1631. デュアン・サークII - 第05〜08巻

デュアン・サーク最新作(2006/12/25出版刊)を含む、四巻分をまとめ読み。ジャンプ感想中はラノベ禁してたけど、今は余裕もあって久々に購読した。デュアンは、巻を追うごと成長が目覚ましく、読み応えあり。


デュアンの成長
5-6巻でルルフェの保護者役として描いた展開は見事。当初のひよっ子ぷりと比較しながら、成長が大胆に表現されている。これまでの冒険と経緯を『第三者視点から語らせて賞賛する』のは、主人公の成長を見せる定番の手法。特に5巻ではこれを、清々しく多用した。この巻を区切りに彼はすっかり、『守られる側』から『守る側』へと生まれ変わる。


ルルフェ、恋の葛藤
さすが女流作家、「乙女の恋煩い」をごく丁寧に描写されている。冒険譚モノなのに少女恋愛小説を読んでいるような疑似感覚に囚われるほど。このあたりは、フォーチュンのパステルにも通ずる精神がある。読んでいて照れくさいけど新鮮。世間知らずで素直すぎるルルフェに焦点を当てたからこそ、余計に少女恋愛性が際立ったのかも。


アニエスの修行編
修行回想は素直に涙。淡々とした回想文の中、彼女の純粋すぎる感情には胸を打たれる。しかしまさか、この歳になって深沢先生の作品で泣けちゃうとは。オレは中学生の頃から全然成長してないのな…。


大人役オルバの子供らしさ
これまで一貫して『守る側』だったオルバが『守られる側』へ転身。デュアンとは逆の発想で描かれた5-6巻は、彼の一挙動に楽しめた。深沢先生的には『オルバのかわいい部分』表現を狙ったんだろう。ズーニョに「大きな図体をして、まるで捨てられた子犬のような目。あのギャップはずるい」と言わしめた場面からも類推できる。

ただ、オレ個人的には、彼の『成熟した大人の持つ子供性』に惹かれた。どんな大人も子供心は失わないわけで。オルバの人間性に深みが出たと感じた。数えて14冊目にして、今さら彼を再確認するとは。


新ジャンル・ズーニョ
新ジャンルはじまったな。

女性+僧侶+34歳+元令嬢+非萌え系テイスト。なんかもう、突き抜けた混ぜ合わせ。個人的には好みの女性だけども。(おそらく)金目銀目を含めて、これで正規6人パーティ出揃ったか? 男女比3:3とは深沢先生らしくない。だからこそ、ズーニョが女性だったことで『意外性』を生んだのかも。


デュアンとルルフェ
本命をアニエスに匂わせつ、答えを曖昧にしてなお引っ張り中。8巻にして、フォーチュンクエストならぬ朝チュンエスに達してしまった二人。アニエス派の自分には辛いところ。余命三ヶ月の宣告を受けてあのシチュエーションなら、結果的に彼女を貪ったのも仕方ないと納得してしまう。

くれぐれも、いちご100%の真中化だけは避けていただきたい。この恋、引っ張りすぎると作品自体の毒になり兼ねない。幸い、周囲はずいぶんと大人なので、腐った展開は回避できそう。中でもデュアンを支えるオルバの存在はデカイね。

肉体関係を結んだ今、兄妹的な関係で『失恋したけどデュアンを慕う』結論に着地する線は厳しい(四巻終了時点では、そう予想していた)。逆説的に、今後デュアンはアニエスと結ぶ可能性が低まったか? だって”あの”深沢先生が朝チュンだもんなあ。んなもん予想できないって。最近のラノベ、すっすんでるぅー。


デュアンとアニエス
修行編の前にキスがあった割、再会後も縮まらないこの距離間は一体。「もどかしい」を通り越して「とまどい」を感じる。「え、アニエスはそれでいいの!?」みたいな、煮え切らない感じ。

オレ的展開予測では「再会後は目が合うだけでキスのこと思い出し、お互い意識しすぎてドキドキ→ギスギス→キスキス→シギアンギシアン」みたいになる予定だったのに。まさかルルフェと事に至るとは! あまりに報われないよアニエス

間違いなく、ルルフェの恋が前面に出すぎた弊害だろう。ルルフェの存在感が、せっかくのキス伏線を食ってしまった。もちろん後々は、キスへの言及もあるだろうけど、ルルフェの解決なしに、この二人は関係を進展できないわけ。


ルルフェとアニエスの関係
なまじルルフェの恋心を丁寧描写したがため、アニエスの本音が見えないのはフェアじゃない。おそらくは展開の混乱を防ぐ処置か。本作はファンタジ冒険モノだから、恋愛観に割くべき頁数は限られる。展開上の都合、今回のアニエスは本編へ関心を寄せさせて、わざわざ直接対立を避けたように見える。

いやまあ、次作はぜひともキャットファイトに至っていただきたいけど。


オルバの三角関係
元妻エピソードから類推すると、オルバとアズルの間には未だ愛は残ってる。それなのにズーニョへ手を出すもんだから。なんと不倫理で不純な男か! だからこそ、オトナ! みたいな、奇妙な三段論法に収束しちゃう。何の解決も見出さず、課題を積み残して冒険を続けちゃうところもオルバらしい。


8巻のレベルアップ問題
8巻冒頭紹介で突如、全員のLVが上がりすぎなのは、大いに納得いかない。LVが1上がるか上がらないか、というペースが、このシリーズの醍醐味だったのに。特にルルフェは、一度も敵を倒した描写がないのにLV1→7へUP。7-8巻は前後編なのに、これは異常すぎでは。百歩譲って修行の成果でも、冒険無しに経験値が上がるのはなぁ。メディアミックス展開で、サブエピソードでも描かれた?


この作品、前後編の時は「前編だけ読むと続きが気になって地獄」なのだ。記憶も曖昧になるから、まとめ読みが適してる。次に読むのは、2008年の今ごろかな。