1797. 週刊少年ジャンプ13号

応募者全員サービスの『ヌルプニストラップ』が届きました。でも世間ではストラップよりもぬいぐるみに話題が集中していて、ちょっと悔しい気分です。最初からそっちが欲しかった!

今週のWJアンケートハガキ

恒例の、互いの票を読み合わないよう意識しすぎて結果的に駆け引きする「10ポイント配点投票方式」です。

採点内訳はこちら。

作品 id:SnowSwallow id:iolite 合算
新米婦警キルコさん 2 3 5
銀魂 2 2 4
★ 恋するエジソン 2 1 3
  べるぜバブ 2 0 2
  めだかボックス 2 0 2
  SKET DANCE 0 2 2
  暗殺教室 0 1 1
  GLASS FEET(読み切り) 0 1 1

今週は大接戦! 三票ともギャグマンガが制しました。一方で転換期を演出して盛り上がる『べるぜバブ』『暗殺教室』、一大エピソードを締め括った『めだかボックス』『黒子のバスケ』『BLEACH』が伸び悩むのは、かなりマズいんじゃないかなぁと。だいたい、ギャグマンガだけじゃ、感想が書きにくいんですよぉ!

この「今週面白かった」にこだわって採点すると、THE MANZAI の視聴者投票で「ボケの多い方が強い」のと同じ失敗に陥る感じがします。次回から採点基準を見直さなきゃだ。

以下、本号でアンケート票を投じた作品を感想します。

* 新米婦警キルコさん(平方昌宏) - 第13話「密着! キルコさん24時!!」

ギャグコメも物語展開も設定の整合性も見事なデキ栄え。面白エピソードを交えながらキルコさんの過去(キャラ設定)を伝え説いてく手法は、繰り返しやっていますけど、何回見ても感心してしまいます。

この作品の武器は、「作家の構成力」や「キルコの百面相」でもなくて、破天荒が許される芸風だと思えてきました。小娘がマーシャルマスターに勝つとか「ありえない」のに、芸風が「常識」を打ち崩すんですよ。

破天荒を通すテクニックとして多用されているのが、『隻眼の山猫(ワン・アイズ・クーガー)』『マーシャルマスター』『神殺し(ジバ・ブノハン)』などのフレーズ力ですよね。長々とした説明よりも、強烈なフレーズに言いくるめちゃう。細部をとやかく検証する気も失せてしまう馬鹿らしさ。笑って許せてしまいます。

このクオリティの作品がWJの最後尾に待ち構えているなんて嘘でしょう!? ワンピではじまりキルコで締めるだなんて、こんな贅沢が許されるでしょうか。打ち切りだけは勘弁してと熱心に願うのは『メルヘン王子グリム』以来です。やめたげて、キルコはまだまだデキルコ!(と言いたかっただけ)

* 銀魂空知英秋) - 第434訓「オシャレとはオシャレと言葉にした時点でかき消えるものなり」

シリアス回の最中は「次のギャグ回まだかな?」と溜め息ついて。ギャグ回がきたら「次のギャグ回いつかな?」と溜め息ついて。でもいざギャグ回がきたら、こうしてアンケ票を投じさせる底力があるんですよね。

「ペニスケース」と表記して「耳」とルビを打つセンスに脱帽。この場合は着帽か。業界的には「ペニスサック」に分類されるんじゃないかなぁ……と、読んでる最中に疑念を抱いていたんです。後ほど「まつざきしげるいろ」と一緒にWebで確認したところ、どうやrふぁペニスケースは性的に防御的で、ペニスサックは性的にガチでした。まあ、どちらも男性を増強するんですけどね。

さらに独自の調査を続けたところ、最近の「ペニスサック」はモロな竿型ばかりじゃなくって、一見下着にしかみえない「ポケット付パンツ型」のペニサ―が存在するらしいのです。思い立ったら吉日(!?)、変態商品の取り扱いにも定評のあるアマゾンさんでウィンドウショッピングしてみたら、すぐにこんな商品説明が飛び込んできました。(じゃんぷかんそう……?)

King Styleの網ポケット付きパンツは、台湾で大人気の商品で、下着専門メーカーが製造しています。人間工学を元に立体裁断し、また高級綿素材を使用して作られた男性用パンツです。身体に優しくフィットするだけではなく、「陰嚢分離型」なので通気性がよく、いつでも快適感を保ちます。陰茎と睾丸を別々に保つことにより、ベタつきを抑える通気性があり、常に快適で清潔を保つことが出来ます。スポーツや長距離ドライブなどの際に着用時にも快適に着用することが可能です。

ツッコミ所が多すぎますよ、ペニスサックだけに。ジャンプ感想を再開したいので、一つだけ抜粋して言わせてもらえるならば。男性用下着の説明で人間工学を元に立体裁断しというギロチンフレーズ、怖すぎ! M男をターゲットに絞りすぎ! ポチったらペニスを立体裁断されそうッ!!(じゃんぷかんそう……!?)

