1040. 武装錬金ファイナル

各地で散々書かれてるので読み飽きたとは思いますが、これを語らずに夏休みは越せません。武装錬金ファイナルの感想です。


劇場版・武装錬金
新しいキャラも新しい伏線も必要ない。読者の読みたいものだけ描き、作者の描きたいものだけを伝え、無駄なく伏線回収に徹し、ただ結末だけを目指して作品が収束してゆく。何しろ全面エネルギッシュに読者を攻め立てるので、「終わってしまうのが寂しい…」なんてブルーな気持ちになる暇すら与えてもらえない。

65ページのボリュームを感じさせない絶妙なテンポの良さ。その裏には、ワンシーンで二重三重の意味を持たせた、無駄のないネーム力が光ります。和月先生に締め切りの猶予を与えると、ここまで完成度の高い原稿に化けるとは、恐れ入った!

個人的にはファイナルを「劇場版・武装錬金と評したい。アニメ映画ってのはたいてい短時間の放映を目一杯に全力疾走する、あの感じ。和月先生が今持てる限り最大出力で描いた『全力のプロの力』をまざまざと見せつけられた気分です。


4話分収録
筆の遅い和月先生は武装錬金を17Pないし15Pの連載ペースで描いていたので、ファイナルは通常連載の4話分に相当。内容をよくよく観測すると、大きな流れを幾つかのブロックに分けられる。おそらく和月先生、プロット段階で四つにブロック分けしてから、個々のブロックを煮詰めていったんじゃないかな?

  • 夏休み編
    • 巻頭カラー〜ブラボーの見送り 15ページ分
  • 戦団の攻防
    • カズキの選択肢〜秋水再登場〜戦団の逆転負け 17ページ分
  • カズキ達の到着
    • カズキ到着〜ヴィクターの過去〜一心同体攻撃 17ページ分
  • 第四の選択肢
    • ヴィクターの肌が赤銅色化〜別れ 16ページ分

物語が淡々と進行するように感じたのも、ブロックとブロックの繋がりが希薄に感じたからで、元を正せばこのブロック分けが災いしたの所為かも?


キャラの重要度
一番最後にセリフを放つキャラほど、カズキに対する思いが強い人物であると推測できる。この論で行くと、対カズキの重要キャラは以下のランキングとなる。

  1. 斗貴子さん「カズキィィー…」
  2. パピヨン「俺の名前を呼ぶ者は 誰もいなくなった……!!」
  3. 剛太「よくも先輩を泣かせやがって…!!」
  4. ヴィクター「この少年は──」
  5. まひろ「お兄ちゃん」

パピヨンは、まさか斗貴子さんのセリフに被るほどの僅差! 四位のヴィクターは物語展開から仕方ないとして、五位にまひろが健闘したのはさすが兄妹!


