1073. 第35回 - 決戦・壇ノ浦

今週は「ウタノマエ」も無しで、時間と予算をフルに使った豪華な大河ドラマとなりました。

合戦前夜

  • 天候が悪化して味方の狼煙さえ見えない状況。戦は翌日持ち越して軍儀に。

先陣を努めたいと申し出る梶原景時中尾彬)。しかし義経滝沢秀明)は、範頼(石原良純)付き添いの三浦義澄(小倉馨)に先陣を命じた。「近辺の海に慣れた義澄が先陣に望ましい」「個の手柄ではなく、戦に勝つことを第一」と説得するも、景時オジサンは反発しました。

これまでにも二人の亀裂は丁寧に描かれてきたから、どうも義経が景時を嫌ってる風に見えてしまう。義経にそんな気は無い事は分かるけど、景時は「義経から疎まれてる」と誤解するのでは? 味方同士でこの状況はマズいなあ。景時の息子・景季(小栗旬)くんも仲を取り持つのはそろそろ限界か。

能子の処遇

  • 先週「帝と親王の取り替え」の一部始終を知った能子(後藤真希)に、時子から処分が下される。

時子(松坂慶子)と領子(かとうかずこ)の密議の結果、能子には平家の舟を降りるよう命じた。能子はしかし、清盛の恩情から「最後まで平家として生きる」と願い出た。兄の手紙に涙して白布を探したり、平家と共に死ぬ覚悟を固めたり。能子の感情と立場が源平の両天秤で揺れ動き、最終的にどちらへ行き着くかワクワクできました。


戦局ダイジェスト

  1. 三月二十四日、義経と知盛は両雄一歩も引かず戦に望んだ。
  2. 義経ら、帝と三種の神器が乗っている御座船を捜索。
  3. 女子と見せかけ平家勢の待ち伏せ。平家に憚られ敵船に囲まれ、義経らは劣勢に。
  4. 弁慶がどこからともなく大岩を投げ出す。
    • ものすごい勢いで作り物感漂う大岩。
    • こいつはくせえぇーッ! ハリボテのにおいがプンプンするぜーーッ!!
    • 大岩が舟上で軽々しく転がってるゥゥ! ころころ転がってるゥゥ!
  5. 進退窮まった義経、漕ぎ手を射落とす戦法に。
  6. 掟破りの奇策に景時も知盛も敵味方関係なく困惑した。
  7. 熊野水軍の寝返りで戦況一転。
  8. 平家の乱れにご満悦の範頼。陸に流れた兵は範頼の軍勢が対応。
  9. 警護の固い舟を御座船と見破り突撃。
    • 能子が「まじない」と皆を伏せさせ、白布を巻いて義経の前に登場。
    • 味方の舟が加勢に入り、敵の舟に囲まれ、両者の攻撃が止んで戦線硬直。
    • 鏡を輔子(戸田菜穂)、曲玉を領子、封剣を時子に分けて所持。
  10. 波の流れが逆向きに。戦局は平家不利の状況に変わる。


一騎打ち

  • 知盛(阿部寛)は義経の舟を取り囲んで一騎打ちに。
  • 義経はロープに足を取られ体勢を崩し、いきなりピンチに陥った。
    • 喜三太(伊藤淳史)の機転で金粉を投げて知盛をかく乱。
    • 喜三太の機転で映像がキラキラ輝き義経が格好良く見えるズルイ演出に。
  • 常識的に槍と刀を揮う武豪・知盛は、真面目に本格的な殺陣を見せます。
  • 一方の義経、知盛と視聴者を小馬鹿にしたようなファンタジー殺陣を披露。
    • 久々に出ました。必殺ワイヤーアクション!
    • 「八艘飛び! 出た! 八艘飛び出た! 得意技! 八艘飛び出た! 八艘飛び! これ! 八艘飛び出たよ〜〜!」
    • 俺は限界だと思った。*1
  • 真面目に戦ってる知盛が哀れすぎる。
  • 知盛は義経と相撲を取った過去を回想し、今の戦いと重ねた。
    • 現実逃避しなきゃやってらんないよねえ…。


金粉とワイヤーアクション
義経と弁慶の一騎打ちは、豪快に桜吹雪を散らせてのワイヤーアクションバトルでした。今回の一騎打ちは弁慶の一戦を意識して、桜吹雪の代わりに金粉吹雪を散らせたんでしょう。弁慶戦のアホらしさを克明に思い出せました。


最後通告
波の変化と味方の裏切りで敗戦したと女子達に伝える知盛。本来ならこの仕事は宗盛がやるべきことなのに、駄目兄のためここまで辛抱強く働く知盛が健気すぎます。そして男気溢れています。

清盛さん亡き後の茨の道を共に歩んだ皆を、時子さんが深々と労うシーンは感動。日輪の扇を射られた時から今況を予期し、だからこそあれだけ”もしものとき”を想定して動いたことも暗に明かします。「西国の海は平家のものだった。我らはその海に帰ろう」のシーン以後も、なかなかの感動量。帝の「清盛のジジには、早う会いたい!」と子役で泣かせる作戦は卑怯なり!

入水
義経の目の前で、平家の者達が次々と身投げ。これはトラウマになりそうだ…。すぐに「引き上げよ!」と命令するも、肝心の舟が全く前進しないのは義経スタッフの意地悪ですか? 着物に矢が引っかかり飛び込めなかったのは輔子さんかな。三種の神器のうち鏡だけ残りました。

ラスト、時子さんが義経に向けた微笑みは、まるで母親の慈愛を感じさせました。それをうけて義経の「なりませぬー!」も、親類に向けた絶叫と感じさせる迫力。普段から別れに無頓着な義経が、誰かの別れのために能動的に叫ぶなんて、今までなかなか見られない事でしたから。


宗盛と知盛
宗盛と知盛の全く対照的な最後。覚悟を抱かず飛び込み、息子(かな?)から「それでは死ねぬ…」と冷ややかな目線を送られた宗盛。本当に情けない…。彼にはとうとう武家の魂が宿らなかった。対して知盛は武家となって死ねました。ラストなんて武神か武鬼か、激しすぎる気迫。自ら重しを纏って海に沈むまで、目が離せませんでした。

知盛の最期「見るべきほどのものは、すべて見た」というセリフ。これは平家の栄華衰退を一通り見てきた知盛だからこそ輝く言葉。知盛の死が平家の終焉と見事に重なりました。


お徳さんの締めくくり
この戦いは「悲しいとか哀れ」と表現できるものではない。「ただただ空しい」とまとめたのはお徳(白石加代子)さん。終始真面目に振る舞った知盛がファンタスティポ義経と一騎打ちして敗戦した空しさをまとめて下さいました。ハジケリストの戦いに真面目な殺陣は通用しない!