1589. 先行感想 - 斬 十二太刀「二刀流」

今週号の「斬」について、大きくネタバレを含んだ感想記事です。未読の方は閲覧を控えて下さい。


先週の斬は、連載開始以来で最大の神クオリティを発揮したと感じました。一生そのノリについていくぜ斬! みたいな強烈なファン意識が芽生えました。ところ今週は、なんか普通に秀作なんですよ。

先週号は『杉田言語メソッド』を追求して極限まで活用した爆笑ギャグ展開だったってのに、今週号は掲載最下位にもかかわらず、極めて味わい深い一戦を披露して、何だってあの斬は! と一コマで説明したくなる、ハイクオリティな仕上がりの一話でした。

今回は二週分の感想をまとめ書きです。


羽のように軽い鋭斬刀
切れ味優先の鋭斬刀 VS 破壊力優先の研無刀。武器対比だけを見れば、かなり燃える設定です。『いくらなんでもそんな無茶な設定…』と今や誰も突っ込まない空気作りは、杉田先生の計算通りでしょうか。単純にラッキーなだけでしょうか。

漠然と考えると、羽のように軽い鋭斬刀は、研無刀の一撃にも耐えず破壊されると思いますが、イベント補正によりウェポンブレイクは発生しません。マンガもゲームもTVドラマも、ご都合主義には勝てませんからね! 鋭斬刀の弱点は「軽い」ただ一点となりました。

さすがは「斬れ味と扱いやすさを追求した、研無刀ぐらい扱いが難しい」という鋭斬刀です。やたら矛盾した設定は伊達じゃないぜ。この鋭斬刀をかなり使いこなしている刺々森は、絶対ただ者じゃない!


研無刀より硬い無包篭
防御力ゼロの鋭斬刀を補うための完全具足「無包篭」。防御のみならず応えて相手の刀を叩くなど、刺々森が実践慣れしていることを窺わせます。対して斬は「鞘」を使って無包篭に対応。「鋭斬刀 VS 研無刀」から「無包篭 VS 研無刀の鞘」にまで視野を広げた一戦は、素直に上手いと唸りました。さすが格ゲー大好き杉田先生。サムスピやってて思いついたのかな。


研無刀と同じ硬度と重量の鞘
この「研無刀の鞘」を活用した描写は一見、当初から構想していた設定にも感じます。『両手持ちの研無刀を片手で振り回し、しかも二刀流をこなす』とする発想は、確かに斬の怪力特性を、これ以上なく発揮しています。しかし、ただでさえ重すぎる研無刀なのに、鞘まで研無刀仕様だと、斬は本格的に何しに学校来てんだ! って話。腰の骨盤なんか歪みまくりですね。

あるいは、今まで斬の動きがノロノロだったのは、鞘の重さの所為だった伏線でも眠ってるとか。「重いのを身に纏って日常的に修行する」って設定は、ジャンプお得意のパフォーマンス。本当にそれを狙ってる可能性だってあります。杉田先生はどこまで計算して漫画描いてるのかサッパリ読めなくなってきた! (多分なんにも考えてない。)


無包篭の刀叩きは伏線
先週、刺々森が無包篭で斬の研無刀をはじくテクニックがありました。今週の斬はそれに習い、鞘で無包篭をはじくカウンターを見せます。これは単に、杉田先生が発想力に乏しいと一言断言することも可能です。言葉遣いだって、同じような文法を使い回すことしかできない、たいへん不器用な方ですから…。

しかしながら、作中世界としては、『斬の実践の吸収力は…かなりすごい!(くわっ)』状態なんですよね。このマグレでホールインワンした軌跡のワンショットが、かなりゾクゾクきたんです。ハッキリ言って、全身を痺れましたよ。


無我の境地
読み切りでは設定上『二重人格』と明言していましたが、連載では斬の底力の一切は、謎のままでした。つまり、今まで『二重人格』を断言しなかったのは、今話の構想まで計算尽くだったのかも! この「計算尽く」なのか「天然」なのかハッキリしないアンバランスさが、斬の楽しみ方をより一層、掻き立てているようにも思います。(多分なんにも考えてない。)

で、謎の力を制御できている斬ですが、言葉遣いがコントロールできないという、苦し紛れな後付け設定まで追加されました。うわあああ! 杉田先生の強引な後付け設定がキュートすぎるうう!! (ぐおおお)


表現の歪み
元来よりバトルのアングル使いが器用な杉田先生は、ここにきて抜群のセンスで「二刀流」の戦舞を描き切りました。刀と鞘を構えて走り込む斬の、造形・配置の美しさには、クラっときました。杉田先生のウマヘタなイラストが、上手いこと漫画演出としての『表現の歪み』にマッチングしてます。

刺々森の胴を鞘で一閃する場面、その一連の流れには、強烈な破壊力を感じてドキドキしました。まあこの後の刺々森の余裕っぷりな表情には萎えますが。しかし、この無茶な姿勢から刺々森が鋭斬刀で反撃したシーンはこれまた素晴らしい。先ほどの荒々しい「破壊力の一撃」に対し、刺々森の攻撃には「無音のスピード感」を感じました。

『双刀殺』直前の跳躍も、このアングルで位置関係を説明すると同時に、『破壊前の溜め』を十分表現できています。ともすればネウロっぽい錯覚を起こしそうです。アングル描写をかなり使いこなしている杉田先生は、絶対ただ者じゃない!


刺々森の三種の神器

  • 斬れ味と扱いやすさを追求した、研無刀ぐらい扱い難い鋭斬刀(どっちなんだ!)
  • 授業中、黒板の文字をノートを書き取る時、絶対に扱いにくすぎる無包篭(何しに学校来てんだ!)
  • ちんこ見えそうな腰穿きパンツ(あと1cmズレてたら無法者だった)

以上、三種の神器の纏い手となった刺々森くん。今週で敢えなく敗退しました。今までの登場人物の中で、最も装備品からのキャラ立ちが激しいキャラに思います。こんなゴージャスなキャラだから、絶対再登場してくれることでしょう。再登場の前に打ち斬られないよう、ただただ祈るしかありません…。


淫乱な月島さん
ところで月島さんは、M字開脚座りやN字開脚座りによる悩殺ポーズだけでは飽きたらず、遂に先週はふとももの裏側を露わにしました。

つまり今までの座り方では、いかに杉田先生が得意の多アングルテクニックを用いようとも、月島さんの裏腿を大胆に描写するには、何らかの障害物が邪魔になりました。そこで杉田先生は考えました。「月島さんの裏腿が描けないなら、月島さんの裏腿を傷モノにすればいいじゃない」と。恐るべしマリー様的発想!

まあどうせ傷は3コマで回復しますから。杉田先生には今後も、心おきなく月島さんの際どいふともも描写を重ねて頂きたいところです。もうそろそろ登場するであろう、黒髪メガネのお姉さん委員長キャラも、よろしくサービスしてくださいませ。

次週、魔の第13話目
最近のジャンプは、たいてい第13話目は最短打ち切りコースです。斬は来週が我慢どころですね。とはいえ、まだまだ事態の収拾は付かなそうなので、とりあえず生き残りを期待してよいのではないでしょうか。掲載順は最下位ですが、まだまだ諦めてません!