1613. 先行感想 - BLUE DRAGON ラルΩグラド TALE1『Promise』

今週号の「BLUE DRAGON ラルΩグラド」について、大きくネタバレを含んだ感想記事です。未読の方は閲覧を控えて下さい。


交尾は世界を救う
乳揉んで気持ちいいと公言したり、快楽に身を委ねたり、大胆に「性」を意識させる本作。話題狙いも少しはあるだろうけど、真の作用は主人公の「世界を救う動機付け」にある。今や「世界を救うために世界を救う」なんてチープな動機を抱く電波主人公など、この世から滅亡したに等しい。

海賊王になるつもりが世界を救ったり、火影になるつもりが世界を救う。ジャンプに限らず、メディアに限らず、最近の物語は「主人公の人間性」を最重視する。ラルの場合は女と気持ちいいことするために世界を救うという、極めて本能的な動機だったのです。

これにはたいへん好感が持てました。「愛のために戦う」なんて気取らない。「正義のために戦う」なんて曖昧じゃない。『気持ちよくなりたい』という剛速球ストレート。これ以上分かりやすいメッセージ性もないよ。純愛ブームも氷河期に突入する勢い!*1

そもそも、こんなハイファンタジー世界観のど真ん中で、「夢」を追わずにまさか女の尻を追うなんて! 海外旅行のホテル先で引き籠もってインターネット漬けになるくらいもったいない! だからこそ、アイデアとして面白い。

ブルードラゴンというゲームの敷居で、バトル漫画の土俵で、少年向け雑誌の誌面で、小畑先生のイラストでやってしまうから斬新。こんな設定を編み出した作家側の方が大冒険してます。


扉絵
カラー扉絵の上部に描かれた『1. Pirate(略奪者?)』『2. Dragon master(竜使い?)』『3. Wizard(魔術師?)』はそれぞれ、『Pirate=増殖型』『Dragon master=侵食型』『Wizard=寄生型』に対応するのかな。でもこれじゃ、図示の番振りと「1st〜3rd」の名称とが一致しない。数字は呼称ではなく、強さや誕生順を意味してんのかな。

A〜Fは過去からの歴史と戦績を示す。『Demon=Gedro』『Medium=Cist』『Red Pirates』『Skull Pirares』『Witch=Gray pink』『Witch=Zero hunter』このあたりはゲーム内設定を反映したキャラクタ名か。このうち何体かは本編(ゲーム・漫画・アニメのいずれか)に絡むんだろうね。本編はFの時代で、今度発売されるゲームはこれ以前に起こった物語なのかな。

確かにラルグラドデスノ並に大ヒットすれば、ゲームやアニメの展開だってイヤでも意識してしまいます。


ラルとグラド
目的こそズレはあれど、利害の一致から協調するラルとグラドの奇妙な関係。否応なく月とリュークの面影を見てしまう。いつ崩れるとも分からない脆すぎる関係、仮初めの『フレンド』なんだけど、そこが魅力だったりする。

『脆さ』ってのは変化の前兆だ。「二人の協調関係は必ず軋みますよ」と予告されたようなもの。二人はこの後、近づき遠のき振り子のように揺らぐのか、プッツリと切れるのか、より深い絆を培うのか。様々な可能性を秘めているから、先の展開を想像できて魅力的に感じるワケなんだよね。ヒカ碁デスノと似たようなパートナーシップを描いてきた小畑先生だから、余計に意識させられます。


世界観
ゲーム一本分の豊潤な設定が背景にあるからか。あるいは小畑先生の絵柄に騙されるのか。重厚緻密な世界観がふんだんに溢れており、背景のちょっとした小物からも、この世界の歴史的・文化的な妄想を巡らせてしまいます。

もちろんRPGを原作に背負った致命的な短所も見られます。いくら美麗な画力で誤魔化しても、設定説明の詰め込みすぎは否めません。無理にゲーム設定をフォローする場面はゲームの強制チュートリアルを読まされる感覚。ここは、読んでいて痛々しくって思わず苦笑い…。


人でなしの国王
国王は表面的には寡黙で思慮深く、なかなか立派な武人に見える。そんな彼だから、国民の平和のために涙を呑み、息子を牢に閉じ込める決断を下したと推測する。本心では息子への罪悪感も沸くだろう。すると、人間感情としては人一倍息子の現状を気に掛けるものだし、カゲの知識も蓄えるのではないか?

それなのに、ああそれなのに。どんだけ息子に無頓着な父親やねん。城が崩壊の危機に瀕し、城下では町人が救いの声を求めるこの非常時、国王は事もあろうか悠々と基礎からカゲのレクチャー受けてる場合かよ! 国王とラルが赤の他人ならまだしも、アンタの息子のコトだー!

仮に王が、妻の死因に絡んで息子を疎ましく思っていたのなら、ラルを闇に閉じ込めた時点で殺害すりゃいい。だけどわざわざ、教育係を付けて食事から排便の世話まで気を回す配慮があります。親心からの愛情や、罪滅ぼしの念もあるように読めるのです。

結果「息子に無知である父親像」と「息子にすまないと思う父親像」が反発し、強烈な違和感を発しています。この非常時にミオ先生の過剰な設定説明は、ご都合主義のカタマリにしか感じられませんでした。


巨乳眼鏡淫乱教育係

  • もみッ もみもみ もみ もみ
  • ちょー! これは家族にコミックス貸せないわ…。
  • 「ここは私にまかせて」→「っ……」
  • 感 じ ち ゃ ダ メ だ ろ 。
  • 「ち 乳房よ」
  • 堪えて「おっぱい」と言わせないところに強烈な共感を抱きました。
  • 「母親どころか人間にも触れたことないんだもの… 私でいいなら」
  • クリスマスを直前に迎えて『ミオ先生に死亡フラグを立てようの会』が発足しますよ…。
  • 二回目の親指立ては、決意の表情が垣間見え、今話中最も”女の顔”を見ました。

「女を教える」実行為をここまで引っ張りながら、来週になったらラルは非童貞スタートだったりするんですよね。なんて夢のない! もっと、こうッ…!

身体中を汗に濡らすミオ先生が、眼鏡越しに湿っぽい瞳を上目遣いにして「ラルったらもう… 若いのね」と唇を半開きで呟きましょうよ。うっとりした表情のまま、必殺技「ここは私にまかせて」→「っ……」を第二話でも発動しましょうよ。

「俺もっと女を知りたい 15年分教えてくれミオ」とガンガン攻め立てるラルも希望したいんだけど、バナナ二本はそっち方面の伏線でしょうか。次回の名台詞は「じゃ約束 男の事教えてくれ」で決まり!!

*1:でもこういう作品が売れると「これぞ真の純愛ドラマだ!」とか番宣されるに違いないんだ。