1723. 先行感想 - バクマン。 2ページ『馬鹿と利口』

今週号の「バクマン。」について、大きくネタバレを含んだ感想記事です。2008年39号を未読の方は、閲覧を控えて下さい。


今週の要点

  • 「最高=サイコー」に対して「秋人=シュージン」という愛称。
  • マンガ家なんて連載してなきゃただのニート
  • 川口たろう先生の遍歴は後述してまとめました。
  • 亜豆はフツーに通学している。
  • 亜豆の第一話爆弾発言は「もう(学校以外では)会わない」って意味でしたね。
  • 最高と亜豆はメアド交換も済ませていない。
  • 秋人は100%夢が叶うとは思っていない。学歴は保険。
  • マンガ家は頭が良くないとなれない。少なくとも馬鹿は無理。
  • 計算せずにに天然で『賢い女の子』を演じる亜豆も「頭がいい」との評価。
  • 最高は秋人の思考に共鳴し「結局シュージンと組むかも」と漏らす。
  • 秋人は「ネーム」の意味も知らない。漫画製作にド素人と判明。
  • 最高はマンガ家になることを家族に打ち明け、認められる。
  • 最高は祖父から「川口たろうの仕事場の鍵」をもらう。
  • 祖父「マンガ家になるために必要な物が詰まってるんじゃねーのか?」
  • 夜10時を回って「仕事場」へ向かう最高と秋人。
  • 電車を使う様子だけど、帰りは終電に間に合うのか?


ポイント考察 - 川口たろう先生の重要性

第一話を読んだとき、作家「川口たろう」は所詮象徴的存在に過ぎないと読んでいました。つまり、川口は最高にマンガ家の夢をたじろかせ、トラウマを植え付ける役割だと思ったのです。主人公の最高が『マンガ家を目指さない』理由付けを補強するために用意した一発キャラだと、そんな風に考えていました。

ところが、第二話でその推測は挫かれました。それどころか、「祖父の存在」「仕事場」「自殺疑惑」など彼に関連するファクターは拡大しています。川口たろうの存在は、最高と秋人が結託する理由付けとしても活用されるのか。はたまた、本作の核心にまで食い込む重要人物になるのか。第三話以降も川口たろうを意識せずには読めなくなりました。


ポイント考察 - 川口たろう先生のまとめ年表

川口たろうの情報は断片的な紹介に留まっています。時系列に整理しないとずいぶん混乱させられますよね? そこで川口たろうの遍歴をまとめました。一部、注釈しておきたいこともあります。

  • 26年前+X … 川口15歳・中学三年。中学校の卒業式に好きな女の子から手紙をもらう
  • 22年前+X … 川口19歳・大学一年。四流大学に入学する
  • 18年前+X …川口22歳・大学四年。月刊誌で連載を始める
  • 10年前+X … 川口30歳。『超ヒーロー伝説』がアニメ化する
  • 10年前 … 川口30歳+。この後7年間で2本の連載が打ち切られる
  • 7年前 … 川口33歳+、最高小2。最高にお年玉を渡しに訪問する(第1話冒頭)
  • 5年前 … 川口35歳+、最高小4。最高にマンガ家になった経緯を教える(第1話回想)
  • 3年前 … 川口37歳+、最高小6。過労死(自殺疑惑あり)

ここで、「+X」の年数は不明確です。作中では…

アニメ化になった作品を出した後はまったく売れず
7年間で2本描いたけどすぐ打ち切り(第一話)

…との言及に留まります。30歳でアニメ化された最中も連載は継続しているはずで、アニメ化してから何年連載していたか=「+X年」の期間が不明です。ここの数字が割り出せると、いろいろと予想の幅も膨らむのですが。

ところで「7年」という数字に着目すると、『とっても!ラッキーマン(1997年)』から『DEATH NOTE(2003年)』の間隔もちょうど7年です。ますますガモウ先生の残り香を感じてしまいます。


ポイント考察 - ライトノベルマンガ?

今話は目まぐるしく場面転換が入る割に、話はほとんど進展していないです。大増31ページの半分を最高と秋人の会話に費やす暴挙は、大丈夫かなと心配になるほどです。

特に「試験→保健室→屋上」の場面転換に関しては冗長に思えるのですが、これは読者を飽きさせないための工夫なんでしょうね。12ページもの長丁場を最高と秋人の対話劇だけで保たせるにあたり、頻繁に背景を変えたり回想を挟んだりして、描画面で変化を付ける狙いがあったのでしょう。

実のところ、第二話を読み終えた印象はバクマン。」ってライトノベルでよかったんじゃ? の一点に尽きます。めっちゃ豪華な挿絵が入ってるラノベですよこの作品。先週号の巻末コメントで大場先生が『結構地味な話になると思いますが』と溢した特徴が、早くも露呈した形ですね。

ラノベ風だからなんだって話ですが、端的に言ってジャンプでは地味なマンガは打ち切られます。他に掲載されている派手なマンガの方が、読者の目を簡単に惹きつけるからです。一話ごとのアンケート勝負になると、今話のようなの地味さは結構な危険球です。