話を戻します。

店頭にディスプレイされた巨大版ペニスケースのデザイン、すごい女性ウケしそうで素敵ですよね! こんなペニスケースで町中を闊歩すれば、道行くお姉さんに「きれい!」「かわいい!」「触ってもいいですか?」とチヤホヤしてもらえそうです(願望)。その隣でいっしょに飾られているドリルタイプのペニスケースもすげえ雄雄しい! これってクラブに潜るとき装着するやつですよね(偏見)。

いままで銀魂の感想を書いていて、銀魂のアシスタントを褒めるのってこれが初めてなんですけど、今週のアシさんは本当にいい仕事してました。あんまり話が戻りませんでした。

* 恋するエジソン(渡邉築) - 第7話「RGB変換マシン」・第8話「西園寺さそりのΨ難」

『キルコ』の芸風と同じく、渡邉先生にも破天荒(ハジケリスト)を期待しちゃいます。『SKET DANCE』『斎木楠雄』なんかは納得感や根拠に重心を置いた笑いだから、WJのお笑いマンガはうまいことバランスとれてるんだなあと再認識しました。

一本目は本編を楽しんだあと、Webでも楽しめる二段仕立ての笑いが嬉しいです。「まつざきしげるいろ」が初耳か否かで、印象がまったく違うネタかもです。背後の階段からご本人がいい笑顔で登場という基本を押さえた演出も好きです。

二本目のイケメンネタは、担当編集「制服着ろ!!」ってツッコミが最大風速。コミックスでは消えてしまうのが惜しいです。本題としては、要は高度に調教したイケメンは魔法と見分けがつかないってヤツですよね。徐々に経歴を盛りながら『20年目の大ベテラン』が登場し、その矛盾にも野暮なツッコミを入れない気の回し方が素敵です。

その後、家族会議でエジソンを語っていて再発見したのが好沢の存在でした。『メルヘン王子グリム』でも白雪の親衛隊でなかなかの残念係を勤め上げた彼ですが、高校生になっても残念な切れ味は衰えるところを知らなくて嬉しいです。

「これグリムの好沢だよね?」と詳しく説明したらお嫁さんも思い出したらしく、二人でWebの画像を漁るモノの、確信できる材料はさっぱり見当たりませんでした。グリム二巻の表紙にも登場してるんだけど、好沢のアゴ福本伸行先生のタッチで描かれており(何を言ってるか分からないと思うけど、詳しくはWebで!)、最後まで結論を出せませんでした。画像検索したら、ファンアートが大量に出てくるのだけど、イソッペのお母さんが人気すぎて好沢はちっとも見つかりません。『エジソン』では頑張って、その残念な地位を高めていただきたいです!

* GLASS FEET(AOKO)

アンケ以外からのプラスワン感想。

先週の『こっくり屋ぁい!』が不憫に思えるほど、画力・構成ともに飛び抜けてました。まず主要キャラの造型と解説が手堅いです。過去背景から裏付けられた現在の性格、理念、想いを、手短にさりげなく説明できています。その大切な想いを打ち砕かれ、挫折して涙する流れまで計算尽く。このあたり、なんというか「理系的な芸術」という印象を持ちました。

オーウェンがサラを助けに行く場面に強引さを感じました。ここは納得感より展開の早回しを優先した痕跡がみえます。読切作品はアピールポイントにページを割くのが定石ですもんね。前振りはできるだけ省略・軽量化して、ミド神父の異常性とアクションにページを割いた判断は正しかったと思えます。

ただまあ、取調室の虫は何だったのか! という説明不足は、追究されると苦しいシーンかも...。サラの胸元に潜ってたサソリが「邪淫」のアスモデウスだった、という解釈まではいいですよね。取調室に湧いた大量の虫も「邪淫」の悪魔? アスモデウスは「邪淫」に属する一体の悪魔に過ぎない? それとも「邪淫」そのもので、アスモデウスを倒せば残る悪魔は六体? 邪淫以外の悪魔も虫? ……といった情報不足で混乱してしまい、肝心のバトルに集中できなかった面も否めません。

とはいえ、虫や悪魔への疑問はあくまで、設定次第でどうとでも解釈できるわけで。んな設定を詳細に説明されてもとかえってキツいってこと、AOKO先生も理解されているのでしょう。このあたり、マンガ家として成熟してるというか、信頼感が溢れ出ていて、とても新人作家とは思えません。

この謎の貫禄は、信頼感とは別に、「絵柄」や「設定のセンス」の古臭さが醸し出しているのかもです。こう言っちゃ失礼だけど、AOKO先生ってオレらと同世代(30代)のセンスでしょ。一昔前に流行った作風、絵柄、題材、そしてまた、WJでは流行らないセンスは、かつての田中加奈子先生を思い出させます。ただ者ではない異彩を放ってはいるものの、WJで勝ち抜ける姿は想像できません……。

一番近い作風で『BLEACH』ですけど、久保先生の絵は男臭さも兼ねてるから、少年誌で生き残れてるんですよね。AOKO先生に「男臭さ」を表現できるかが、一番の課題と思えます。

例えば『GLASS FEET』と『ONE PIECE』の最終ページ、どちらも似たような姿勢で座ってますが、ドフラミンゴの風格はまさに少年マンガ! 対するミド神父は耽美で少女マンガ。「ミド神父にはすね毛の一本も生えてません! ウンコの一本もたれません!」みたいな色気と潔癖さは、男性読者を引かせてしまう一因です。義足からすね毛生えたらスゴイけど。

1796. 週刊少年ジャンプ12号

ランゲージダイアリーのあいばさん著書・『ゼロ年代のメルヘン時間から現在の私達へ贈る灯 (Kindle版)』を読み終えました。個々の作品を細密に読み解き、丁寧に語り伝え、なにより作品への愛に満ちたテキストは、朝の厳しい寒さに沁みるんですよ。文化を享受して文化へ還元する、これぞ王道にして正統派の書籍でした!

