』など数多登場した地獄の使者の、鮮やかな描き込み。数々の魔具、数々の罪状、数々の悪霊をもって、際限なく広がりを持たせた設定群。そのどれもが、中二病の患部を高鳴らせます。

例えば「地獄の六王」という設定。本作は、物語上で六の王を登場させる義務を放棄しています。『妄想の余地』というゆとりを残した設定を、恣意的に潜ませる作風なのでしょう。こんなキチンとてない作風、近年のマンガにしては逆に珍しいですよね。普通は、後で矛盾が出ないようにカッチリ型を作っているものです。

オブジェクトの表現力。独創的なデザイン。ファンタジーならではの設定数。そして、ゆとりある設定。その総合力をして読者は、設定の余白を大いに予想・妄想させられます。それは『夢を見てしまう』ということ。

重ねて言いますが、ムヒョロジは、少年少女に『夢を与える』作品だったと信じました。そのパーソナリティは、『週刊少年ジャンプ』が損ってほしくない「価値」だと評価していました。だからこそ、長らく応援してきました。

コミックス冊数にして18巻。まだまだ続きを読んでいたかったし、回収できていない伏線も気になります。たいへん『悔い』が残りました。当時、打ち切りを非常に寂しく感じたものです。

その一方で、一ジャンプ読者の冷静な視点から見れば、打ち切り処置には一定の納得感を抱けました。時を経て、ジャンプの情勢は変遷していました。ムヒョロジの存在はいつしか、ジャンプにとって『必然』じゃなくなったことに、気付いていました。最終巻の人気投票を見ても、票数の少なさにやはり…という他ありません。

打ち切りは残念でしたが、西先生の次回作に期待が膨らみます。赤マル『秘密のヤミー』も、SQ.『四谷先生の大冒険』も、今ひとつな感想を抱いたのですが、まだまだ挽回の余地は十分。それから、お願いだから次は矛盾や間違いを減らして(無くして)いただきたい…です。応援してるからこそ、好意的解釈でフォローするが大変な時もあるんだ!(楽しかったけどね!)

ムヒョとロージーの魔法律相談事務所』。SnowSwallowのフィナーレ感想は、あまりに文量が多いため、今回より三部作に渡ってお届けする予定です。次回は『物語』について。短めに締めくくりたいものですが…。それでは、また後日。