731. いちご100%(第143話「傾く気持ち…混乱」)

いちご100%」先行感想。(※特集枠扱いですので、感想よりも分析・考察重視です)

時間がないので、今回は特集枠予定の感想漫画を先行して記事します。相変わらず時間の余裕が…。といいながら、先行感想すると余計に文章長くなってないオレ? 墓穴掘りすぎ。


いちご100%を考察する
いちご100%を考察する(笑)」の方がいいだろ! と思った読者様。今回ばかりは一味違うんですよ?

純愛乙女学園ウサギ組様の「ジャンプ感想09号いちご追記」の記事に感化されました。「いちご100%」といえば各感想サイトでもツッコミ感想、軽蔑感想が多い漫画(うちも含む)ですので、えびはらさんの考察文は大変興味深く読ませて頂けました。

SnowSwallowでもたまにいちごを考察しますが、その着眼点はほとんど真中に対して。えびはらさんは逆に、各ヒロインの心理分析を取り上げています。そして、その内容には大きく頷かされました。今回の感想では、えびはらさんの記事と一部重複しながらも、その先をもう少し自分流に掘り下げつつ、この路線の分析も書いてみようと思いました。よく考えると、「いちご100%」の物語性として気付くべき大切なポイントなのです。


主人公は優柔不断
主人公・真中は優柔不断で何事も中途半端。三年も女性を一人に決められないまま毎週のように別の女性に振り回される。かつ、毎年お相手の女性が増える。そして気持ちはあちこちに揺らぐ。東のこと考えてたと思ったら、北と接触して北のこと、そのすぐ後には西と接触して西のことを考えるダメ男。

趣味の撮影に本気で打ち込む様子もなく、女の子に誘われたら大切な趣味なんてポイ捨て。しかしこの状況、決して真中だけが悪いわけではないです。


各ヒロインが持つ責任
ダメ人間のセンターくんに恋をするヒロイン達。現在は東西南北向、五人のヒロインが存在。ただし南は戦線離脱中。センターくんがあまりにもダメ過ぎるのであまり目立ちませんが、彼女たちも本当はものすごくダメです。


東城のコンプレックス
東城は自身の性格にコンプレックスを持つ。内気な性格が災いして、己の意志を外へ主張できない。だから真中に恋しても、自分の気持ちを言葉にしない。内向的性格を自覚しており、自己を嫌悪している。このコンプレックスが、非常にマズイ部分です。

重要なのは、東城は真中が好きなことにかかわらず、真中への独占欲が薄いということ。主張できない自分を認識しているから、もたもたしているうちに真中が別の女の子と仲良くなっても、自分の所為だから仕方ないと諦めてしまうのです。


北大路のコンプレックス
北大路は自身の容姿に自信を持っている。競争意識が高く、どの女性よりアプローチが積極的。しかし、性的行為に異常な羞恥を抱くコンプレックスを持っている。にもかかわらず、彼女のアプローチは性的なハラスメントばかり。

彼女がなによりハラスメントに走るのは、自慢の容姿を利用して、他の女性より優位に立ちたいという動機が生まれるから。彼女の場合動機だけが先行し、性行為に弱いコンプレックスを克服しないまま、冷静な意識を無視した行動に走る。したがって、いざ直接的な事、つまりキスや性的なふれあいが始まると、とたん我に返る。結果、動機先行の無理な作戦は失敗する。

競争意識が高く、容姿に捕らわれすぎた結果、容姿を生かした積極的なアプローチが全て仇になっている。自分が大胆になりきれない所為で真中が別の女性に目移りしても仕方ない、だから自分がもっと大胆になればいい。…そう結論付けてしまうので、永続的に悪循環が発生するんです。


西野のコンプレックス
西野は上の二人と違い、独占欲が強い。過去には、真中が他の女性(主に東城)へ気持ちを揺らげすぎた結果、”自分だけを想ってくれない”真中に別れを告げたほど。西野のこの態度は、誰の目にも正常でした。

判断は正常だったんだけど、これが逆に仇となった。自分はもう真中の彼氏じゃないから、真中が別の女性に目移りしても仕方ない、と許す理由になったのです。更にややこしいことに、西野にとって真中は”別れても好きな人”状態。つかず離れずのまま、真中を増長させる結果となりました。

各ヒロイン『独占欲』が弱いから真中が自由になってるのに、西野のパターンに限っては逆なのです。


向井のコンプレックス
全ヒロインのライバルとしてでなく、実質東城のライバルという位置づけが正しいでしょう。向井のコンプレックスは、言わずと知れた男嫌い。そして猥褻妄想癖。前者は真中だけには平気になり、後者はお色気シーン増加のために用意した性格。

向井のコンプレックスもかなり強い自覚を持っている。東城のライバル位置に居るからか、「真中さんは私より東城さんの方が…」ばかり思考する。一応真中に対して嫉妬はするんだけど、東城に対する負け意識を先行させてしまう。