今週のWJアンケートハガキ

最近は何を言わずとも「10ポイント配点投票方式」です。誰も何も言わずに淡々と採点手続きが進む感じ、必殺仕事人で依頼料を無言で分配してくシーンみたいになってます……。

各者の採点内訳はこちら。

作品 id:SnowSwallow id:iolite 合算
★ 恋するエジソン 3 2 5
ハイキュー!! 2 1 3
SKET DANCE 3 0 3
  こち亀 0 2 2
  BLEACH 0 2 2
  暗殺教室 1 1 2
  めだかボックス 1 0 1
  ワールドトリガー 0 1 1
  新米婦警キルコさん 0 1 1

点の付け方だけ見ても、なにやらこだわりを感じます。自分は明確に「アンケ投票したい作品」があって、そこを極端に採点しました。残る『暗殺』『めだか』はあわよくば上位に切り込んでほしい、そんな淡い応援に込めています。

一方のお嫁さんは今回も満遍なく採点してきました。今週も博愛色は強いですが、『BLEACH』『こち亀』とこれまで無得点が続いた作品を推しています。この採点、すごく共感できたんですよ。両作品とも作者のこだわりと読者の期待感が一致した展開で、着地もキレイでしたもんね。

以下、本号でアンケート票を投じた作品を感想します。

* 恋するエジソン(渡邉築) - 第5話「透明スプレー」・第6話「トイレットペーパーメーカー」

先週までは衛藤ヒロユキ先生チックな『メルヘン+変態』ワールドでしたが、今週は大石浩二先生の作風を感じました。前振りなくライオンやお相撲さんを投じる流れはまさに、いぬまるくんの奔放な仕込みのそれだし、オチだってズバリ大石先生! 寮友メンバ全員が「ネジ一本飛んでる系」で寮長をイジる感じからも、完全にメインヒロインは寮長です。

女王様風の三角メガネも、癒やし系女子二人に装着させると妙にエロいですし。つたない責め言葉を誘って辱めるもよし。変に目覚めて無邪気に撲ってもらうもよし。男性ファンにはたまらないシチュだなあ! 一方で、夕飯時にそろって三角メガネ装着してる絵が壮絶。これ食事会の後に一室で性的に乱れるやつだ!(女性無料)

二本目はトイレの定番ネタ。発明モードの顔芸ではじめて笑っちゃいました。個人的にはスピカの奇行に笑うものの、寮長視点はイマイチ...。でもその後、お嫁さんが「紙が生産されない流れ」で大笑いしてるのを目撃しまして。うんこネタのこうかはばつぐんだ! それで、ちょっと思い出したんですけどね。

トイレネタってのは本来、簡単に踏み込めないタブーじゃないですか。だからか飲み会で「人に言えないトイレ事情」の暴露話をはじめると、これが妙に盛り上がるんです。ウォシュレットデビューの年齢とか感想とか、そういう些細なネタフリで、各人がド級の手札を切ってくるわけです。ある人がどっ引きする隣で、同時に別の人たちは大爆笑してたりする。人はそれぞれに異なる人生観とトイレ観を背負ってるんです。今回のトイレネタも、読者のトイレ観と一致しなきゃ、キチンと楽しめないのかもな、なんて思った次第で。

ここでひとつトイレあるある。平日の日中から急に活発にツイートしはじめる社会人は、だいたいトイレ中です。大なのにトイレ中とはこれ如何に。(大して上手くない...)

* ハイキュー!!(古館春一) - 第49話「VS”大王様”・2」

SnowSwallowでは『ハイキュー!!』を天井マンガと銘打っております。

きっと高校バレーの取材でも天井の写真を撮りまくり、スタッフ全員の『天井オタク』も板についた頃合いでしょう。「あっ...えっと、地面からもうワンショットいっスか?」とネット際で待ち受け、ローアングラーの腹這い姿勢で見上げるようにして男子高校生のスパイクを撮影するのです(たぶん)。そうした弛まぬ努力を経て、アシさんはあれほどの天井を描けるのです(きっと)。

そこいくと今週は、節々に天井が描かれたものの、照明の煌びやかな差し込み光など過度な演出は控えており、天井ファンとしてはもの足りません。これは背景担当のアシさんが未だウォーミングアップ中で、今は差し馬が足を溜めていく局面でしょう。最高潮の回では素敵な天井を解き放たれたい。目指せ、天井巻頭カラー!(天井だけで二段落も費やす話なのか……)

新章突入で早くも心理戦が始まりました。今はバトルもスポーツも「戦術の読み合い、ぶつけ合い」で読ませる物語が流行ですもんね。対青葉戦のセッター対決には、これまでよりも濃厚な化かし合いを期待します。心理誘導とハッタリはまだまだ小手先の粋ですが、ここからは相手の長所を殺して自分の短所を補う術など、両陣営の個性を生かした機転の利かせ方を読んでみたいです。影山の能力も未だ底知れぬ余裕を感じるので、この試合でフルパワーを発揮してもらいたいなぁ。

* SKET DANCE篠原健太) - 第269話「自転車一人旅密着ドキュメント」

冒頭カフェでのダイジェスト、八木さんの声が聞こえきます……。「もうやりたいことは見つかった?」「いつまで甘えてるつもりかしら?」「自分のやりたいことひとつ見つけられずに人助け?」「私は心配して言ってるのよ?」と、常に語尾に「?」が付く感じで同級生の男の子をキツく責め立てるわけですよ。こんなお姉ちゃんが欲しかった、くうっ……。

冒頭はBGMネタの勝ち逃げですが、(作業用BGMにしてたら笑いを誘われて捗らない)


超器用なボッスンがチェーンの調整に苦戦する姿に違和感。ギャグ優先でキャラ曲げちゃったのかな。オチまで読めば、ママチャリのプロフェッショナルに成長する布石とも解釈できますけれど。何度もコンビニに立ち寄る展開は、ボッスンのメンタルの弱さがよく出ていて納得しちゃいます。八木さん、ボッスンの荷物が盗まれる一部始終も観察してたんだよね、ほんとキツいな! あとこれ、ホントどうでもいい心配ですけど、お母さんは自転車なくて困るんじゃないのかな……。

ライアンと何を話したのか、一番重要なシーンがスキップされましたが、今後言及されると信じたいです。テントでキャンプで男同士で語り合うシチュが、結果的には夏の青春って感じがして読後感もスッキリします。にしても鹿児島往復を耐えたボッスン(のママ)のママチャリ、安かったのに強い!

