1479. 先行感想 - ムヒョとロージーの魔法律相談事務所 第71条「出発」
今週号の「ムヒョとロージーの魔法律相談事務所」について、大きくネタバレを含んだ感想記事です。未読の方は閲覧を控えて下さい。
前話がトーマス編の総まとめなら、今話は旧協会編の導入部。様々な伏線・キーワードを仕込んできましたね。といっても、ほとんどこれまでに登場した謎の復習と掘り下げです。また、六氷が執行人になってから現在までの筋書きが明確化したのも、今話の大収穫。
二年半の調査
長年の謎となっていた、「六氷の助手が洋一じゃない理由」が、こんな形でさりげなく明かされるとは拍子抜け。どんなサプライズですか!
【今話より】
六氷「オメェは調査漬けだったからな」
洋一「2年半かかっちまった」
ペイジ「フフッ」
「フフッ」じゃねェよ調査本部の本部長さん。ってツッコミはひとまず置きまして、よいしょ。洋一はこの2年半、調査本部で円の消息追求に専念していた。洋一は初登場時から、円の話題を中心に六氷と接してる。ここは後付けではなく、初期設定と考えた方が妥当か。
【第12条「狂気」より】
洋一「──もうあの時にエンチューは 完全に壊れちまったんだ 深い深い 悲しみと 憎しみで」
六氷が執行人となった後、円は協会から失踪した。仲間の異常に気付けなかった六氷と洋一。彼らなりの責任を感じたのでしょう。六氷の場合「あのアホめ!」の一喝で終わりそうだけど、洋一は性格的に仲間を放っておけず、捜査本部に身を寄せたと。洋一のその決断は、六氷にとっても痛手です。
なにしろあの当時、六氷執行人の助手に、洋一以上の逸材はいません。六氷の性格・思想を理解し、裁判官レベルの実力で、協会思想に腐敗していない者。この厳しい条件に該当する助手を探すのは至難の業。事実、六氷の助手が決まったのは、洋一が調査を始めてから半年後でした。つまり洋一の決断は、六氷にも我慢を強いたのです。
円の捜査は、六氷と洋一、二人の友情の意志と考えて差し支えないでしょう。
【第46条「出会い」より】
草野「――はじめてムヒョに会った日 その日もムヒョはジャビン…読んでた… もう あれから2年か」
二年前、草野は六氷の助手になり、六氷魔法律相談事務所が産声を上げた。洋一の調査から遅れること半年、ようやく「執行人」の活動が始まる。ここから真の物語が動き始めるには、更に一年以上も要してしまう。洋一が円の居場所を突き止めるまで、六氷なりに草野の成長を待っていたんですね。
【第70条】
2006年04月25日(草野の読んでいる新聞より)
これによると、洋一は2003年の10月頃から捜査を開始しています。その頃、六氷は執行人に、円は失踪したわけですね。
そこで今一度、過去から現在までの時制系を、特定できる範囲で整理します。以前に作った魔法律総集年表(第05巻編)では、今と辻褄が合わない情報が多いです。(連載時期=作中時間と考えて年表を作ったため)
魔法律総集年表・臨時版(第71条)
ムヒョロジにお詳しい方、間違いがあったらご指摘下さい。一発で作ったので、誤認した箇所もあると思います。
(2005/05/23)誤部のご指摘ありがとうございます。一部修正しました。
- 約1000年前:陰陽師の流れを汲む五嶺家の台頭。*1
- 約800年前:四つ目の仮面・怪人ティキが暗躍を開始。*2
- 約700年前:魔法律協会と霊の軍勢の戦い。(「煉根湯」の起源)*3
- 約680年前:錬金術師・魔術師が社会の弾圧を受ける。*4
- 約650年前:禁書が造られる。*5
- 約620年前:霊山で10万の霊魂を収集し、500万人の大殺戮。*6
- 約600年前:協会が禁書を回収して封印。*7
- 約500年前:顔剥ぎソフィーが二千人の顔を剥ぎ、ヨーロッパ中を震撼させる。*8
- 1996年: ペイジとトーマスがMLSの教師。*9
- 1996年yy月yy日: 五嶺が恵比寿の身柄を拾う。*10
- 1996年04月01日: 五嶺がMLSに入学。*11
- 2003年10月前後: 六氷が最年少執行人となる。その後、円が失踪する。*12
- 2003年10月xx日: 洋一が円の捜査を開始する。*13
- 2004年03月20日: 理緒の母が怨霊に殺される(大河内泰成、リリー・エレナは救援を拒否)*14
- 2004年04月xx日: 草野が六氷の助手になる。その後、事務所を開設。*15
- 2004年xx月xx日: 円と理緒が禁魔法律家として結束。*16
- 2005年yy月yy日: 協会の要人・高名な執行人が次々に殺害される。 *17
- 2005年初夏〜秋: 理緒と優の木イチゴ摘み。*18
- 2006年01〜03月: 草野の昇級試験で魔法律協会に訪問し、円と対峙。*19
- 2006年03月xx日: 六氷・草野・七菜が七ヶ瀬温泉に訪問。*20
- 2006年03月28日: 第18魔監獄最下層、ソフィーの封印が解ける。*21
- 2006年03月30日: 優の初登場。六氷達が第18魔監獄島を訪問。*22
- 2006年03月31日: ソフィーを執行。理緒との戦いの末、円と対峙。*23
- 2006年04月01日: ペイジの初登場。六氷が魔法律病院で療養。*24
- 2006年04月05日: 六氷と草野が事務所に戻る。(はりきって料理した日)*25
- 2006年04月07日: 五嶺・恵比寿の初登場。コックリさんの霊を執行。*26
- 2006年04月08日: 六氷が草野に「休暇」を言い渡す。*27
- 2006年04月11日: 草野が魔法律検定を決意。*28
- 2006年04月12日: 魔法律院主催「第1035回 魔法律検定」の開催。*29
- 2006年04月13日: ペイジの「魔法律特別強化合宿」が中止になる。*30
- 2006年04月14日: 草野が書記官研修を開始。*31
- 2006年04月21日: 草野が研修を終了し、ビコオフィスで六氷と再開。*32
- 2006年04月24日: 魔法律協会を経ち五嶺を救出、トーマスを討つ。*33
- 2006年04月25日: 六氷魔法律相談事務所にペイジと洋一が訪問。*34
- 2006年05月25日: 禁書の封印が解ける最速日(※ペイジの見込み)*35
最大のツッコミどころは魔監獄からトーマス執行まで一ヶ月経過してないこと。作中で「○日前まで××してた」といった補足説明が多く、こればっかりは覆しようがないや…。*36
もう一つの注目点は理緒先生の振る舞い。母の亡くして協会を恨んだ半年後に、六氷の魔法律書を作った事になります。この辻褄の合わなさは致命的。自分の生徒だから製本したの? その頃はまだ協会の人間を振る舞っていたの?
