1603. 先行感想 - ムヒョとロージーの魔法律相談事務所 第94条「勇気」

今週号の「ムヒョとロージーの魔法律相談事務所」について、大きくネタバレを含んだ感想記事です。未読の方は閲覧を控えて下さい。

表紙&扉絵
表紙は、獣毛が柔らかそうな梅吉がキュート。マフラーにしたら暖かそう! チビキャラなら梅吉の背中に乗れるようで、この設定(?)は本編にも使い回されそうだ。優は回を重ねるごとに女の子補正が高まってますね。

見開きの表紙カラーがまた完成度高いなあ。こっちはポスターが切に欲しいよ。天井吊りの仮面、朽ちた古書から生えるキノコ、怪しい湯気を噴く巨大壺、謎の卵に辞書の群れ…。ファンタジーアイテムでゴミゴミした背景は、いかにも西先生が好みそうなシチュエーションでした。

例えるなら「げんしけんの背景にオタグッズがゴロゴロしてるだけで、なんだかワクワクしてくるオタク人」みたいな。


ムヒョロジ人気の原点
現実世界(社会)と非現実世界(魔法律)の狭間に溶け込んで、ひっそりのんびり「日常」を暮らす二人。ムヒョロジの人気の原点って、日常に潜むミステリアスな二人組にあったのではと、表紙&扉絵を眺めてるうち気が付きました。一例挙げると、夏の読み切り編みたいな話。

今の展開は、魔法律が現実世界を飲み込んじゃって、その辺の魅力が露と消えてます。なにしろ魔法律家と禁魔法律家しか出てこない。これじゃ、かえって一般人の方が珍しいですよ。箱舟編に始まり、禁書の設定に、肉体の契約。本編はもう、日常編に後戻りできないトコまで、足を踏み入れたんですね。

リリマリの言葉を借りるなら、これぞまさしく「終わり無き闘いの始まり」ってわけか…。


ヒロイン死守属性
ミックの強烈な一撃を浴びた七面犬と梅吉。彼らと肉体契約を交わした六氷や毒島の身にも、大きなダメージが降りかかる。胸部を押さえる六氷、服が破れる毒島さん。

…服が破れる毒島さんッ!

そんな場所から破けたら、今にも「いざ、溢れ出ん!」とダンスダンスレボリューションに励んでいた毒島さんの巨乳なんて、一発でポロリ確定じゃないか。しかも切なげで苦しそうな表情が相乗効果となり、無闇にエロイです。『服が破けて切なげで苦しそうな表情のお姉さんは巨乳』って、なにこのアダルトビデオのパッケージ表紙。

しかしながら、そんな毒島さんの身体を張った見せ場も、草野のパッシブスキル『ヒロイン死守属性』の前には、木っ端微塵でございました。「ムヒョ 僕だめだ」と、あろうことか毒島さんの渾身の見せ場と、発言が被った! ちょっ、ま、待ってよ草野くん…。今ホントにダメそうなのは、六氷と毒島さんでしょ…。

その後は「困っちゃった表情の草野」「札を砕かれて切なげな草野」「鏡を持って今にも発射しそうな草野」「ボードを胸に抱いて苦しそうな草野」「今にも泣き出しそうな草野」「何かを閃いて頬を染める草野」と、毒島さんのお色気描写が読者の脳裏から消え失せるまで、草野の独壇場と化しました。

リリマリの言葉を借りるなら、これぞまさしく「終わり無き闘いの始まり」ってわけか…。


草野のヒロイン戦績
かつて、数々の刺客が「作中ヒロイン」の座を狙い、戦い、敗れ、散っていった。恐るべし、ベストヒロイニスト・草野次郎! 王者の貫禄、未だ潰えず!!