でも今回、一番の見所といったら、スイッチのボッスンが大好きすぎるコメントですね。いつもリアクション薄めなのに、今週は頻繁にコメントしてくれた! 情熱大陸のくだりが個人的最大風速でした。(今度は情熱大陸のテーマを作業用BGMにしてたら案の定捗らない)

ここまでギャグ回のラッシュが続きましたが、楽しかった夏休みは今話で終了。夏休み以後の篠原先生がキレッキレすぎて、何回アンケ票を投じてしまったことか。二学期以後はシリアス回の比率が増えてく予感。三度に一度はギャグがほしいです……。

* こっくり屋ぁい!(権平ひつじ)

アンケ以外からのプラスワン感想。

被害者の捨てキャラが、ついにカラー扉絵で登場!前後の流れを弄るなりして、主役をカラーに使えなかったのか。WJ表紙の隅っこで狐三郎が黄色いって再認識しましたもん。こっくり産の体毛情報のがカラーの優先度上位!? 47ページの大容量でこれは……構成の調整力にまず疑問です。

登場人物の個性、孤三郎との出会い方、不良の立ち回りと負けっぷり、ストーリー展開、いずれもベタベタです。連載二話分を使ってものすごいテンプレ感。犬太の素直じゃない優しさも、みゆきの健気さも、狐三郎の実直さも、すごく伝わってくる。それは権平先生の長所かもだけど、「全球直球勝負」はさすがに物足りません。安心感という意味では『最強ジャンプ』向きの作家でしょう。

しかし感想のために改めて読み返してみたら、これが怒濤の文章量で。低年齢層受けする絵柄や内容なのに、このテキスト量はミスマッチな感じが。やはりネームと構成力の欠点に目が向いちゃう。それでいて初読では気にならなかったので、絵がスッキリしていて読みやすかったのかもです。絵が上手でも読みづらいマンガってありますから、そこが権平先生の武器・持ち味なのでしょう。

読み切り作品は基本、見所を褒めて成長を期待する感想を書きたいんです。それでも辛口になるのは、「自分のこだわり」が作者のそれと乖離してるからなのか。権平先生がこの作品で一番こだわった部分って何だろう……。『オリジナリティ』でも『目新しさ』でもない、別の観点で重視したことがあったはずです。それを読み取れていない自分は「合わない読者」であり、国語力もマンガ力も足りていないんでしょうね...。

1795. 週刊少年ジャンプ11号

仕事で人差し指の指先を負傷して、タイピング能力が著しく低下中です。幸い金曜の話で仕事の影響は少なかったんですよ。この三連休でキチンと「指休め」しなきゃと誓ったんですが、WJが土曜発売だったので指休めませんでした。Mr.FULLSWING』で蛇神先輩が失明した(のに二塁打で結果はイマイチだった)ときの気持ち、今ならよく理解できそうです...。

今週のWJアンケートハガキ

純粋に『今週号で面白かったマンガ』へアンケ投票しています。本号の投票結果はこちら。

毎度おなじみ、判断に迷ったら「10ポイント配点投票方式」です。

作品 id:SnowSwallow id:iolite 合算
★ 恋するエジソン 4 2 6
ワールドトリガー 2 2 4
暗殺教室 2 1 3
  SKET DANCE 1 0 1
  めだかボックス 1 0 1
  斉木楠雄のΨ難 0 1 1
  NARUTO−ナルト− 0 1 1
  こち亀 0 1 1
  新米婦警キルコさん 0 1 1
  むこうみず君 0 1 1

新連載陣営のインパクト勝ち。相変わらず3番手以降は団子レースで決まりにくい空気があります。以下、本号でアンケート票を投じた作品を感想します。

* 恋するエジソン(渡邉築) - 第3話「占い少年と発明少女」・第4話「シミ」

一本目は全体的に残念。話の流れを崩さないでスピカの学校での評判を説明した展開は上手でした。と、褒め要素はこんくらい。レギュラーキャラも定着しない内から、ぽっと出の脇役に司会進行されてもね……。結果としてパロネタの滑りが必要以上に痛いです。占いの勘違いも途中で透けて見え、最後の1ページでオチを畳み掛けるスケット団テンプレとお察ししました。

二本目が本命。「シミを動かす」という奇抜な発想力の勝利でした。スピカじゃなくて渡邉先生が変態です。このアイデア、誰かと雑談して見いだしたパターンじゃあないですよね。自問自答の果てに繰り出した、人智を越える奇蹟のアイデアですよ。何となく昔のネタ帳眺めてたら『シミ じゃま 動かしたい』てダイイングメッセージの如きメモを発見。「何のこっちゃ...」と戸惑いつつネームにしたパターンだと予想しています(ついに作家の状況・心理を予想する感想に!)

宿題中に全力でマグカップ蹴ったり、シミが「最初から怖い」のもなかなかのハジケリストだけど、それすらもフリでしかなくって。絵心勝負やシミを足す本末転倒っぷり、人体のシミ&乳輪移動、シミぜんぶ退出、といった状況のエスカレーションが完璧! 一話どころか一コマ見逃しちゃうとついていけなくなる。乳輪の併走をオチの上限に設定したのも程よいインフレ具合でした。ああ結局は変態オチなのね。

全体通してスピカは謝罪すらせず、悪気もその自覚もない素直な性格が素敵です。初回冒頭で自己紹介した「ネジが一本飛んでる」という天然ボケが、ここでもよく活きています。騒動に巻き込まれるのが男子なら研介、女子ならオマミ、という住み分けなんでしょうか。明星荘メンバの個性や立ち位置が気になってきました。

