1576. 先行感想 - HAND'S No.1「大吾」

今週号の「HAND'S」について、大きくネタバレを含んだ感想記事です。未読の方は閲覧を控えて下さい。


ハンドボールという題材
ピンポンにハンドボール、スケート、アメフトと、近年はマイナースポーツを積極的に取り込む傾向がある。共通して言えるのは、漫画を読めば「イコール入門書」になる点。一つの知識を題材に一話を描き、基本知識を織り交ぜながら物語を展開する。故に作家はネタに困らない。誰も知らない未開拓マイナースポーツならではの武器に思います。

HAND'Sも例に漏れず、第一話で「ハンドボール」を描かなかった。読者の知識量が追いつかないんだ。だから、ハンドボールに重要なキーワード「空中戦」を主張するに留まるの。題材をおいしいとこ取りした非スポーツ漫画としても描けるので、ド派手な展開に仕立てやすい。アイシールド21と同じ手法ですね。

ハンドボールすぎない配慮
『なにやらハンドボールの漫画らしい』という前知識だけ与えられるけど、内容はフツーのドタバタアクション漫画。「万人に読まれるチャンス」を狙っての構成だろうな。板倉先生がどこまでハンドボールを熟知しているか未知数だけど、少なくとも「板倉先生の得意なテリトリー」で戦えたと思うんよ。

生き生きしたキャラ造形、どこか好感の持てる悪役、躍動感あるアクション、迫力ある演出。漫画としての見所は多く、作中世界に引き込まれた局面がケッコーあった。これは板倉先生が、上手いこと『ホーム』で引き込んで戦った顕れだろうね。板倉先生はHAND'Sの第一話で、ハンドボールではなく板倉雄一の漫画をプレゼンテーションした」と言っても過言ないです。


スポーツ漫画とヒロイン
スポーツ漫画に絶対不可欠な存在、それはヒロインにある。あの「テニスの王子様」でさえ、ヒロインらしき存在を投入してる。こと少年漫画においては、『卓球上手=モテ』『ハンドボール上手=モテ』『アメフト上手=モテ』『テニス上手=変態』の刷り込みは効果絶大だ。

スポーツ漫画におけるヒロインの価値とは、それほどまでに強大なんだわ。「OVER TIME」なんてヒロイン人気で金未来杯に優勝しちゃったし。

HAND'Sにおけるヒロインは、ビジュアル・性格・設定の三つで合格点に達していると感じた。ノリがいいからトークで楽しめて、ギャグもこなせる万能タイプ。これなら登場機会もそれなりに確保できそうだよね。普段は気が強いけど、時折見せる「女の子の脆さ」は、素直に可愛らしいと思えたよ。


板倉先生はラブコメスポーツ漫画向き
何より、主人公とヒロインの『小学生同士』という関係性が、最もゾクゾクする設定! 最初は恋なんて知りもしない間柄。だけど成長するにつれ、性差を意識しぎくしゃくする。加えて「共同生活」の設定が、その方面への地盤をガッチリ固めてくれている。HAND'Sはスポーツ面よりも、恋愛面で大バケする可能性の方が、十二分にあり得る。

板倉先生は読み切りでも『恋愛』ありきのスポーツを描いてきた。『純スポーツ漫画』ではなく、『スポーツ兼恋愛漫画』向きの作家じゃないかなあと思う。おそらく大吾たちが中学、高校と成長するに従い、甘酸っぱい青春を描いてくれるのだろう…と期待してます。目指せ、ジャンプのあだち充


各キャラ考
大吾の父ちゃん。このまま第100話くらいまで失踪して欲しい。で、久々に登場したら息子がもっそいハンドボールプレイヤーに目覚めてて、「なんでオマエ、ハンドボールやってんのー!」って太臓みたいに目玉飛び出して、ベタなリアクションを見せて欲しい。大吾を西岡家に預けたのは、絶対ハンドボール目的じゃないよ…。単に押し付けただけだよ…。

西岡の父ちゃん。正義感が高く生真面目人間っぽい。大吾や娘の言動はなんでも良い方に解釈する天然キャラの予感。「共同生活」の中で大吾やミズキを恋仲と勘違いして、そんなつもりじゃない二人をそんなつもりにする引導キャラじゃなかろうか? 彼は小学校の先生というより、「西岡ハンドボールクラブ」的な私営団体の指導者じゃないかなと思う。中学に成長しても、父親は据え置きレギュラーとして期待したい。

ヤクザの親分。ビジュアルも同じなので、読み切り時の設定をそのまま生かすのかな。旧主人公と旧ヒロインも登場・活躍させて、世界観をクロスオーバーさせたら、一気に面白みが広がると思う。あのヘタレ旧主人公が、大吾の前ではやたらと格好良く見えたりね。旧ヒロインのお姉さんに憧れる大吾、それを嫉妬するミズキ、って設定も捨てがたい。絡み方次第で化けます。

ミズキは前記したので割愛。

大吾は「左頬の傷」「跳躍力」「母」が主な伏線。左頬の傷は第一話で早速触れられているけど、彼が視た『英雄』は父親なのか、他の誰かなのか、チョット判断付かない。母親の件と合わせて、連載が長期化すれば明示されそう。謎の村雨くんみたく謎のまま終わることは避けて欲しい…。大吾の跳躍力は、父親から継いだ才能と、『英雄』に憧れて練習した、ってところかな?


次週は、主人公のライバルとなるイケメン男キャラが登場すると予想します。ライバルの彼は攻受どちらを担当するのか? HAND'Sが軌道に乗るか否かは、そこがイチバンの問題でしょう!*1

*1:こんなジャンプ事情は切なすぎる…。