ファイナル10連発感想
以下、ひたすら小ネタに食いついた10連発感想です。

1. 千歳さんマックスパワー!
 貧乳、ミニスカ、お姉さん。きたよSnowSwallow推奨型の究極コンボ。まさに神のカード三枚合体のレベル……ッ! まさにドラゴンボール幽々白書スラムダンクのジャンプ黄金時代……ッッ! つーかここだけジャンプ黄金時代でもよくね?
 控えめな性格(つかセリフないし!)と控えめな乳房がたまんないよ。ブラボーにそっと寄り添い、控えめで優しい理想のお姉さん像を貫いて頂けました。千歳さんファンを明言してきた中でも、今回の千歳さんは過去最高の至極度を記録。和月先生ありがとう!
2. 絶対に素顔を見せない同盟・毒島
 毒島の乙女らしさが目立たなかったのは、このシリアス路線急展開では致し方ないか。ジャンプ乙女ニスト感想の座を狙う身としては、今回毒島で「乙女感想できるかも!」と期待を寄せていただけに、ちょっと残念。しかしながら、今回も禁を破らず、素顔を明かさなかったのは感激。「絶対にパンチラしない」路線同様、彼女は最後まで素顔の秘密を貫いて欲しい。
3. 秋水再登場
 「然るべき時がくれば」と明言されたまま、WJ本誌では音沙汰無かった秋水が、ファンサービスの如く再登場。やはり彼の登場無くして『ファイナル』と銘打てませんな。さっくり伏線を回収してくれましたよ。こうなると、秋水と桜花のドラマチックな再会シーンにも期待を寄せてしまう。ピリオドで実現なるか?
 それにしても、「死骸で組み上げた擬態!」とリアクションする秋水は20歳くらい歳食ってるよ。顎が長いからお父さんぽく見えるのかな?
4. 強がりまひろ
 まひろが強かに振る舞うほど涙を誘います。和月先生はいじらしい言葉遊びがお上手ですよね。「お兄ちゃんは”みんなの味方”だもんね」に込められた思い。たまには独り占めして兄に甘えたいんだろうなぁ。そんな想像を掻き立てる偽りの笑みに、ついつい涙腺が緩みます。「長いお別れ」を「任務」と言い代えて、己の悲しみよりも友達を気遣ったりと、この子の強がりは何度も感動を生みます。ええ子やわ…。
 まひろ関連で個人的に心残りが一点。カズキと斗貴子さんのキス未遂シーンは、是非ともまひろ名言「ストロベリってた?」を含めて欲しかったです!
5. 最強の存在感・パピヨン
 最強の敵をヴィクターとしながらも、「最強のライバル」の肩書きはもはや不動。おかげでどのキャラより異質な存在感を放ってます。それはコスチューム的な理由じゃなく、敵対同士の友情・信頼が熱く深く描かれているから。それだけにラストのセリフ「俺の名前を呼ぶ者は 誰もいなくなった……!!」は心にずっしり重くのし掛かる。
 ピリオドではカズキvsパピヨンの最終激突は確実。どのような決着に収まるか、それとも「戦いが始まって物語が終わる」打ち切りジャンプ的な展開か。
6. 戦友・剛太
 「恋敵ではなく戦友として頼まれてやる」で涙腺緩んだよ。剛太がカズキに向かってここまで『戦友』を明言するとは! それでも照れ隠しから”恋敵ではなく”という前置詞が付く。なにこのツンデレ戦友。ラストでは斗貴子さんを悲しませたことを本気で怒る。その姿は、暗に二人の間に培われていた戦友の友情を物語っていて熱いなあ。
7. 海洋生物をエネルギードレイン
 ヴィクターが世界を観測し回っていた伏線は、コレに繋がるのか。地球の生命規模を下調べして地球ごとエネルギードレイン、って仕掛けは連載時から想定してたネタなんだろう。赤マルで生きてよかったですねー。
8. 大戦斧の武装錬金
 一方こちらは、結局どんな特殊能力を持っているのか不明のまま? ピリオドでネタバレがあるのでしょうか。カズキを地球に帰す逆転の奇策が、この「大戦斧の武装錬金」に眠っているかも。
 しかしそもそも白い核金をハメられて月に来ちゃったら、二人とも死ぬしかないんだよね。それなら、カズキに感心したヴィクターが、白い核金をカズキに託して地球に帰すような展開が考えられそう。ファイナルのラストで、ヴィクターはカズキに関心を寄せていたし。
9. 護る戦い
 地球を背にして、カズキが「護る戦い」の主義を見せつけ、正義を貫く。うわわぁ、なんて少年漫画チック*1なことをやってのけるんだ!
 必見のシーンは「一番… 守りたい人がいる」と語ったカズキが、ヴィクター化を解除して人間状態に戻っている一コマ。「怒り」の感情でヴィクター化が促進されるのなら、「愛情」の感情で人間化が促進されるというピリオドへの布石か?
10. ヴィクトリアの涙
 アレクサンドリアさんの面影が斗貴子さんそっくりで驚き。これってもしや、斗貴子さんがアレクさんと重なる立場に置かれる可能性を示唆してる? 「私は独りでも生きていけるって…」と語るヴィクトリアが悲しすぎる。つまりヴィクターパパが生存しないと、真のハッピーエンドにはならないのか!?


ピリオドに向けて
ヴィクター化したカズキや、ホムンクルスパピヨンは老化しない。でも他の皆は年老いちゃう。カズキが明言した「長い別れ」とは果たして人間が生き長らえる規模なのか。ヴィクターとカズキ、どちらか一方だけの帰還となるのか? 両者が人間に回帰する逆転のハッピーエンドシナリオは存在するのか? カズキとパピヨンの最終激突は描かれるのか、斗貴子さんとの再会のキスはどれほど甘々か、毒島の素顔は明かされるのか、そして千歳さんのジャンプ黄金時代の行方は?


和月先生なら完全ハッピーエンドでオチをつける可能性が高いだろうなと、妙な安心感も抱いてます。*2

*1:リアル少年にはいまいちウケない漫画の意。

*2:千歳さん含む。