* ワールドトリガー葦原大介) - 第1話「三雲 修」

たいていの葦原ファンは「リリエンタールのファン」であって、「葦原作品のファン」とイコールでないのが、葦原ファンの面白い特徴です。葦原先生的にも「ゆるキャラ・童話路線」のリリはひとつの冒険作にすぎなくて。本音は「ガチのSFが描きたい」だってコト、他作品を読んでいてすごく伝わります。作家と読者の「好みのズレ」が葦原先生の作風にどう影響してくのか。べつにファンじゃないWJ読者的には、外野で傍観しながらワクソワしております。

本格SFと銘打った予告時から「現実世界の現代が舞台なら生き残れそう……」と不安でした。ふたを開けたら「現実・空想世界の両方」が舞台。WJでの生存例は『PSYREN』を思い出します(せいぞん……?)。ちなみに生存しなかった例は『サクラテツ対話篇』でした、アナルナルナルー。SFといえば世界観・謎解き・意外性の完成度を求めちゃうのですが、本作は三拍子揃ってますね。「修の方がボーダー」「遊馬は近界人」とどちらも意表を突かれました。

モンスターやアクションは、前連載の経験が生かしたファンシーな描写で、リリファンにも好評を得そうです。バムスターはこれ、『3×3 EYES』でパイが乗ってたフェイオー(Google画像検索)と造型が被っててハラハラしちゃいます。

読み切り『実力派エリート迅』の主人公をシャンクス(保護者+指導者)のポジションで焼き直すパターンて、WJでは初の試みじゃないでしょうか。修の所属部隊には読み切り時のチームメンバも登場してほしいな。トリガーというキーワードも、読み切り『トリガーキーパー』が初出です。扉絵の黒髪少女は『トリガーキーパー』の金髪・異星人ヒロインを焼き直して再登板させるのかも。『ワールドトリガー』は葦原作品の集大成となるのでしょうか。もうこの際、リリエンタールの組織も再登板してくれたらいいのにな!

修のトリガーは未成熟なのか、地球人の平均がこの程度なのか、単にゲージ溜めらんなくて囮り役に回ったのか。遊馬との力差が大きすぎて、今後活躍の余地があるのか心配……。

* 暗殺教室松井優征) - 第29話「まさかの時間」

前感想の予想がなかなか的中して、嬉しさ補正もあって面白く読めました。

第一話に続き月(と予想中)で行われた殺せんせーの人体実験と、その顛末の回想が。殺傷された研究者の衣装が、シロが初回登場時に着ていた白衣と同じです。殺せんせーとイトナの触手は、同じ組織が触手テクノロジーを享受していたことに。また、組織と日本の防衛庁との繋がりも言及。物語の舞台が日本である根拠や必然性や隠されてるのかな。(というか殺せんせーが日本人なのか...)

黒髪の女性研究者は、触手の暴走で殺ったのか、合意の上での段取りだったかで、殺せんせーへの印象が正反対になります。殺せんせーが『人類と組織の双方を敵に回しながら世界を救う孤独のヒーロー』なら、故意の犯行じゃなかったのに誤解されてる扱いを期待しちゃいます。

で、殺せんせーがヒーローなら、触手はさながら悪の象徴。ホントに「触手」が月で研究されていたなら、触手とは技術じゃなくて、地球外生物の可能性を思わせます。暫定イメージは『寄生獣』で。ハリウッド映画的にもありがち設定ですし。「触手」は月の研究施設にしか存在しなかったはずで。施設は月ごと吹っ飛ばしたはずで。そこに触手持ちのイトナが登場して。あれほどの代償を払っても、未だ組織が触手を保有していたことに、殺せんせーはお怒りなんでしょうか。

触手バトルの影で、カルマくんの心理が気がかりです。コケにされて仕返さない彼じゃないでしょう。シロが外野から援護射撃したなら、先陣切って殺せんせーを援護するのはカルマじゃないかな。他のE組生徒もそれに続いて時間稼ぎしてくれそうです。

以前殺せんせーが片栗粉でダイラタンシー現象を授業して以来片栗粉Xの製法が頭の片隅に突っ掛かって、ぜんぜんヌけません……。

* べるぜバブ(田村耕平)

アンケ以外からのプラスワン感想。

まだ全話感想してた頃に連載が始まった本作。子供ウケはよさそうでアニメ化は予感しましたが、これほど長期連載するとはなぁ……。

過去に不良と悪魔で一戦交えといて、今さら不良同士のケンカを再開するデフレ展開には、ここ数週ポカーン状態でした。ただまあ、新たな敵勢力(たち?)が単なる不良じゃなくって、魔界と関係してそうな描写が。田村先生も一応パワーバランスとか整合性を勘案できる作家だったんだと見直しました。殺六縁起との抗争には、新しい悪魔の勢力が暗躍していて、終盤で石矢魔の不良たちが結束してく感じになるのかな。

新シリーズが始まると新キャラを大量生産して、読者に妄想・期待させるのが田村先生の手口です。でも今回は六騎聖と違って、主要六人+各勢力の幹部メンバまでネームドキャラで登場し、これはさすがに気持ちが切れそうです...。

竜族んときは新キャラが大量投入されても、「でもお雑魚なんでしょう?」と割り切って読めたのに。今回の場合、幹部同士のバトルまで描くノリなんだもの。この雑音が多すぎて主題に集中できない状況はけっこう苦痛なので、早急に因縁を作るなり、状況を動かしてほしいところです。

* むこうみず君(宮崎周平)

三連休なのでもひとつオマケ感想。

久保・空知杯エントリ作品です。空知先生の『銀魂』が人情回に入ったもんだから、肉薄したギャグ分を補給できて、これちょっとラッキーくらいな気持ちで読めました。

学生時代ってクラス替えのたび『いつも連んでる友達』が変わるんですよね。一本目と二本目で、友達ポジのレギュラーがさらっと入れ替わったのは、それを示唆した演出なのでしょう。こどもの残忍な友情劇がほろ苦いです。

二本目はページ埋め合わせ工作か、一ネタのイジリが間延びしていて、せっかく笑えたネタを腐らせているのが惜しいです。一本目は短編ごとにクスッとくるネタあり、テンポよしで、代原の一発屋で終わるには惜しい作家です。これでマンガ歴5ヶ月なら見込みアリでしょう。あと、こんな不条理ギャグ漫画描いといて、好きな漫画『スラムダンク』『ドラゴンボール』て、どゆこと。


麻生先生の巻末コメントは、WJ読者が総ツッコミしてそう。来週号は渡邉先生・麻生先生のリアクションが最大の見所となりました!

