567. 第47回 - 再会(キャラ別感想)

新選組が終わろうとしている。もしくは、もう終わった後なのだろうか。今週の新選組!はエピローグなのだろうか。新選組の暮れは暗い。

幕府に尽くそうとあがくが、その幕府側からも疎ましがられる。故郷の人々から祝われるもののあれは一部の身内だけで、実際には多摩の人々の本音は新選組を邪気にしている。剣客集団の新選組は、大砲の使い方を知らずろくに戦えもしない。共闘を誓った菜葉隊にも見捨てられる。

今週だけでも、新選組の悲惨な状況がこれだけ挙がる。散々たるものだ。通算47回、ほぼ一年間ドラマを見てきて、新選組のファンとして娯楽の中ではあるけれど応援してきて、その組織が今、過酷な状況に瀕している。だからこそ見ていて辛くなるし、苦しくなる。

そうした負の感情を湧き起こらせるのが、今話のみどころであったとも思います。ドラマの一ファンとして、ぜひ最後まで見届けてあげなければなりません。

近藤勇香取慎吾
 故郷に戻り再会としばし休息の日々。幕府の捨て駒に扱いを理解しながらも戦陣に赴く。それを直前としながら、故郷の人達が催す宴には、残念だけど心から笑っていたように思えなかった。終盤、近藤さんの中で何かが壊れてしまった。先週までの近藤さんは、勢い余ってもこんなことを言う人じゃなかった。近藤さんの長所が壊れ、それと共に新選組が壊れ始めようとしている。戦争の連敗と隊士の心離れ。誠の旗がアップで映りながらのフェードアウトで、見てる側の不安を募らせてばかりの幕引き。暗い…。
勝海舟との駆け引き
 まずは近藤さんの先制。「これは勝てる戦でございます」と戦略を勝先生に語る。一方の勝先生、先週カマキリ将軍の前で語った通り、彼自身も死力を尽くせば幕府が勝つのは分かってる。しかし勝先生は江戸を血で染めたくない。無血での徳川家存続を狙っている。新選組と近藤さんを「徳川の守り神みてぇなもんだな」と褒め殺し、近藤の口から近藤を心強いとしながらも、最後は「陸軍総裁がそう言ってるんだ、従ってもらおうじゃねえか」とバッサリ。勝先生の意図を汲み、近藤さんの覚悟が決まる。
● 「俺達は200名足らずで、五千と戦う」
 仮屯所に帰り、甲府城死守の次第を土方に報告。勝てば一国一城の主。もちろん本人はそのことに浮かれていない。「俺の本音を聞いてくれるか」と切り出す近藤さん。これが負け戦で、新選組捨て駒にされることが分かっていて、幕府のために命を投げ打つ決意の本心を聞いて欲しかったのだろう。
● 「同じ光景を、前にも見たような気がする」
 総司が決意の目をして「私も連れて行って下さい」と、皆の前に現れる。対する近藤さんのセリフにはほろっときた。同じ光景とは、浪士組が京に上る時の話。あのときは試衛館仲間が勢揃いしてたんだとねえ…。
● 「お前はてっきり朝帰りだと思っていた」
 これ関連の感想は土方の項にて。
● 「俺たちは信じられないほど遠くに来た」
 過去と現在の自分を比較した正直な考え。それを実感したから、今話終盤の近藤さんは今までと違う態度を示したのでしょうか。遠くへ来たから、自分は変わらなければいけない、ってことなのかなぁ…。正直、この思考ルーチンは納得いかない。
● 変わってしまった近藤勇
 オレのファン意識が強いから否定的な意見になるのだけど、「新選組!近藤勇」は第1話から第49話まで一貫して変わらない性格のままで居て欲しかった。少なくとも先週までの近藤さんは、誠意の人だったはずだ。どこから崩れてしまったのだろう。この戦を戦い抜いて絶対に勝たなければいけないという気持ちが、近藤さんを再び鬼に変えてしまったのか。残念でなりません。
● 「勝手に隊を離れれば切腹だ!」
 甲府攻めにおける近藤さんの心境の変化には、正直付いていけないものがあった。会津に向かう時は堂々と加勢として行きたい、と己の理想とエゴのために隊士の命を蔑ろにしたり、今までの近藤さんでは考えられない。「これは命令だ!」と怒鳴る。「勝手に隊を離れれば切腹だ!」と追い打ちする。策よりも誠意の人、他者の思いを誠実に汲む包容力ある人、その近藤さんは既にこの戦の中に存在しなかった。
● 友との離別
 永倉さんが立ち去り、次いで佐之助が去る。「去りたい者があれば去ってもいいぞ」の言葉で更にぱらぱらと去っていく。崩れゆく新選組。このドラマで新選組が一から盛り立てられる過程を見てきただけに、こんな形で崩壊していくのを目にするのは胸が苦しい。