ポイント考察 - 血筋に執着する秋人
秋人が度々口にする「血筋」の話に関して。

(第一話)「おまえマンガ家の血ひいてんじゃん」
(第一話)「やっぱ血って関係ねーのかなー」
(第二話)「血筋って絶対あるよ」

まだたった二話分なので、韻を踏んで口走ってるだけかもしれませんが、あるいは秋人って血筋コンプレックスなんでしょうか。秋人から「頭がいい」と認めた最高と亜豆に対しては、両者の血筋も含めて褒めてるんですよ。まず血筋ありきで仮説を広げる秋人の思考パターンは、ちょっと意味深に感じました。

また、今話まで秋人の家庭の事情や境遇が一切語られていないのも、作者サイドの作為を感じます。まあ、単純に秋人家を紹介する尺やタイミングがないだけとも言えてしまうのですが。そこは週刊感想屋としては予想を膨らませておきたいですよね。

秋人がやたらと金に執着してたり、夢を追っていたりするのは、家庭を反面教師にしているのかなあ…とか。


ポイント考察 - 父と祖父
最高と父のコミュニケーション不足は、今後に尾を引く伏線に見えますね。しかしながら…

父「男には男の夢がある 女にはわからない」

祖父「最高は変わったな あいつはもしかしたら本当に駄目かと心配したが あれでいい」

…といった、最高の父方家系には、ある種の主義・信念が垣間見えます。両者のセリフ共に「夢はすべからく挑戦すべし」というメッセージ性が見えますし、逆に「夢を諦める男は駄目だ」という極端で過激な意見にも読み取れます。

いったい父方家系には、過去に何があったのでしょうか。単純に、父も祖父も「(毎年賞を獲得するほどの)最高の画力の高さを認めていた」から、一般的な人生を歩んで欲しくなかった、自分に出来なかった夢を重ねたということなんでしょうか。それとも、秋人が度々言っているように血筋なんでしょうか。


中学生の天才劇
大場先生の人物造形って、天才キャラこそ光るものがあるイメージなんですよね。月、L、ニア、メロ、ラル…。彼らが天才故に、読者は憧れの眼差しを送り、キャラクタを通して作品に惹かれるシステムを構築するのがすごく上手な脚本家なんですよ。

ですが、本作では中学生が天才劇を演じるためか、全体的にすげえ厨臭いです。クラス中で「頭がいい」人を挙げるに身内ばかり持ち上げたり、「勉強はできるけど頭は良くない」と見下したり、ものすごく中二病です。

月のように「高校三年生で全国模試トップ、東大合格確実」といった並外れたステータスを持っているならいざ知らず。所詮は学年トップクラスにすぎない秋人がデカいこと語っても、世の中はそんなに簡単じゃないと反論の余地を残してしまうんですよ。

結果的に、読者によっては「生意気言ってんじゃねーよ」と反感を覚えそうなんです。これが吉と出るか凶と出るか。願わくば、早く中学生を卒業してドドンドンドンとステップアップしてほしいです。圧倒的頂点に君臨しないことには、大場先生の天才劇が威光を放ちません。


ポイント見所

  • 扉絵「一本のペンさえ握れば…手が届く!!」→亜豆のイラスト→ナニのペンを握ってるんですか。
  • 「サイコー」「シュージン」など、ガモウ先生独特のネーミングセンスが色濃く出ています。
  • 「親だけでどんだけ差が生じるか」少年誌で現実を見せすぎ。しかして、これぞ本作最大の長所。
  • 『超ヒーロー伝説』のストラップ、お腹が出過ぎですよ…。
  • 「本物のマンガ家の仕事場」と比べたら「マンガ家になる雑誌」なんてゴミ同然ですね。


今後の予想
「ポイント考察 - 川口たろう先生の重要性」でも述べましたが、川口たろうに纏わる謎解きを深掘りしながら最高がマンガ家への意志を強める、そんなミステリ調の展開を期待したいです。謎解き要素を含めることで、地味な展開から脱却を図れそうですよね。

仮に、川口たろうを「本作の核心にまで食い込む重要人物」とまで拡大解釈します。すると、「亜豆の母=川口たろうの初恋女性」説も現実味を帯びるんですよね。つまり、社長秘書だった川口の初恋女性は、そのまま社長と結婚して亜豆を産んだ(亜豆は社長の娘)という説を通すということです。

川口たろうを作中に深く絡める狙いがあるなら、この設定を活用して亜豆の母から川口の情報を聞き出すイベントなどを想定できます。仮にこれから十数話かけて川口たろうに迫るエピソードを描くなら、亜豆の家族を巻き込んだ謎解き展開は最大の見せ場になり、読者を惹き付けそうです。

一方、本作が業界ドキュメンタリを狙っているなら、「亜豆の母」説はミスリードであってほしいです。ノンフィクション寄りの作品で、そのような作為的かつ運命的かつご都合主義の仕込みを組み込まれても、チープに感じて興醒めします。

さてどうなる次回。せめて次のサブタイトルは紹介していただきたかったです、ワクワクが半減…。