1505. 新約「巨人の星」／「花形」
id:ioliteさんが「新約巨人の星 花形 読みました〜！」と自慢するもんだから、サイクロプスの飲み会の帰りに立ち読みしてきました。以下、感想と言うにはおこがましい雑感です。
当然のことながらネタバレにご注意下さい。
連載直前、このような意気込みを語った村上よしゆき先生。
貧乏な主人公が、環境に恵まれた金持ちエリートの鼻を折るスポーツ漫画は、これまでも無数に存在した。しかし平成の世、汗と泥にまみれる根性マンガは見栄えが悪いかもしれない。理論的にスマートな鍛錬を積む、現代型アスリートにスポットを添えた方が、はるかに現実味を帯びると。
しかし連載第一回。かの花形満に、当時の御曹司たる面影はなかった…。
- 花形満の初登場（Before/1966年）
- 中学生時代、草野球の賭け試合で飛雄馬と初対決の末、敗北。ガールフレンドを複数伴い、中学生なのに無免許運転して東京ディズニーランドへデートに誘い、クールに立ち去る。
- 花形満の初登場（After/2006年）
- 電車通学する花形くん（149cm）。不良が老婆を恐喝する場面で、無免許運転事件が嘘のように清々しい正義感を見せる。紆余曲折あり、御曹司のポケットマネーで解決することなく不良を撃退。学校にはガールフレンドはおろか友達すらおらず、校舎裏下で一人、コンビニおにぎりを美味しそうに頬張る。
御 曹 司 設 定 、 完 全 消 滅 。
2006年版・花形満の変貌
ちょっとォォー！ 村上先生ーっ！ 何をするダァーーッ！！
「恵まれた環境にある花形のほうがリアリティ」ってこれ、既に花形様じゃないだろ。別の野球マンガになっとるがな。コイツの場合花形きゅんだよ。
- 身長は149cmのチビッコ。
- 一流の野球選手を憧れる表情は、猫口でニャー。（連発）
- 思考回路が乙女的。自身を桜の花びらに例えて「僕はもう一度 咲いてみせる 咲いてやるんだ!!」
ここで注目すべきは、花形満というキャラクタ性だ。新約の花形は「総受け」「乙女思考」「美少年」と、女性ウケ属性が三拍子揃っていること。40年の月日は、マンガの需要をこうまで歪めたのか。そうした意味では、これはこれで立派な新約だ。
2006年版・星飛雄馬の期待
リトルリーグの一流投手として活躍した花形。彼の肩は故障し、投手生命が絶たれた。一筋の希望を胸に花形は「もう一度投手として返り咲くんだ」と諦めない。しかし現実は無情にも、彼の肩に終末を告げた。今後の物語展開としては、花形が強打者としてスタープレイヤーへ登り詰めるのだろう。
そしていよいよ、宿命の好敵手・星飛雄馬の登場に期待が高まる。花形が強打者として覚醒し、再び野球界に息吹かんと青い花びらを咲き広げた、その瞬間。
『花形が咲かせた花びらを飛雄馬が剛球で散らす』。物語とBL志向のダブルミーニング的展開を、この後の新約は、何度も繰り広げるのだ。 飛雄馬のボールを花形のバットは打ち返すことができるのか！？ 長らくこの分野に研究を重ねたオレから一つ意見するならば、そうしたリバ許容展開*1も期待させたほうが盛り上がる。
2006年版・星明子の進化
春風のいたずらから、花形が着替えを目撃した女性。彼女こそ星明子、その人だろう。40年の時を経て、星明子はミニスカが似合いそうな巨乳お姉さんキャラへと進化を遂げた。
草葉の陰からこっそり飛雄馬を応援する地味な姉には甘んじない──。
彼女から鉄の決心を感じた。それを証拠に明子さん、なかなかやり手の痴女である。花形の下半身を見るなり「あら でもそっちは…」などと、すかざず花形くんのたわわに膨らんだ股間を指摘した。
ちょっとォォー！ 村上先生ーーっっ！ 何をするダァァァーーーッッ！！
当時1966年の花形は、そんな淫乱痴女っ娘・明子に惚れたんじゃないやい！ 野球に全てを注ぎ込む星一家を、どこまでも一途に献身する明子だから惚れたんだ。だから花形は、幾度もの超人的な修行にも屈しなかったんだ。しかしこれじゃあ、これじゃあまるで…新約・いちご100%じゃないかー！
どんな新約やねん！
明子の誤解に花形は「違うんだこれは！」と弁明する。ポケットに隠し持った野球ボールを見せつけて、野球への意気込みを誇らしく語った。
ここまでやったなら、「違うんだこれは！」と弁明しつつ隠し持った鋼鉄バットを見せつけて、野球への意気込みを誇らしく語ればいいじゃないか。語りながら、花形のバットはなおも熱くなり、みるみるうちに明子と大人の恋を咲き濡らせればいいじゃないかしっぽりと。
そんな新約なら、マガジン読者の新約聖書になっていたのに。