● 「壬生浪士組結成時代の仲間は、俺とトシと総司だけになった」
 寂しさに嘆く。正直、身から出た錆なので100%の同情はできない。しかし…8人居た同志が今では3人。そしてこの場にはただ1人だけ。寂しい、寂しすぎる。
土方歳三山本耕史
 先週船上でのやりとりを受けて、今週から洋服姿。髪もスッキリして、なんだか違和感が…。現代的になってこれはこれで格好いいんだけどね。小便の仕方を嬉しそうにレクチャーする土方がすげえ子供っぽかった!
● 「俺はかっちゃんについてくだけだ」
 近藤さんから甲府城での死守戦を一通り聞かされ、「俺の本音を聞いてくれるか」と切り出される。対する土方「いや、聞かん。かっちゃんは思うようにすればいい」と切り返す。これは一見、土方の原動力は何があっても近藤さん第一だと考えている彼なりの侍魂「主君に尽くす潔さ」を示すようにもみえる。しかし、それって実は表面上の名目じゃなかろうか。「俺はかっちゃんについてくだけだ」と近藤さんの本音を突っぱねながらも、土方の本心は、近藤さんから「捨て駒と分かりながら死闘を尽くし、幕府のために死ぬ」というニュアンスのセリフを聞くことが怖かったんじゃないだろうか。
● お琴との再会
 日曜日の感想参考。
● 「俺達は結局、世の中を引っ掻き回しただけじゃないのか?」
 という土方の問いかけに、「自分を信じた、悔いはない」と返す近藤さん。日曜日の感想でも触れましたが、客観質問に主観解答はぜんぜん納得いかないんですけどねえ…。次いで、昼間言えなかった近藤さんの本音を、ここで再び語る。「今度の戦は、どう見ても勝てる見込みはない」「江戸で戦を起こさないためだ」という近藤さんの話を、土方も同様に理解していた。「しかしな、かっちゃん!」「最後まで俺の話を聞け!」で、この戦で勝利を収めてみせるという心意気まで同じ。
● 勝てば英雄
 結局のところ、この戦いを勝てば英雄になれるわけです。英雄になれば、もう誰も新選組が「世の中を引っ掻き回しただけ」なんて言わない。幕府のために、そして自分たちが作り上げた「新選組」の名誉のためにも勝たなければならないという気持ちが、あふれ出ていたように思えます。
沖田総司藤原竜也
 姉と語っているときも、宴会で皆と食事を取る時も、土方と木刀を交える時も、顔色と肌の色白さが際立っていて何とも言い難い…。
● 沖田姉弟の再会
 日曜日の感想参考。
● 命の尊さ
 子供だった総司が、人を斬れば大人になれると思い、そして芹沢さんを斬り。病を知ってからは誰よりも人斬りに走り、次第に黒い感情が際立ち、そして病人として長く過ごす日々で「人の命の尊さを知った」とまで言わしめた。一年間のドラマを通して、沖田総司の成長ドラマをここまできっちりと書き上げるとは。正直期待以上のものでした。
● 「私も連れて行って下さい」
 同じ光景を見たことがあると近藤さんは言った。けれど確実に違う事が一つ。あの頃の総司はただ仲間はずれにされたくない一心で付いてきた純粋な子供だったけど、今の総司は「命の尊さ」を知る大人の武士に成長していた。感動ひとしおです。
● 「稽古をつけてあげます」
 近藤さんの戦に対する意気込みに感情が高揚し、久々に土方に稽古を付けたいと申し出る。土方は乗り気ではないが、総司は本気で負ける気は毛頭なさそう。そんな色白になってまで剣を振るわなくても…と同情心を掻き立てられてしまう。土方もそれは一緒のようで、最後は総司の方が咳き込んでダウン。この二ヶ月後には病で命を落としますし、現状でも相当悪くなってるんでしょう。
永倉新八山口智充
 宴会にも不満を漏らしていたのは、終盤の決別シーンの流れを与える態度なんでしょうけど。いくら生真面目すぎる永倉さんとはいえ、今週の態度は正直唐突すぎている気もしました。唐突すぎるのは永倉さんだけでなく、近藤さんもそうなんだけど…。急にあんなに人が変わらなくてもねえ(^^;
 「あなたの部下ではない」のセリフは、『第30回 永倉新八、反乱』から一貫している永倉さんの基本スタンス。永倉さんの信頼が崩れていくなら「近藤さんが永倉さんを部下として扱う」シチュエーションだろうなと予想は出来ていましたが、こうもリアルに映像化されると胸が苦しくて苦しくて。次週以降も永倉&佐之助は登場するので、どうか救いをもたらしてほしいなと思います。期待しなくてもそういうシーンはふんだんに含まれそうな気配がするので、オレは安心して号泣きの準備をしておけばいいですよね!