その他の見所
年表を作るのに三時間も掛かったので、残りはコメント的に感想します。もう疲れたよ…。
- 健二
- 「このケンジ様が」と自称しなきゃイケナイほど、久々の登場です。切なすぎます。健二は事務所の日常描写を望む読者の象徴だと思うんですよ。「お前達またどっか行くわけ?」「そのうち帰ってこなくなんじゃねーの!?」「ぜってー帰ってこいよ!!」とかね。オレを含めて、事務所の日常編が好きだった読者は、日常編に帰ってこいよ!!と意見を同調させてしまったと思います。
「帰ってこなかったら、連載の命はないと思え!」
- 咆千峡
- 義之先生は「跡地」って言葉が大好きだなあ。魔法律協会が移設した理由は明かされず。禁書との因果関係も別段明記なし。その原因は、今後明かされることでしょう。
- 禁書
- 「錬金術師の死者復活」というキーワードからして、禁書は『賢者の石』的なアイテムで確定でしょう。円や理緒が、死んだ母のために禁書復活を企てているとしたら…。しかし一方で、理緒は協会を恨んでいるし、円は六氷と協会に復讐すると謳います。果たして禁書の使い道は、協会の破滅のためか、死者復活のためか、その両方か。もしくは、箱船と、ティキと、円と理緒では、禁書の利用目的にズレがあるのかも。
- 六氷の魔法律書
- 以前にも指摘したけど、「道具と人の力関係は均一でないといけない」*37とは理緒先生の言葉。二年半で六氷はパワーアップしたんだろな。六氷の力が大きくなり、今までの魔法律書では釣り合いが取れなくなったと。優は30日以内に、師匠を超える魔法律書を作れるのか? 彼女は製本作業に追われるだろうし、旧教会跡地へのパーティ参入はなさそうだ。
- 草野は部外者
- 助手候補だった洋一が円の調査にあたった。つまり草野は洋一の代用品だった的な発言きちゃったー! 結果的には共に戦い、共に救う道を選んだ草野。まあ、どっちみち次のターゲットはキミだし、どんな選択しても命狙われてたんだよ…。
- 「魔法律は人を救うもの」
- このセリフ、最近やたら強調されて気になります。単純に考えれば「魔法律は生なる人を救うため、人を害する怨霊を裁くもの」という意味に思えます。でも最近は、その言葉に”含み”がこもってきた。曖昧だから余計に気になる。今度時間があったら、考えてみよう。
- 次期パーティ編成は?
- 六氷・草野・ペイジ・洋一の四人パーティが有力? でもペイジさんは足が悪くて、機動力ないんだよね。執行人は二人もいらないし。高確率で今井さんが絡みそうだけど、今井さんも部外者なんですが。まあ、魔監獄絡みで藤原くんを失ってるもんね…。
*1:第40条「赤川団地」
*2:第36条「風の中のツバメ」
*3:第33条「賭け」
*4:第71条「出発」
*5:第71条「出発」
*6:第71条「出発」
*7:第71条「出発」
*8:第22条「魔監獄潜入」
*9:第64条「コレクション・コンプリート」
*10:第56条「信頼」
*11:第64条「コレクション・コンプリート」
*12:第71条「出発」より逆算推測
*13:第71条「出発」
*14:第31条「木イチゴ」より理緒の日記。
*15:第46条「出会い」
*16:第10条「気配」より逆算推測
*17:第10条「気配」
*18:第31条「木イチゴ」より優「去年」と明言。
*19:第14条「となり」の季節感より推測。
*20:第17条「四谷先生」
*21:第21条「上陸」より前田監獄守「2日前」と明言。
*22:第21条「上陸」
*23:第36条「風の中のツバメ」にて草野「魔監獄島二日、協会に五日」と明言。
*24:第36条「風の中のツバメ」
*25:第37条「コックリさん」
*26:第37条「コックリさん」より六氷「この二日」はレトルト生活。
*27:第45条「離別」
*28:第40条「赤川団地」より「三日後」に五嶺に事務所を明け渡し、六氷と草野は離別。
*29:第45条「離別」の翌日が第49条「魔法律院」
*30:第49条「魔法律院」の翌朝
*31:第58条「ありのまま」
*32:第58条「ありのまま」
*33:第69条「居場所」
*34:第69条「居場所」の記者「会見は明日」と、第70条「判明」の新聞記事。
*35:第71条「出発」
*36:ONE PIECEの月の満ち欠け考察でも、同じような現象が起こってたよな。作家先生は、もっとのんびりキャラクタを戦わせてあげて!
*37:第22条「魔監獄潜入」より