1227. 第49回 - 新しき国へ(最終回)

最終回は60分スペシャル。泣きました。ああ、ボロボロに泣きましたさ。長年の仲間が散ってゆくシーンで泣かねば、男子たるもの泣けばいいのか! この最終回のためだけに、今まで見続けてきた甲斐がありました。

さて、今回は最終回ですし、いつものように話を追いながら感想しても味気ない。今回は、各勢力、各キャラに対する感想をして、大河ドラマ義経」の感想を締めたいと思います。

奥州平泉

藤原国衡長嶋一茂
 泰衡・忠衡とは異母弟の国衡。そのためか貴族の雰囲気を纏わず、二人に比べて気品に欠けました。ハードボイルドでアウトローな外見と、普段の寡黙さは読者の目を惹き付けたと思います。何より寡黙で厳ついのに実は心暖かな奴だったというラストのオチは見逃せません。こういうテイストのキャラ大好き。烏丸も序盤はこのタイプでした。長嶋一茂さんとは思えぬ男らしさ、印象に残ります。最後は生き残れてよかった!
藤原泰衡渡辺いっけい
 物語前半の泰衡は「野心は低いが智力・志の高い参謀タイプ」として登場しました。義経に助けられ確かな友情を築いたのに、物語終盤ではあの話はなかったことに。あの時の友情はなんだったんだーッ! まるで平宗盛鶴見辰吾)の霊が乗り移ったかのように、急激に情けなくなりましたね。「寄って掛かって儂を責めてくれるなー!」最終回でリアクション芸人の血に目覚めました。義経スタッフは、宗盛が居なくなって萌えキャラに飢えていたのかもしれない。
藤原忠衡(ユキリョウイチ)
 兄たちの個性が強すぎて、三兄弟の中では陰に隠れた忠衡殿。さすがに最後ぐらい何か感動のイベントがあるだろうと期待してたけど、最後まで何もなかった。しかし、終盤では泰衡の叱られ役として活躍。…活躍? 最後は叱られるばかりか暗殺されました。これぞ究極のハードSM。
 死後は本人より部下の方が義経の役に立つ。前代未聞の浮かばれなさを発揮。こういうある意味、こうしたネタキャラにこそ愛を注ぐ視聴者は多いかもしれません。

京の人々

後白河法皇平幹二朗
 場面によって性格がころころ変わる法皇様。この人は性格破綻者に違いない。脚本レベルでキャラ付けが異なる理由もあって、法皇様はその割を食った感あり。最後は義経をただただ恋しく思ういいひとになったけど、アンタちょっと前まで義経を食い物にして鎌倉潰しを考えたり、義経を食おうと色香な熱烈視線で見つめたりしてたじゃないか。最後だけ良キャラに変移したのが納得行かない。お前はもっと悪者で、ねちねちでいやらしい性格だったハズだー!
うつぼ(上戸彩
 うつぼは本作きっての常識人。義経主従の訳の分からない奇策に、いつも常識的なツッコミを入れる、清涼飲料のような娘でした。今週も常識人ツッコミは衰えを知りません。
 主従が7人だけで奥州の兵に立ち向かうと決断したとき、彼女はただ一人「戦はいけない、逃げないと」と進言。意見が真っ当すぎる。郎党達がこれまでも少人数で平気だったと意見しても「たった六人で勝てっこない!」「おまえ達おかしいよ!」と絶叫。意見が真っ当すぎる。まあ、義経と弁慶だけで1000兵力×2人の戦力ですから。郎党達の死がなければ、気持ちよく刀振るえてたかも。
静(石原さとみ
 どうしてうつぼと一緒に平泉へ行かない。 まさかあれか? ナレーションの所為か? 第45回ラストでお徳さん(白石加代子)が「これが二人最後の別れとなるのでした」って言っちゃった手前、行くに行けなくなっちゃったんだ? えー。*1

鎌倉勢

源頼朝中井貴一
 普段の寡黙さは、己の中の情を噛み殺す姿だったのかもしれません。ラスト、一人深々と義経を思い、男泣きする姿にグッときました。一方で、頼朝が直接義経の首を掛けなかったのは、この人の限界か。天下取りに向かない、最後で詰めの甘い武士だよなあ。その点、義経は情の人だったけど、ここぞという時は情より状勢を見極めて決断していた。木曽義仲小澤征悦)の時も、平知盛阿部寛)や宗盛坊ちゃんのと気もね。
北条政子財前直見
 鎌倉の天下取りは、頼朝さんの力ではなく、ほとんど政子様のお力でした。むしろ政子様にとって頼朝はちょっと頼りないパートナーかも。前記の通り、やはり天下取りの気質に向いたのは頼朝より義経の方。政子さんはパートナー選びで失敗したかもね。ただ、頼朝がなよなよ悩むタイプだったから、政子は良いようにコントロールできたと言えよう。やっぱりナイスカップル?
 思い返せば法皇様と同じく、政子様も性格破綻者だったなあ。脚本によってコロコロ意見や態度を変えすぎなんだ。役者の方は演じて違和を感じないものなの? 政子&法皇は随所で納得いかない演技が多かったです。