結果、自身に嫌悪は感じても、真中に対しての嫌悪感を抱かないのだ。


ヒロイン達のコンプレックス
各ヒロインがコンプレックスを抱く上で、真中に発生するメリット。

  • ヒロイン達は自身に嫌悪感を抱く
  • ヒロイン達は真中に対しては決して嫌悪感は抱かない

各ヒロインの独占欲が弱い上で、真中に発生するメリット。

  • 真中が他の女性と仲良くしていても自分のせいにして納得する
  • 他の女性と張り合うため、より積極的な行動に出る

真中が多くの女の子達に目移りするのは、真中だけの所為ではないです。周囲の環境(真中を取り巻くヒロイン達)の性格付けのせいでもあるのでした。


西野の逆告白
先週、西野は真中に逆告白しました。ハッキリ言って、意味不明。

だってそれじゃ、そもそも別れた意味ねェじゃん。「真中が自分のことだけを想ってくれたら寄りを戻す」という考えじゃなかったの? だいたい、多数の女性間で気持ちを揺るがせる真中の病気はあの頃より悪化してるよ? 独占欲の強さから大好きだったけど真中と別れたのに、いったいどうして逆告白したのか。 恋愛模様をごちゃ混ぜにしてお色気シーン増やしたいから、作者がその辺の設定ど忘れしたの?

逆告白については賛同しがたいですが、あえて仮説を考えるなら、自身の欲求(独占欲)よりも、一人の寂しさに絶えられなかったと考えるのが妥当でしょう。一人だけ別の女子校に進学したり、パティシエ目指して海外留学を決めたりあったりね。

あれれ…そういえば、パティシエの留学話ってどうなったんだ?(告白成功しても留学決まったら遠距離恋愛やん…)


都合がいいから? すべて計算づく?
河下先生は各ヒロインの性格付け、それによって真中(と作中)が受ける恩恵について、どこまで計算しているのか分かりません。作品にとって都合がいいから、全てのヒロインがこんな性格になってしまったとも考えられます。

しかしここではあえて、真中やヒロインの性格付け、その設定はすべて今後の展開への伏線で河下先生の計算づくだったという実は魔性の女作家を前提条件として、今後の展開を考察します。

もしもすべては河下先生の計算づくだったのなら、いちご100%はワンピースばりに多量の伏線を埋め込んでいたことになります。侮れません。


コンプレックスを克服
いちご100%は恋愛物語です。いちご100%が恋愛物語として理想的なハッピーエンドを描くには、このような条件が思い浮かびます。

  • 最終回では、主人公は特定のヒロインと結ばれる
  • 主人公から他のヒロインに対し、恋愛感情を抱かない
  • 他のヒロインから主人公に対し、恋愛感情を抱かない
  • どのヒロインに対しても、一方的絶縁はふさわしくない

1番目は当然。2〜3番目は、お互いが恋愛関係の別れにスッキリ納得してこそ、最終回以後の時間軸でも彼らは妙なわだかまりなく、ベストな関係を続けられるでしょう。4番目は、例えば一方的に「君とは付き合えない」とか「他の子が好きだから」と恋愛関係を断るのは、2〜3番目の成就にならないためです。

『相互理解によるお別れ』としてキーワードになるのがコンプレックスの克服です。

彼女たちがそれぞれに抱くコンプレックスは、現在の真中にとっては都合が良い。しかしヒロイン達にとっては恋愛対象がいつまでも真中という究極的な悪循環を発生させる原因となっている。また、真中にとっても、彼女たちから開放される日は永遠に来ない。

各ヒロインがコンプレックスを正常な形で解消していけば、盲目的に真中を信愛する原因が解消される。また、「私は○○がだめだから…」という理由により欠落していた独占欲も回復。彼女たちは成長さえすれば、自己ではなく真中に対して嫌悪感も抱くはずだ。

成長、そしてお別れ
各ヒロイン、様々なコンプレックスを抱いている。真中は各ヒロインのコンプレックスを、一人ずつ慎重に、丁寧に、純粋な気持ちで解消してゆく。真中はこうして各ヒロインの成長を手助けし、同時にそのヒロインとの「別れの日」が訪れる。真中の元から巣立ってゆくのだ。

自分に好意を寄せていた女性が一人減り、また一人減っていく。しかし不思議と、真中の気持ちに寂しさはなく、むしろ清々しいものだった。そうした経験を重ねるたび、真中自身にも変化が訪れる。彼女達の成長を目にして次第に感化され、どうしようもない自分も変わるべきだと自覚するのだ。

そして、残る一人の女の子。未だコンプレックスを解消できないでいる、最後のヒロインだ。精神的にも大きく成長した真中は、本命の彼女の成長を見届け…そして。


彼女もまた、真中の元から立ち去ったのだった。


って、アレ? 思いっきりバッドエンドやんこれーー!

※今話の感想が一切語られていないのは仕様です。