1117. べしゃり暮らし - vol.1「学園の爆笑王」

今週号の「べしゃり暮らし」について、大きくネタバレを含んだ感想記事です。未読の方は閲覧を控えて下さい。

今年頭の読み切り『スベルヲイトワズ』の連載化。設定焼き直しで嬉しい点と悲しい点が半々。

悲しい変更点
圭右に「偽りの関西弁」が消えたこと、子安から隠れたお笑いの才能が消えたこと(未確定)などは残念なポイント。お笑い=関西弁という偏屈なプライドと劣等感を脱却する…そんな成長物語も読んでみたかった。またラジオのハガキ職人関連のイベントが完全消滅したのも惜しい。子安の隠れた才能も、圭右が子安を認めるきっかけも、このネタが核になっていたから。読み切りが好きだった人間には、衝撃が大きいです…。

嬉しい変更点
圭右が「お笑い芸人」を目指す話ではなくなった。「学園の爆笑王としてモテたい」という、ごく一般の男子学生の目線にまで視点が落ちたのは、嬉しい変更点。漫画で『お笑い芸人』の空気や間を表現するのは難しい。テーマが学園モノに変わった事で、作風も安定しそうです。…といっても、最終的にはお笑い芸人の道を進む話になるんでしょう。

放送部
主人公の圭右はもちろん、脇を固める放送部の面々が良い味出してる。ヒロイン奈々の正義感が強く思慮深い性格は、圭右を真っ当なネタ師に矯正する役割として不可欠な人物。圭右のお笑いの素質を見抜き憧れる子安は、ネタを冷静に分析する知性派として活躍しそう。特に子安は、作中もう一人の主人公として活躍する可能性が高い。圭右と子安がどのようにコンビを結成するか。デコボコっぷりを発揮するのか。今から楽しみでなりません。模木さん似の明浩は圭右の良き理解者。”圭右の相方”を子安に奪われる苦悩・挫折・葛藤など人間くささを表現する人物になれば、私的には楽しみだなあ。

面白さを追求する主人公像
笑わない同級生に対抗心を燃やし、お笑い魂に誓って逆行に挑む主人公。おそらくはこれが、作中最も圭右の人格・魅力を印象づけるシーンです。自分がボコられてるのに、脅した犯人よりもお笑い道を貫く思考なんて、まず普通じゃない。だからこそ、圭右には底知れない魅力がある。圭右然りルフィ然り、『天然』と呼ばれる人種には時に常人を逸脱した思想を持つ。「天然なのに」という意外性の一面に、強烈なカリスマを感じました。

大人の奈々
ここからは完全に予想の範疇。

奈々は子安の事が好きで、子安の理知的で鋭い一面を理解している。スカート喪失時、気の弱い子安はわざわざ玉木に突っかかった。この時点で、奈々は子安が何か知っていると感付いたのでしょう。同時に玉木が犯人であると確信し、その後圭右の登場で奈々が真っ先にフォロー。明浩の「いや……圭右それは…」と冷や汗かいてるのが、良い具合に対比表現になってるよ。奈々が子安を信用していなければ、ここは圭右に完全ブチギレのシーンだったと思うのですよ。

そんなちょっと大人のドラマもチラ見せしつつ、奈々の心中は明かさず圭右の「お笑い」だけを全面に取り立たせた作風に、「はは…森田先生て…すごい!!」と唸ってしまいました。