義経主従

鷲尾義久(長谷川朝晴
 熊の愛嬌で一定のキャラ付けを得るも、郎党の中では一番地味な役所。従って一番早く死んじゃう。次郎・三郎の盛り上げ役、喜三太の純情純愛役、佐藤兄弟のイケメン役、弁慶のストーカー役、に対して、一人キャラに厚みがなかった。結局、妹キャラだけに意味を為す人だったなぁ…。残念ながらオレは「義久」の名前を貰い受ける回を見逃したので、その所為で「キャラが弱い」と感じたのかも。
喜三太(伊藤淳史
 中盤以降「純情路線」で味が出て、一気に魅力が増したキャラ。うつぼへの告白シーンを見れば一目瞭然。その救われないっぷりは、まさしく萌えキャラと呼ぶに相応しい。
  • 弁慶がうつぼに、喜三太の想いを仲介して、うつぼ「喜三太の気持ちずっと分かってたから」と。
  • うつぼ「喜三太、都で待ってるよ」←哀れみの瞳
  • うつぼ「…義経様……」←恋する瞳
  • 喜三太ァァァーーッッ!!!←喜三太の憐れっぷりに激しく同情する男性視聴者多数
  • 「第一の家来」を争奪する喜三太と弁慶のやり取りを伏線にしたのは絶妙。激しく涙しました。
駿河次郎うじきつよし
 家来一気性の荒い男は、致死量の傷を被っても暴れ続けるバーサーカーと化しました。血みどろの顔で、なお義経を心配して振る舞う次郎に、オレの涙腺決壊。大海原より激しい波を越えてきたと達成感に満ちた笑顔が、今も頭から離れません。
伊勢三郎南原清隆
 死期に達して芸に徹した三郎の姿に、オレの鼻水腺も決壊。カニ芸は義経も絶賛の十八番ですもんね。自分の命の終わりに気付き、せめて主の笑顔を作りたかったその想い、痛々しいほど伝わってきました。笑顔のまま倒れ、すうーっと笑顔が消えて絶命する様には、涙と鼻水がナイトパレードでした。
弁慶(松平健
 うつぼに対して「一度死んでも生まれ変わってまた主従になることになっている」弁慶が壊れたぁーっ! と思った瞬間。”弁慶の仁王立ち”は、何だろうあの下品なハリボテ合成映像。NHK大河ドラマの最終回にやっていい領域を越えている。義経が弁慶のこれまでの働きを労うシーンはすごく感動できたけど、死期の演出は見事に外しました。あーあ、もったいない。
源義経(九郎義経
 ぶっちゃけ、弁慶と二人きりで戦った方がよっぽど全力出せたと思うんですよ。仲間の死に士気が落ちて敗北としか思えない。義経なんか、ワイヤーアクションを封印して、ぜんぜん本気出してなかったもの。アイツ、刀で矢をばっさばさ叩き落とす変態のくせに、妙なところだけ手抜き。最後は自害で果てちゃったから、結局義経の武力の底は割れないまま。彼がどこまで変態な強さなのか、一度くらい測って欲しかったです…。
 最後の龍のCGも、ファンタジーすぎて置いてけぼり食らったです。さすが「ファンタジー大河」のラストに相応しい演出! …だけど、感動も何もないよこれ?


ラストの5〜10分は惰性に感じました。郎党の死から一気にクライマックスで盛り上げ、涙を流しながら話を切って欲しかった。終盤になるほど気持ちが冷めてしまうと言う、なんとも歯がゆい最終回でした。しかし、膨大な涙と鼻水を流して感動できたのもまた事実。感動をありがとうございました。

さて、今回を持って大河ドラマ義経」感想を終了したいと思います。前年度『新選組!』ほど思い入れを薄く感想していたので、自分自身ノリきれなかった部分も多々ありました。しかし振り返ってみると、笑いのネタとして拾うポイントだけは数多あり、泣き所もなかなか抑えた演出があり、光るところもありました。

毎週とは言わずとも、一度でもSnowSwallowの稚拙な義経感想にお付き合い頂いた皆様方に、深々と感謝申し上げます。次回の大河ドラマ感想は、年明け「新選組!」特番でお会いしましょう。土方の死に様、とくと見よ!

*1:史実なものは史実なんだからしょうがない。