関連リンク

1794. 週刊少年ジャンプ10号

週末はたいてい仕事でお嫁さん不在なので、愛娘さんと二人で留守番しながら感想書いてます。子守りとWJ感想を同時にこなす秘密兵器が『ベビーチェアベルト(google検索結果)』です。

お嫁さんのを借りたんですけど、これで愛娘さんと合体して感想書いてると、ものの五分で片腕に寄りかかって寝てくれるんですよ。ウッヒョイかわいいぜお嬢ちゃん!(目的が変わってる) WJ感想の人は赤ちゃんが産まれてもコイツで戦えますよ!

今週のWJアンケートハガキ

純粋に『今週号で面白かったマンガ』へアンケ投票しています。本号の投票結果はこちら。

毎度おなじみ、判断に迷ったら「10ポイント配点投票方式」です。

作品 id:SnowSwallow id:iolite 合算
★ 恋するエジソン 3 5 8
ONE PIECE 3 0 3
斉木楠雄のΨ難 0 2 2
暗殺教室 2 0 2
  めだかボックス 1 0 1
  ハイキュー!! 1 0 1
  BLEACH 0 1 1
  新米婦警キルコさん 0 1 1
  クロス・マネジ 0 1 1

『恋するエジソン』の爆発力すげえ。

エジソン以外の配点は見事に割れました。先週言及した「2・3番手の選考が難しい」構図です。斉木・暗殺は決選投票に。ここまでアンケ未投票に『斉木』に軍配。でも暗殺教室だって総合力は負けてません。先週予想した内容の斜め上をいってたし。壁を粉砕して着席する登場シーンもバカカッコよかった。

世間じゃ大人気の『黒子のバスケ』は、ここまでゼロスコアです。家族会議でも言及した「脚本を作ってコピー技を誘導する」という予想も的中し、そこそこ読んでるはずなのに……。同様に『ベルゼバブ』『HUNGRY JOKER』『こち亀』もゼロスコア。単純に我が家(30代男女層)の感性に合いづらいマンガ、なのかもです。

以下、本号でアンケート票を投じた作品を感想します。

* 恋するエジソン(渡邉築) - 第1話「発明少女スピカ」・第2話「お掃除ロボット

スピカは相変わらずの発明少女、というか発情少女でした。

『メルヘン王子グリム』が大好きでした。読み切り『恋するエジソン』では渡邉先生の作風(かわいい変態女子)に磨きが掛かり、この連載化は心から熱望しておりました。頭にネジが刺さったスピンちゃんスピカちゃんのアブノーマルコメディ略してアブコメ、念願の始動です。満を持しての連載復活、渡邉先生おかえりなさい!

読み切り時よりも露骨な下ネタを控えてきました。お尻フェチの設定を引き継いだ一方、股間への執着はほぼ消えてます。この取捨判断が巧妙で、スピカを「少し妄想が暴走気味の女の子」風の、マイルドな変態少女として描けています。

対する寮長・研介も鈍感じゃないだけでとても好印象です。スピカの情熱を邪険にあしらつつも、発明の騒動には最後まで付き合ってやり、彼ってば優しいんです。一連の流れにイチャイチャ劇を組み込んでいて、アブコメ的にもラブコメ的にも安定感があります。『恋するエジソン』は偉人・科学マンガだから『HUNGRY JOKER』を脅かす存在だ!(真顔) と熱弁してきたのですが、ニセコイ』をも脅かす存在だ!(真顔)

登場人物と舞台環境を整理した一話目。ギャグを主軸に置き、徐々に周辺設定を掘り起こす展開が鮮やかです。主軸を殺さないように、キャラ名、学年、保護者の存在や明星寮の入居理由など、解説系の雑音を断ち切ったのが潔いです。食料を切らしたのは「寮長のお尻でご飯3杯」してるせい? 満腹銃のエネルギー切れは飛び降りた寮友に乱射したせい? こういう描写は伏線? 偶然? 侮れないです。「印鑑… ごちそうさまでした」は流行る!!

スピカの発明力をアピールした二話目。顔芸は衛藤ヒロユキ先生を思い出すタッチですよね。二話同時掲載なんだし、二話目の扉絵で「早くも大人気!」と煽ってほしかった。雑誌を参考に人型ロボを作っちゃうくだりは、ネタも秀逸だけど、スピカの『ネジ一本外れてる』個性を解き放っていて、彼女の魅力を上手に表現できていました。お掃除ロボは初見だとショボかったのに、二度読み返すと味わい深いなぁ。しれっと再登場を期待!

