942. 先行感想 - DEATH NOTE page69 「飛翔」

今週号の「DEATH NOTE」について、大きくネタバレを含んだ感想記事です。未読の方は閲覧を控えて下さい。

サスペンスのルール
デスノートはサスペンス漫画。サスペンスには

  1. 良い意味で読者を裏切る
  2. 驚きの展開に説得力をもたらす
  3. 瞬く間に優勢・劣勢がひっくり返る

が根底に不可欠とされます。「1」があるから読者は物語にハラハラするし、「2」があるから読者は作中ヒント(伏線)を探って先を予想して楽しむし、「3」があるから物語の結末まで安心できない。サスペンスのルーツを網羅するデスノートは、これらを巧みに生かします。デスノートはこれまでも「1〜3」を含む章節がいくつも見られ、第一部はその章節の積み重ねでした。

「3」は物語の進行につれ、優劣の逆転規模が雪玉が転がるが如く肥大化する。情勢の逆転・シーソーゲームを繰り返しては優劣の度合いがインフレし、やがて先の展開に無理が生じる。インフレによる物語の破綻を回避したのが「ヨツバ編」であり「Lの死」であった。つまりは、読者の注意を「月とLのシーソーゲーム」から別の対象物に惹き付けるんですよね。これによりシーソーは静止して、物語は新たな展開を描けます。

第二部に入り、「第一部のシーソー」はゼロにリセットされると思ってました。しかしそんな想像は早々に破られ、ニアもメロも第一部の情報を粗方知った状況でスタートとなる。四年間敵無しだった月は、冒頭からMNに出し抜かれ、優勢から劣勢に落ちる。次の展開で、ノートの規則を知る月は、海砂の眼球を利用して、劣勢から優勢に上りつめる。だが今週、既にメロとシドウが結束していたことで、月の立場は優勢から以前より立場の悪い劣勢へ落ちる。これぞデスノート流シーソーサスペンス。

さて、今回のシーソーゲームで巧みだったのは、読者の予測の一足先を描いたこと。つまり、シドウの存在・知能の低さ・行動原理の描写を作中ヒントとして読者に見せびらかすことで、「こんな死神だとメロにいいようにこき使われるよ」と思わせた。シドウはいずれメロと結束すると、読者の多くは予想したのでしょう。これは一見すると「1.読者を良い意味で裏切る展開」に反する描写です。

今回の一連の章節を、サスペンスの骨格に分解するとこうなります。

  • 「驚きの展開」=メロが月に強烈なカウンターを食わせた
  • 「説得力」=シドウはいずれメロに利用される、と読者の誰しもに予期させた
  • 「読者を裏切る」=もはやシドウとメロの結束は当然のものとして物語を進行した

上は今回の章節例でしたが、第一部のデスノートでも割と今回のような手法がとられています。で、こうした分解から分かるデスノートのサスペンス作りの傾向は、

  • 計画やら戦略やらを実行前から細かく語ってる勢力は逆転される(弱い奴ほどよく吠える法則)
  • 暫く描写のない勢力は怪しい(後出しジャンケンの法則)
  • 先を予想しやすい伏線は、それを利用した「驚き」に転換する罠(誘い受け伏線の法則)

が見られます。でもたまーに上説が通じない場面もあるからあしからず。「Lの死」の時のように、月が細々とした計画を語っていたからLが何らかの逆転策を持っていると思ってたらホントに計画通り死んじゃってうぉぉぉいい!!(ピヨ彦の顔で)とツッコミたくなるんですよ。

今後のデスノート解読にお役立て下さい。もちろん、説が分かっても物語は予想できないんですけどね! 獄寺が泳ぎ方を理論的に教えても全く上達しないツナのように、こんなのは単なる気休めなんスよ…。


