1186. 無実の罪 その2
風邪で喉が痛む事を、大多数の日本人は「扁桃腺が腫れた」と表現します。実はこの認識、誤解が多いって事知ってました?
扁桃腺の無実
前者のページは、いわゆる『扁桃腺炎』*1の誤解がどのように広まったか、明快に語られています。扁桃腺を理由にすれば皆ふんふんと納得するので、医師も患者も楽らしい。医師の責任とはいえ、冒頭のやりとりを見ては、なんとなく同情してしまう。
「のどの熱ですね」と言うと、3人に2人のおかあさんが「それって扁桃腺ですか?」とかえってくる。「いいえ、扁桃腺炎ではなくて、のど全体が腫れているんですよ。」するとまた「それって、扁桃腺が悪いのですか?」。 仕方なく「そうですね扁桃腺も一緒に腫れていますね。」と言うと安心したように「ああやっぱり扁桃腺ですか。」と納得する。違うっちゅうのに!
確かに扁桃が腫れて風邪を引くケースもある。しかし扁桃炎は、「喉の痛み」が風邪になるケース中の、およそ1/4以下といわれてる。本当に扁桃が原因で風邪になると一週間は高熱が出て、抗生物質を投薬しないと簡単には治らない。一日二日で簡単に熱が下がるケースは、「喉が腫れた」との認識こそ正しい。
「喉の腫れ」と「扁桃炎」の違いを認識してる人に「昨日、扁桃腺が腫れて風邪で寝込んでたよ」と告げたら、もっそい勢いで「医者行け! はよ薬飲め! もう家で寝てろ!」と説得されるから、皆注意しよう。(※きちんと空気を読んで「それは大変だったね」と返答する人多数です。)
ちなみに、『扁桃腺』『扁桃腺炎』という単語自体、誤った表現なのです。
扁桃は以前は「腺組織」と考えられていましたので、「扁桃腺」と呼ばれていましたが、腺組織でないことがわかったため、現在は「扁桃」と腺をつけない使い方が正しい使い方です。
扁桃腺ではなく扁桃。扁桃腺炎ではなく扁桃炎。まったく扁桃さんってば、無実の罪が多すぎです! こんなにもこじれた誤解っぷりは、昼ドラのドロドロ恋愛模様と同レベル級。日本人が「扁桃」を正しく認識する大円団を迎えるには、まだまだ時間が必要そうです。
風邪でボーっとしながら「扁桃の無実」を訴えるオレは、さながら「物語序盤で犯人の正体を知って殺される被害者」って役どころですか。寝てろよオレ。*2