1435. 先行感想 - 爆笑妖怪めらりにょん

今週号の「爆笑妖怪めらりにょん」について、大きくネタバレを含んだ感想記事です。未読の方は閲覧を控えて下さい。

先行感想がめらりにょん…のネタバレ? 出オチじゃないか。


今年13号のWJに掲載された「オオエ丼(読み切り)」の一シリーズから独立化。当時の感想も、大江慎一郎先生の漫画に対して好評を示しました。今回も非常に荒削りながら、シュールな笑いが堪りません。大江先生は、個人的にイチオシの冨樫杯出身・読切作家さんです。目指せ第二の大亜門先生!


連載化を意識した設定
めらりにょんに「火の妖怪の息子」という新設定の付加。メラりにょんだから火なのです。ごく自然な設定付けです。そして相方も新登場。彼こそ水の妖精ジョビジョバン。どうして妖怪名を平仮名か片仮名で統一しないのか、その適当さに軽く憤りを抱きます。我々読者は大いにツッコミましょう。

「火」と「水」の妖怪コンビという相反する性質を組み合わせたのは上手い。しかし読者には、そんな根底の設定を感じさせない。極めてナチュラルに、下らないギャグ漫画へ走っている。並の作家なら、こうした設定はすぐに読者へ見せびらかすものです。それなのに、お笑いへ直走る迷走っぷりがシュール。

更に人間の主人公・田坂翔くんのキャラ設定も固まった。全妖怪から「黄金の事魂」を狙われる、少年漫画的な設定も、やはり連載を意識したもの。それなのに、なぜかお笑いで白黒付けるスタイルがシュール。大江先生のやりたい放題っぷりがたまりません。

正直、こんだけ設定固まってたら、連載化は時間の問題。大江先生ならノリだけで連載できそうだもの。氏にはWJでシュール道を極めて欲しいです。10週で打ち切られそうだけど。


大江先生流の笑いとは
大江先生のギャグをつまらないと思った方、正解です。しかし正解でありながら、その読み方は間違いです。本作最大の笑いどころは、田坂翔くんのノーリアクションっぷりにあります。更にいえば、田坂翔くんのノーリアクションに対するめらりにょん達のリアクションこそが、この漫画の最大の売りといえるのです。

めらりにょん達が笑いを外し、田坂翔くんのノーリアクションし、めらりにょん達がガッカリする。

大江先生の笑いの方程式、ここに極めたり。


ツッコミ役が足りない
それを証拠に、田坂翔くんがツッコミ役に回ると極めてつまらないのがこの作品の特徴です。

ツッコミはジョビジョバンに任せたいが、彼はツッコミじゃなくてヨイショ役。この漫画、お笑いに不可欠なツッコミ役が足りないんだわ。だから田坂翔くんが二役勤めるハメになる。大江先生の笑いは、彼のノーリアクション無しにコンボが繋がらないから、ギャグの半数がボケ殺しになってます。ともすると、大江先生ご自身、自分の笑いの売りが何であるか、ハッキリしてないのかも?

田坂翔くんにはいつもいつでも、笑わずクールにいてほしい。


爆笑ポイント
個人的に笑ったポイントには赤○のメモを付けたので、以下に書き出します。こんなデータに何の需要もないのがSnowSwallowの仕様です。

  • 柳沢慎吾じゃあるまいし…!!」ダチョウ倶楽部に続いて。昭和の笑いが好きそう。
  • 「完璧な流れだったのに…!!」ジョビジョバンに笑いの狙い所を丁寧に解説させるのは上手い。ガッカリ感出てます。
  • 「このおじいちゃんだったんだ!」→ノーリアクション→「普通に話すか…」。ガッカリコンボ最高。
  • 「もうこんがり焼けてるよ」不覚にも笑ってしまった。下らない…。こんな自分が一番下らない…。
  • 「前に居なきゃいけないのに横...」「笑えるか!!」意外に被害者リアクションもやり手の田坂くん。
  • 「どこが全力ッスかー!!ちょっとー!!」の次のコマ、『チラチラ』『チラ』。どこまでも笑いに貪欲な姿勢を高評価。
  • 「あえて股間っスーー!!」→田坂「……」ノーリアクションの後のガッカリを見たかったなぁ。
  • おじいちゃんが燃えた。
  • 一ページ超に渡る土器のノリツッコミ。こうした古典的なシュールは大好きです。
  • オチがノーリアクション。ガッカリしてる妖怪コンビが微笑ましい。読後感良かったです。


失笑ポイント
個人的に失笑したポイントには青○のメモを付けたので、以下に書き出します。ええい、言うな。

  • オデコの上のおじいちゃんに対し、田坂「なにーっ!?」は、うーん…。富樫杯の空気。
  • 「黄金の…タマ…?」金玉って言わせたいんでしょうか。二個ないと物足りない。
  • 「何か顔は違ったぞ!!」田坂くんがツッコむしかないか、この状況。しかし笑えない…。
  • 『じ… 地獄だァァァァァ……!!!!』完全にめらりにょんに飲まれた田坂。こんな顔してる時点で彼の負けだ。
  • ひき逃げ妖怪の登場と解説。もはや空気。
  • 燃えるおじいちゃんに田坂がツッコむのは白けた。


失笑ポイントを指摘して感想を終えるという読後感の最悪さは、富樫杯読み切りに通ずる精神です。