  • 草野○−×七菜(七ヶ瀬温泉)
     七菜の入浴シーンに対し、草野は胸板をさらして読者サービス!
  • 草野○−×優(魔監獄)
     優と理緒先生の師弟愛に対し、草野は六氷への想いを涙目で独白!(今さら!)
  • 草野○−×今井(魔法律協会)
     今井さんの役割は、『守られヒロイン草野』を死守するナイト様で確定に。
  • 草野○−×五嶺(トーマス戦)
     五嶺&恵比寿を噛ませ犬に、六氷&草野の相性をアピール。
  • 草野○−×キリコ(トーマス戦)
     「やあ ぼくロージー…」まさかの1ラウンドKO。
  • 草野○−×パンジャ(パンジャ戦)
     「ちくしょう…! ブタ…! ロージー君に近づくな コノ ブタ女め…!!!」
  • 草野○−×毒島(ミック戦)
     毒島さんのお色気シーンが途中から草野タイアップに変わってた。何を言ってるか分からねーと思うが、オレも何がおこったのか分からなかった…。


頭脳戦マンガへの一歩
今までのムヒョロジは、悪霊を一撃必殺のうちに葬り蹂躙する、いわば『インパクト重視』のバトルマンガでした。六氷以外に敵を淘汰する存在がおらず、彼が大技を発動するまで周囲がいかに時間を稼ぐかが、今までの魔法律バトルの見所だったのです。この背景には、三つの理由がありました。

  • 六氷が類い希なる天才であったこと
  • 六氷が絶大な煉を持つ執行人であったこと
  • 草野が役立たずだったこと

ミック戦では、上の三要素が逆転していることがわかります。明白な戦力差をいかに縮めて、逆転し、打破するか。ムヒョロジ=インパクト型バトルというベッテルを覆すべく、真っ向から対抗しています。

  • 六氷がいくら天才でも、手持ちの魔法律書は初級者用であること
  • 遠隔魔法律に加えて肉体契約に入り、煉の量云々の戦いではなくなったこと
  • 草野がパートナーシップに目覚めていること

強大な敵を相手に、小物の使者をどのように活用すればよいか。そのために敵味方の特徴を見極め、背景フィールドをも利用し、勝利ルートを考案して強敵を打ち負かす。戦いが長引いた分、こうした過程の積み重ねは、読んでいて爽快でした。

確かに一話解決の短編モノなら「インパクト勝利」で事足りました。しかしながら、10日間で禁書の暴走を抑止するというハードな長編では、そうもいきません。六氷の連戦は必死なので、煉消費を抑える必要に強いられます。そのために相棒の草野は、いかに頭を働かせるか? 今回の一戦は、知略型バトルマンガの第一歩だったのでは、と感じました。


威力は数百倍…?
先週のパチンコ変形による「威力は十数倍」を前振りに使った分、「数百倍まで跳ね上がる」という台詞自体に、唐突性はありません。確かに実際に威力は膨らむの? という根本的な疑問は芽生えますけども! ここは草野のハリボテ理論に免じて、そうした”大人の事情”は目を瞑り、騙されてやりましょう。

これ以上ミック戦が長引いたら、困るのは読者の方です…。


「努力」と「勇気」
パンジャ戦から間があっての今回なので、「努力」とか「勇気」とか言われてもハァ? 何それ? と思われた読者多数と思います。努力については、今話の回想編で強調していますが、ここでは梅吉のその辺の事情を補完しておきます。

梅吉の「弱虫」エピソードは、パンジャ&ミックの一戦で描かれました。六氷と草野がパンジャに囚われた折、梅吉はパンジャの面前に表れることができませんでした。彼に勇気が足りなかったからです。今回、皆の励ましから後押しされ、梅吉が発揮した勇気。その中で彼は「勇気とは仲間のために戦える心」と答えます。

奇しくもNEW GIANT HOTELで仲間を見殺しにしかけた、件のエピソードと対比していますね。さらにニクイ演出として、勇気を振り絞って撃破したのは、あの時弱虫な梅吉をバカにしたミック、という取り合わせ。あの戦いで梅吉の「弱虫」を強調していたのは、この戦いの顛末を想定しての事だったのかな?

なんてところまで強引に辻褄合わせすると、胸躍るものがあります。