1796. 週刊少年ジャンプ12号

ランゲージダイアリーのあいばさん著書・『ゼロ年代のメルヘン時間から現在の私達へ贈る灯 (Kindle版)』を読み終えました。個々の作品を細密に読み解き、丁寧に語り伝え、なにより作品への愛に満ちたテキストは、朝の厳しい寒さに沁みるんですよ。文化を享受して文化へ還元する、これぞ王道にして正統派の書籍でした!

今週のWJアンケートハガキ

最近は何を言わずとも「10ポイント配点投票方式」です。誰も何も言わずに淡々と採点手続きが進む感じ、必殺仕事人で依頼料を無言で分配してくシーンみたいになってます……。

各者の採点内訳はこちら。

作品 id:SnowSwallow id:iolite 合算
★ 恋するエジソン 3 2 5
ハイキュー!! 2 1 3
SKET DANCE 3 0 3
  こち亀 0 2 2
  BLEACH 0 2 2
  暗殺教室 1 1 2
  めだかボックス 1 0 1
  ワールドトリガー 0 1 1
  新米婦警キルコさん 0 1 1

点の付け方だけ見ても、なにやらこだわりを感じます。自分は明確に「アンケ投票したい作品」があって、そこを極端に採点しました。残る『暗殺』『めだか』はあわよくば上位に切り込んでほしい、そんな淡い応援に込めています。

一方のお嫁さんは今回も満遍なく採点してきました。今週も博愛色は強いですが、『BLEACH』『こち亀』とこれまで無得点が続いた作品を推しています。この採点、すごく共感できたんですよ。両作品とも作者のこだわりと読者の期待感が一致した展開で、着地もキレイでしたもんね。

以下、本号でアンケート票を投じた作品を感想します。

* 恋するエジソン(渡邉築) - 第5話「透明スプレー」・第6話「トイレットペーパーメーカー」

先週までは衛藤ヒロユキ先生チックな『メルヘン+変態』ワールドでしたが、今週は大石浩二先生の作風を感じました。前振りなくライオンやお相撲さんを投じる流れはまさに、いぬまるくんの奔放な仕込みのそれだし、オチだってズバリ大石先生! 寮友メンバ全員が「ネジ一本飛んでる系」で寮長をイジる感じからも、完全にメインヒロインは寮長です。

女王様風の三角メガネも、癒やし系女子二人に装着させると妙にエロいですし。つたない責め言葉を誘って辱めるもよし。変に目覚めて無邪気に撲ってもらうもよし。男性ファンにはたまらないシチュだなあ! 一方で、夕飯時にそろって三角メガネ装着してる絵が壮絶。これ食事会の後に一室で性的に乱れるやつだ!(女性無料)

二本目はトイレの定番ネタ。発明モードの顔芸ではじめて笑っちゃいました。個人的にはスピカの奇行に笑うものの、寮長視点はイマイチ...。でもその後、お嫁さんが「紙が生産されない流れ」で大笑いしてるのを目撃しまして。うんこネタのこうかはばつぐんだ! それで、ちょっと思い出したんですけどね。

トイレネタってのは本来、簡単に踏み込めないタブーじゃないですか。だからか飲み会で「人に言えないトイレ事情」の暴露話をはじめると、これが妙に盛り上がるんです。ウォシュレットデビューの年齢とか感想とか、そういう些細なネタフリで、各人がド級の手札を切ってくるわけです。ある人がどっ引きする隣で、同時に別の人たちは大爆笑してたりする。人はそれぞれに異なる人生観とトイレ観を背負ってるんです。今回のトイレネタも、読者のトイレ観と一致しなきゃ、キチンと楽しめないのかもな、なんて思った次第で。

ここでひとつトイレあるある。平日の日中から急に活発にツイートしはじめる社会人は、だいたいトイレ中です。大なのにトイレ中とはこれ如何に。(大して上手くない...)

* ハイキュー!!(古館春一) - 第49話「VS”大王様”・2」

SnowSwallowでは『ハイキュー!!』を天井マンガと銘打っております。

きっと高校バレーの取材でも天井の写真を撮りまくり、スタッフ全員の『天井オタク』も板についた頃合いでしょう。「あっ...えっと、地面からもうワンショットいっスか?」とネット際で待ち受け、ローアングラーの腹這い姿勢で見上げるようにして男子高校生のスパイクを撮影するのです(たぶん)。そうした弛まぬ努力を経て、アシさんはあれほどの天井を描けるのです(きっと)。