画力が乏しいですが、変態路線って2010年代は”キてる作風”なので、世間の評価も予想より高い気がします。セリフ回しのキレもいいし、ほんっと全盛期の衛藤ヒロユキ先生チックで大好きだ。目指せ、5分枠のフラッシュアニメ化!(←あまり盛り上がらないオアターン)

* ONE PIECE尾田栄一郎) - 第697話「取り引き」

泣けた! 海賊無双3があったらムービーで再現される回ですね。海賊は悪人なのに認めたい。海軍は正義なのに腐ってた。双方の矛盾を消化できずに葛藤し、今までの価値観にすがるG5の雑兵に心を打たれます。途中で気付くたしぎ、沈黙を貫くスモーカー、どちらも味な反応してますね。G5の雑兵たちがもっと魅力的で、宴会の馴れ合いがなきゃ、より男くさい泣かせシーンだったろうに、惜しいなぁ。ルフィ曰く「変な海軍」のG5は、コビーや青キジと「腐ってない方の海軍」を結成するんだろうな。

ここらでドレスローザ、パンクハザード、グリーンビットの位置関係を整理されたいですね。読者と危機感を共有できれば、この状況に思い入れを強く読んでいけそうです。「空の道」てことはドフラ、風に乗って移動してる? 無風のカームベルトにぶつかったのかな。

王家七武海を辞めたらシーザーを返す体で「交渉」を進めたローに疑問。ローたちの本命はカイドウです。ドフラにシーザーを返せば、カイドウのゾオン軍団が強化されます。つまりローは、どんな状況でもシーザーを譲れないはずです。交渉は必要ない。決別を宣告するだけでいい。ドフラが七武海を辞めないと確信して神経を逆撫でしたかったのか、「七武海を辞めてもシーザーを渡さない」という全面対決への布石か。次なるグリーンビットでルーキー世代が結集し、ドフラ崩しに拍車をかけてもらいたいです。

* 斉木楠雄のΨ難麻生周一) - 第37χ「Ψ恐!松崎先生」

ほう、クスコですか。(史上最低の書き出し)

楠子と自己紹介したシーンで急に意識が遠のいて、脳内で『クスコには管状膣鏡と溝状膣鏡があるんだけど、一般診断で使われるのが前者、一般家庭で使われるのが後者なんだ。溝状膣鏡は使い捨てのプラスチックタイプが清潔で好まれると思うよ!』と、勝手に解説を始めてしまうのでした。誰が聞いてくれることもなく。(仕方ないのでここに記録する)

松崎先生を良い役で描かれる雰囲気が出ていたので、最初から安心して読めました。ギャグよりマジメ寄りでドラマ展開したのは、イジメや教育のテーマに関わってくるせいでしょうか。最終的に不良たちが更正したのもほっこりポイントです。

斎木の女体化は読者人気を集め、今後も再登板するんでしょうね。今夏こそ燃斎の薄い本を読みたいオレとしては、燃堂だけは軽々と女体化を見破るシチュを期待して胸熱なんです。目の前の楠子をして「オゥ相棒 ラーメン食いにこうぜ お?」て平然と押してほしい。それでこそ理想の燃堂。(りそうのねんどう……?)

* 烈!!! 伊達先パイ(近藤信輔) - 最終話「伊達の終わり」

伊達政宗真田幸村が永禄10年生まれの同い年って話、この作品きっかけで調べて学習したんです。そういうウンチクを知り、俄然『伊達先パイ』に興味が湧いたのでした。作中で言及すれば、ファンも微増してたんです!

結局、本作にとって戦国武将の設定は文字通りのファッションでした。歴女を釣れればラッキーって感覚だったのかな。ドラクエの町人は近藤先生にこそ「武器や防具は持っているだけじゃ意味がないぞ!」と注意したげて。

個人的に『伊達先パイ』のピークは真田十勇士の回でした。期待していたネームドキャラが大勢登場し、各々がユニークな個性を発揮した回です。前回の感想から繰り返しになりますが、後半に登場した新キャラは良い意味でクセ者揃いでした。キャラの創造力は成長していますので、次回作には純粋に期待しています。願わくば、キャラだけで無く、元ネタ周辺の設定も活かせるお笑い作家になりますように。


「バトルでダメージを受ける女キャラ特集本」は同人誌にすべき題材ですよ。表紙を『斬』の月島さんにすれば、きっと売り上げ倍増です!

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1793. 週刊少年ジャンプ09号

iPhone の「シアトリズム ファイナルファンタジー」にハマってます。タイトルの「シアトリズム」の部分がいつも自力で思い出せなくて、とりあえず「モラトリアム FF」仮名で呼んでました。この感想を仕上げたあと、次のWJ発売までの猶予期間にプレイしていますし、意味はだいたい合ってた。

今週のWJアンケートハガキ

アンケート票の選考に際しては、純粋に『今週号で面白かったマンガ』へ投票するポリシーです。本号の投票結果はこちら。

ハガキを投函する手間隙かけてでも『自分の票を捧げたい』と積極的に思える作品は週に1・2本なんです。以降は横並びの団子レース。三番手(時には二番手も)の選考には毎度、苦労しています。最後は正直、その時時の気分や勢い、なのかも……。

今回も意見が分かれました。判断に迷ったら「10ポイント配点投票方式」です。

作品 id:SnowSwallow id:iolite 合算
暗殺教室 3 2 5
SKET DANCE 2 3 5
食戟のソーマ 2 2 4
  新米婦警キルコさん 2 0 2
  クロガネ 0 2 2
  斉木楠雄のΨ難 1 0 1
  クロス・マネジ 0 1 1

また『SKET DANCE』か……。

団子集団を抜けて三番手に抜ける作品はなにが違うのか。実感としては「鮮度」と思います。同じエピソードを何週も続けると中盤は停滞して結末で伸びる、てのは『バクマン。』でも語られました。印象の鮮度でいえば「中長編は”導入回”でも得票しやすい」感じなんです。一話完結のギャグやラブコメも「評価しやすい」「思い出しやすい」から得票率が高そう。

そもそもアンケハガキって固定ファンが固定票を投じてるイメージなんですけど、そんな彼らも三番手は浮動枠だと思うんです。となると新連載陣はまず三番目の椅子を勝ち取る戦略を立てるべき。短編を重ねる『キルコ』『ソーマ』は三番手で勝ちやすく、中長編が続く『HUNGRY JOKER』は劣勢だったりするのかな? この三作品は今後の動向に注目してます。

