226. 第25回 - 新選組誕生

組の内部が怒濤の展開で変化する最中、「新選組誕生」というタイトルが痺れます。嵐の中力強く新生したようなイメージ。もちろん痺れたのはタイトルだけでなく本編もです。強烈に燃える、シビれる、ぐっとクる展開。浪士組の締めくくりとして、ドラマ「新選組!」後半戦のスタートとして、実に内容の濃い一本でした。

新見さん切腹を告げられる近藤局長。そりゃ怒るのは当然なんだけど、結局は土方の気迫と覚悟に気持ちが揺らぎ…。上に立つ者は切ないなぁ。芹沢さんは居なければならない人だと思いつつ、一方では芹沢排除を決行する段階まで来ていて、それを決断するのが近藤さんで、うわわぁ切ない。以前、近藤・芹沢が信頼の話をしていただけに、今話近藤さんは「局長」の立場として、芹沢排除の件に関し一貫して瞑していました。本心では芹沢さんを裏切りたくない、救いたいのに、そうした近藤勇「個人」の意思は「局長」の立場が許しません。子供でも大人でもない、これって社会人の立場だと思うんです(例えば、親の死に目に仕事を優先する人のような)。そんな葛藤を常に巡らせているようなあの寡黙さは、ただただ切なかったです。近藤さんの寡黙な態度にイライラしちゃった人、許してあげて下さい。

芹沢さん&お梅さんの談話に、護衛に斉藤。無縁仏でいいと漏らしたお梅に漢・芹沢さんが一言「俺の墓に入ればいい」と。かっちょええー! つまりこれって、現代でいう結婚をほのめかしているのかなと読みました。漢・芹沢、プププ、プロポーズ!! やべえ男臭さに惚そう。好き合い同士でない、同志だからつるんでるだけだと主張したお梅さんも「これで安心して死ねる」と喜んでいて。お梅さんの悪ではない真意がこぼれたかなと感じました。

続いて紅葉狩りの芹沢さん&お梅さん。死相が近いので芹沢カップルイベント続々と発生です。こんなに連続して『泣かせ袋*1』を用意して、視聴者をどうするつもりですかこの脚本は。 眼球から透明でない液体が流れるゥゥ! 隠居して二人でゆったり暮らしたい、という儚い希望な泣かせ袋。子供に剣術や読み書きを教えるのは俺らしくないという芹沢さんに、お梅さん「ものすごうあんさんらしいと思う」と、ほんと心の底から真面目に答えていて。うわぁ、泣かせ袋がまた一つ設置されてるッ! 斉藤が紅葉を「まるで血の色だ」と言っちゃう辺り、斉藤のキャラを活かして、なおかつ二人の未来のほのめかしていて、これも脚本が上手い。

芹沢暗殺の人選暗談。永倉さんを外します。この件が亀裂を生んで、今後の永倉さん決別イベントの発端になってしまうのでしょうか。人選に外れるとしても、話し合いには参加したかったと思うな。必要のない邪魔な存在と扱われてるようで、永倉さん自身もショックを受けそうだし。その後、素直に警護を頼まれる永倉さんの笑顔が悲しいですよ〜。

沖田の芹沢斬り申し出。「あの人は私に斬られたがっているんです」のセリフにはゾクゾクくるものが。芹沢さん相当Mっ気があれだけ言われれば勘付くよね、芹沢さんの沖田に自分を斬って欲しいという願望。土方は沖田にとことん甘いというか、傷つけたくないというか…近藤局長とは別の視点で過保護な保護者ですよね。人選から外される源さん、沖田が行くという話で相当な驚きを受けていた様子。最近の源さんは実に渋くて良い。こんなおじさん、もしくは上司が欲しい。普段は優しそうで実際優しくて、時に厳し気で。ちょっと頼りないところも、いざという時の厳格な渋さが光りとても効果的です。