今週の月

  1. スナイダー近辺の情報捜索を完了
  2. メロとSPKの観ている衛星カメラを覗く
  3. スナイダーの死を操る
  4. 『Amone Misya』宛ファンレターに偽装させて居場所を連絡させる
    • 「やはりノートと眼球(ミサ)を持っている僕は最強だ!!!」
    • 「愛してるよミサ」(無糖ブラックな表情で)
  5. アメリカ特殊部隊を地下アジトに突入させる

「1」は先週の言及通り。「2」はメロとニアの思惑が気になるところ。特にニアの理由はニヤニヤもの。口では偽Lを小物扱いしつつ実は牽制してたとか。理由の言及が楽しみです。
「4」が月には痛恨の極みかも。スナイダーが手紙を出す時点で、メロはシドウからノートの規則を知らされてる可能性が高い。その上で、スナイダーの出した手紙内容がメロ達に伝わった可能性もあるんですよね。『Amone Misya』(弥海砂の海外芸名)と住処がバレたって事は、「海砂の存在」「そこに住む捜査本部の存在」「夜神父の息子&海砂の恋人である月の存在」もモロバレ。めちゃめちゃ怪しまれるよ月。スカッと殺される可能性が! こりゃもう、スナイダーの手紙はメロにばれてないと祈るしか…。


今週のニア
一回休み。休んだって事は、優勢フラグが立ったと見ていいかも。SPKメンバーを殺され立場的にも「劣勢」の身分ですから、シーソーが起こっても何ら不思議はないです。


今週のメロ

  1. (メロとシドウが結束)
    • 月らの捜査を監視していたシドウは、メロの存在と居場所を知って接触
    • メロと「約束」し、彼に協力することになる
    • メロ達にノートのルールを教える
    • スナイダーに「死神の目」の契約を施す
  2. グレン=ハングリー、ボスのロッド=ロスをアジトへ集める
  3. 特殊部隊を撃退

「1」の詳細は次週を待て。
「2」は、キラ/偽L/SPKのいずれかを誘い込む罠だったのでしょう。特殊部隊の装備がもっと精巧に出来てたらどうするつもりだったんだろ。頭部と被服が一体型のスーツだったりしたら、シドウもお手上げだよ。なんちゅー冒険してんだろ、メロ…。
「3」で月はすっかり足元を掬われました。ああ、月の株価はますます大暴落ですよ…。


小ネタ

  • 【第3位】スナイダーがさりげなく死神の目
     多くは語らず描写のみで見せる。クールな説明です。
  • 【第2位】実は恋愛経験の豊富さを臭わせる松田と、可哀想な伊出さん!
     伊出さんが可哀想なのは恋愛経験じゃなく、松田にバカにされ言い返せないからだ。
  • 【第1位】「眼球(ミサ)」=月の中じゃもはや人間扱いされてない海砂
     海砂もいいかげん気付こうよ!

いいえ、海砂も本当はとうに気付いている。けれど事実を受け入れてしまうのが怖い。何より愛する月の役に立ちたい。だから事実に目を反らし、頑なに健気に月に尽くす。いつか本当に愛される日を夢見て…

という妄想でどうで一つ。そろそろ寿命切れるし。海砂が逝く寸前、こうした胸中を月に独白するのですよ。ああ、涙・涙の感動シーン。心を打たれた月は海砂に「今は本当に愛している! 愛している!」と叫ぶ。で、海砂が死んだ直後、『ニタリ』とブラックフェイスで満面の笑み。きたこれ。月の腹黒さったらないよ。海砂救われなさすぎ!


おまけ
今週のお題は「視姦プレイで」。っていうかこのコラ、過去最悪の下ネタです…。
過去最悪の下ネタ
なんていうか、ね、ほら、左のコマの人、腕の位置が絶妙でさあ…。上官のセリフも元ネタと発声的には何ら変化してないのがツボ。あーあ、上官命令プレイでイっちゃったよ…。

意味の分からない青い果実な君は、お父さんお母さんに事細かく尋ねてみるといいよっ!(ってダメだよ!)