原田左之助山本太郎
 永倉さんとの喧嘩別れのあと、佐之助の語りで少しは救われました。「ま、どっちが楽しいかってことだよなあ…」と締めて組を抜けることを暗に告げる。しかし「あんたに会えてよかったと思っている」「あんたには感謝している」など、とても佐之助らしいセリフが満載で。きっと佐之助のそのセリフは、自身の気持ちだけじゃなく永倉さんの内心も含めた言い方だったんじゃないかなと思うんですよ。この二人はすっごく仲が良いし、永倉の気持ちを佐之助は察していると思うので。…しかし、彼の根っからの明るさが新選組から失われるのも、非常にいたいものがあります。
斉藤一オダギリジョー
 日曜日の感想参考。最後の最後まで出番がなかったけど、一番最後にどんでん返しですよ。「この旗が俺を拾ってくれた! 俺は一生かけてこの旗を守る、たとえひとりになっても! 局長ーッ! 俺がいる限り、新選組は終わらない!!」忠犬すぎます。熱すぎます。今週一番格好良さゲージが上がりました。
島田魁(照英)
 黒髪関のうちわで謝罪。うちわに手跡を付けながら、土方と魁さんが「こればれたらマズイですよね?」「ばれなきゃ良いんだよ」といった会話をしていたことを思い出して懐かしかったです。あんなのも伏線だったのか。殿がうちわを宝物にしていたのにはほろっときたけど。終盤、一くんの叫びを盛り立てるように「俺も同じ思いです!」と雄叫びを上げる演出はしびれました!
滝本捨助中村獅童
 紆余曲折ありつつも、今週はなかなか有能に動いていたような。…と思ったら、本番では肝心の菜葉隊が援軍に来なかったり、まさか捨助が菜葉隊の人選ミスったとかじゃないよね!?
 ところで菜葉隊について、なぜ唐突にビビる大木が登場なのかって裏話。菜葉隊→葉っぱ隊を連想して、大河ドラマに出たがっていたビビるさんにお声が掛かったんだとか。そんな馬鹿な。あ、菜葉隊は実在します。隊士1600名もネタや虚勢じゃないみたい。地味に多いよなあ…。
勝海舟野田秀樹
 本編感想で軽く触れたので、再会場面の感想は割愛。先週に引き続きクセのある役どころ。なるほど勝海舟も十分腹黒でこんなに食えない奴なのか。こういう人だからこそ、後に(あくまでもドラマ中の話で)あの腹黒西郷さんと会談して、無血開城と新政府軍の敵意を和らげることに成功できるんだろうなあ。腹の黒さが似てるから、この二人は割と意気投合できてしまいそうですね。
山岡鉄舟羽場裕一
 ちゃっかり生きてたのかよこの人! 清河さんや佐々木さんの名を出して死者を悲しむ辺り、この人は性格的に「いいひと」として扱われてるなぁ。そういえば浪士組結成以前も、最終的には清河に騙された側の「いいひと」として扱われてたっけ。「ろ、ろまんち?」が微笑ましい。わずかな登場だったのに、あの戸惑ったセリフはかなり印象の残った。『鬼鉄』山岡さんはすごく堅物なイメージだったんですが、ドラマでは「根っからの生真面目クン」といったキャラですね。
松平容保筒井道隆
 おそらく今週が近藤さんとの今生の別れ。松平様と近藤さんの関係は、侍の世の中では理想の上司と部下をしてたと思います。殿と家臣の関係を、神聖で汚れのないものとして描いていたように感じます。新選組!は従来の時代劇を感じさせないドラマなのに、二人の関係だけはいやに時代劇掛かっていたというか。
 壬生大津網のうちわを「余の宝物じゃ」と取り出したのは、かなりの感動。お忍びで京の街に下りて市民の文化に触れたのは、後にも先にもあそこしかなかったわけで。しかもこのタイミングで思い出のうちわ投入されたら、ほろっと来ますって! 昔の「明るい未来」を抱いていた近藤さんや試衛館の仲間達が、とても懐かしくなりました。
そのほか、仕込みの小ネタ
 過去エピソードを匂わせる小ネタ満載。まんじゅう。みつと伝通院会話。うちわ。総司の待ち伏せ。スピーチできない鹿之助。などなど。たっぷり詰め込んできました。

残り二回。新選組が終わった後の年の暮れは、寂しさを痛感しそうだ。

最終回前後、ファンとしてこれだけは見ておくべしという番組をチェック中です。

TV情報誌立ち読みしないと。ネタバレ情報を読まないようにして…。