芹沢筆頭局長と近藤局長、顔合わせラストシーン。近藤さんは、最後まで芹沢さんを信頼し続けていました。一ヶ月も前の話で忘れてしまった視聴者もいるだろうけど、オレは近藤さんのそこだけは特に注視して見てきたので。多くの問題を起こした芹沢さんを、それでも変わらずに信頼し続けていられた近藤さんに、『近藤勇らしさ』とはどういうものかを見た気がします。松平様並びに近藤を味方する人達の「これが近藤という男なのじゃ」って、抽象的な言い回しで表現される近藤という人物の内容が、今話で一つ確定的な形を生んでいて。

このラストシーン、個人的には”信頼し続けられた”部分をもう少し前に出して表現して欲しかったなぁと。結局、近藤さんと芹沢さんの信頼・絆が変わらなかったという結論は、芹沢さんの「鬼になれよ、近藤」の名セリフに隠れてしまったので。今回の見せ場で、今ひとつ主役”近藤勇”の駒が光れなかったのは、この漢・芹沢の名セリフがあまりにも格好良すぎたのが敗因です。「鬼になって俺を喰っちまえよ、遠慮は要らねぇ」とか言いながら、芹沢さんは遠慮無く主役の近藤さんを喰っちゃってました。

更には、再び「新選組」の名をさらり見して、「悪くねぇな。明日からこの名前でいけよ」と漏らした芹沢さんが! 芹沢筆頭局長がッ! せりざわひっとーきょくちょうに敬礼ー!(涙声) 無茶苦茶です、もう無茶苦茶格好いいんですこのシーン。「泣かせ袋」が更に投下されます。泣かせ袋は伏線であるはずなのに、その伏線ですら既に涙がこぼれちゃう! やべえ! オレの涙腺が空襲に遭ってるよ! まさに遺言って感じでした。

近藤局長の「鬼になった」決意。芹沢さんの煽りに乗ったと見てしまうと、かなり情けない男に見えてしまうのですが、もちろんそんなものじゃない。信頼している芹沢さんにあそこまで言われたのだから、近藤局長はその意を汲んだのだと思います。鬼になって芹沢を喰い、自らが明日からの新選組をしょって立ち、筆頭局長として時代に名を残す決意を固めた、と読みました。

芹沢暗殺戦は昨日の感想に。史実にもある瓢箪の小道具も実に違和感なし。アレがなかったらラスボスの芹沢さんは4人を返り討ちにしてたかも…。

野口への配慮。野口の泣きを堪え歯を噛みしめる表情、実に素晴らしい演技。こんなところにも泣かせ袋を投下! というか、このシーンは泣かせ袋ミサイルじゃなくて『泣け原爆』ですよ。とどめの一撃。オレ瞬殺。「お前だけは助けるようにと山南さんに言われた」に続き、平助の説得が良いんです、お梅さんと芹沢さんの夢とだぶっていて。まるで野口が二人の思い描いた未来を叶える、という表現で彼ら二人の救いを描いているように見えました。平助はほんと優しい、お前マジで良いヤツだな!

…だけど、このまま野口は脱退できるのでしょうか。史実とは食い違うし、御法度でも脱退は切腹だし、ちょっぴり心配。叶うならば、新『選』組というドラマでは平間と野口の両名にはひっそり幸せに余生を過ごして欲しいものです。

そして、新選組誕生。芹沢弔いの言葉でも芹沢全筆頭局長を利用していた物言い。まさしく「鬼になって俺を喰っちまえよ」を成就させた瞬間だと思いました。芹沢さんは、最後まで自分を信頼してくれた近藤局長からこのように自分を利用して貰えて、嬉しいんだと思うんです。もちろん、これは一視聴者の妄想ですが。

次週から新展開ですね。新メンバーも顔を出しますし、新たな敵も出てきます。長く描かれた芹沢の章はこれにて終了。次週からまた、新たな新選組の長い長いお話を堪能できると思うと、楽しみで仕方ありません。

*1:泣かせるための伏線のこと