そこいくと今週は、節々に天井が描かれたものの、照明の煌びやかな差し込み光など過度な演出は控えており、天井ファンとしてはもの足りません。これは背景担当のアシさんが未だウォーミングアップ中で、今は差し馬が足を溜めていく局面でしょう。最高潮の回では素敵な天井を解き放たれたい。目指せ、天井巻頭カラー!(天井だけで二段落も費やす話なのか……)

新章突入で早くも心理戦が始まりました。今はバトルもスポーツも「戦術の読み合い、ぶつけ合い」で読ませる物語が流行ですもんね。対青葉戦のセッター対決には、これまでよりも濃厚な化かし合いを期待します。心理誘導とハッタリはまだまだ小手先の粋ですが、ここからは相手の長所を殺して自分の短所を補う術など、両陣営の個性を生かした機転の利かせ方を読んでみたいです。影山の能力も未だ底知れぬ余裕を感じるので、この試合でフルパワーを発揮してもらいたいなぁ。

* SKET DANCE篠原健太) - 第269話「自転車一人旅密着ドキュメント」

冒頭カフェでのダイジェスト、八木さんの声が聞こえきます……。「もうやりたいことは見つかった?」「いつまで甘えてるつもりかしら?」「自分のやりたいことひとつ見つけられずに人助け?」「私は心配して言ってるのよ?」と、常に語尾に「?」が付く感じで同級生の男の子をキツく責め立てるわけですよ。こんなお姉ちゃんが欲しかった、くうっ……。

冒頭はBGMネタの勝ち逃げですが、(作業用BGMにしてたら笑いを誘われて捗らない)


超器用なボッスンがチェーンの調整に苦戦する姿に違和感。ギャグ優先でキャラ曲げちゃったのかな。オチまで読めば、ママチャリのプロフェッショナルに成長する布石とも解釈できますけれど。何度もコンビニに立ち寄る展開は、ボッスンのメンタルの弱さがよく出ていて納得しちゃいます。八木さん、ボッスンの荷物が盗まれる一部始終も観察してたんだよね、ほんとキツいな! あとこれ、ホントどうでもいい心配ですけど、お母さんは自転車なくて困るんじゃないのかな……。

ライアンと何を話したのか、一番重要なシーンがスキップされましたが、今後言及されると信じたいです。テントでキャンプで男同士で語り合うシチュが、結果的には夏の青春って感じがして読後感もスッキリします。にしても鹿児島往復を耐えたボッスン(のママ)のママチャリ、安かったのに強い!

でも今回、一番の見所といったら、スイッチのボッスンが大好きすぎるコメントですね。いつもリアクション薄めなのに、今週は頻繁にコメントしてくれた! 情熱大陸のくだりが個人的最大風速でした。(今度は情熱大陸のテーマを作業用BGMにしてたら案の定捗らない)

ここまでギャグ回のラッシュが続きましたが、楽しかった夏休みは今話で終了。夏休み以後の篠原先生がキレッキレすぎて、何回アンケ票を投じてしまったことか。二学期以後はシリアス回の比率が増えてく予感。三度に一度はギャグがほしいです……。

* こっくり屋ぁい!(権平ひつじ)

アンケ以外からのプラスワン感想。

被害者の捨てキャラが、ついにカラー扉絵で登場!前後の流れを弄るなりして、主役をカラーに使えなかったのか。WJ表紙の隅っこで狐三郎が黄色いって再認識しましたもん。こっくり産の体毛情報のがカラーの優先度上位!? 47ページの大容量でこれは……構成の調整力にまず疑問です。

登場人物の個性、孤三郎との出会い方、不良の立ち回りと負けっぷり、ストーリー展開、いずれもベタベタです。連載二話分を使ってものすごいテンプレ感。犬太の素直じゃない優しさも、みゆきの健気さも、狐三郎の実直さも、すごく伝わってくる。それは権平先生の長所かもだけど、「全球直球勝負」はさすがに物足りません。安心感という意味では『最強ジャンプ』向きの作家でしょう。

しかし感想のために改めて読み返してみたら、これが怒濤の文章量で。低年齢層受けする絵柄や内容なのに、このテキスト量はミスマッチな感じが。やはりネームと構成力の欠点に目が向いちゃう。それでいて初読では気にならなかったので、絵がスッキリしていて読みやすかったのかもです。絵が上手でも読みづらいマンガってありますから、そこが権平先生の武器・持ち味なのでしょう。

読み切り作品は基本、見所を褒めて成長を期待する感想を書きたいんです。それでも辛口になるのは、「自分のこだわり」が作者のそれと乖離してるからなのか。権平先生がこの作品で一番こだわった部分って何だろう……。『オリジナリティ』でも『目新しさ』でもない、別の観点で重視したことがあったはずです。それを読み取れていない自分は「合わない読者」であり、国語力もマンガ力も足りていないんでしょうね...。