以下、本号でアンケート票を投じた作品を感想します。

* 暗殺教室松井優征) - Vol.28「映画の時間」

やっと暗殺教室に投票できました! 今のWJでは一番のファン作品です。我が家の一票はストイックすぎるんです。

暗殺の日常から離れた息抜き回でありながら、殺せんせーの謎に迫るキーワードも散らしつつ、新たな刺客を投入してつなぎ回も兼ねました。普通はこの情報量と急展開、一話に収まらない代物なんですよ。そこんとこを「いつもの暗殺教室」そのままに、自然な流れで無難にこなしてます。ほんっと松井先生すごいな。『クロス・マネジ』の早見さんは櫻井くんじゃなくて松井先生を褒めるべき。

「第二の転校生」は超人的な動体視力を使いこなすほどの身体・運動能力も備えてるんでしょうか。遠距離タイプの律に対し、彼には近接格闘の暗殺を期待! 同時期に開発されてたので、役割分担しての連係プレイも発揮してほしいな。彼も手入れされてE組に溶け込めば、二人の転校生が生徒たちの間接系・近接系を鍛えたりもできそうですよね。

「地球と月」のマークを背負ったフードや背格好は信仰者を思わせます。フードは白衣と融合しているので、科学信仰系の機関なんでしょうか。律もコテコテの技術者が開発してましたもんね。殺せんせーは「元人間」で「人為的に触手化した」と臭わせてますから、その背景に彼らの組織と繋がりがあっても不思議はありません。「月の落とし前」というセリフも因縁を感じます。

黒幕ぽい組織が登場したことで、妄想がとりとめなく膨らみました。殺せんせーの真意や過去って、ざっくりこんな感じだったら、どうかな?

  • 殺せんせーは元々この組織の人間で。
  • 組織の悪しき野望(世界征服的なアレ)を知ってしまい、それに反発して。
  • 自らが実験体となり超人化して。(デビルマン的なアレ)
  • 「君の兄」発言は「殺せんせーが超人化したテクノロジーを流用した」ニュアンスで。
  • その力で月の巨大な研究機関を破壊し、組織を裏切って。
  • 第一話で殺せんせ―が女性を抱いていたあの場所、月だったりして。
  • だけど一人の力では組織を壊滅できなくて。
  • 殺せんせーが目的を果たすには、自分に匹敵する暗殺力をそなえた同志が必要で。
  • 一年で地球を滅ぼす期限は、組織が計画を果たすリミットでもあり。
  • やつらにやられるくらいなら、殺せんせー自ら地球滅ぼすぞー!
  • というヒールに徹して、殺せんせーに立ち向かってくる骨太な奴らを鍛えて。
  • だから(細かい理由は不明だけど)E組生徒も鍛えていて。

組織を裏切り、世界からも悪者扱いされ、それでも真の黒幕と戦うため「悪役のレッテル」まで利用し、世界を救おうとしているのなら。渚がモノローグした「悩みながら世界を救う孤独のヒーロー」にぴったりな気がしません?

ところで、モバイル律はものすごくエロアプリですよね。素肌をタップし焦らしながら、スカートの裾をフリックし、両手首をダブルタップで拘束してからの(自主規制)長押しッ! 学友のさまざまなおさわりプレイにも自律的に応じてくれるのでしょう。

だれか! iPhoneとかではよ!!

* SKET DANCE篠原健太) - 第266話「ビーチ・ガールズ・コレクション」

スケット団はもっとチュウさん周辺の飲食物にいいかげん警戒すべき!

ゲスリング部がエロに必死すぎた結果、透明薬を使いこなして機転を利かせたり。難解な仕様を驚異的な学習能力で把握したり。透明を持続する動作など応用技を会得したり。なんという科学技術の発展あるある。人類ってこうやって文明力を高めてきたんだなぁ……。

この話って問題は二読目なんですよね。一読目はノリで笑いながら楽しめてるけど、二周目になると冷静に「このシーンってどういうこと?」とツッコミが入りはじめます。「透明同士なら姿が見えるんだ!?」「透明同士は会話できるんだ!?」「透明じゃないときは透明人間の姿も声も認識できないのか!」などなど。

(あえて読者が謎解きできるように)説明不足だった設定が、徐々に理解できてくるんですよね。一発スッキリしたら冷静に判断できる、これぞ賢者タイムです。ゲスラーたちはこの設定、ごく自然に受け入れていたのかと思うと……。本気のエロってべつにスッキリしなくてもずっと賢者タイムなんじゃあ。

* 食戟のソーマ附田祐斗佐伯俊) - メニュー8「春を呼ぶ皿」

大増23ページバトルを制したのは(我が家だと)ソーマでした。話数の読み方は「メニュー」でいいのかな?

一・二話と女性ゲストの超絶嫌味キャラが続いて心象最悪でしたが、最近は良心的なキャラに恵まれ、ようやく反発心を引っ込めて読めるようになってきました。

今回の創作料理『鰆おにぎり茶漬け』は、白米おにぎりを解きほぐす描写がまさしく雪解け。「春」のテーマとマッチしていて感動的でした。雪と白米を描き分けながらも被せて描写され、これぞ一流の画力ならではの説得力ですね。だけどメインの鰆は、あれだけ丁寧に説明されてる割に、なんという一口サイズ! ポワレを説明する前に食べ終わってそう。

今話のMVPは一色先輩で間違いないでしょう。裸エプロンをボケの道具として使ってる素振りが(本人には)ないので、押しつけ感がなくて好感が持てます。裏表ありそうな危険さを秘めつつも、挑発的なソーマを柔軟にやりくるめた器量は、本音が見えない分「ちょっと夜神月っぽい」とか思っちゃいました。

あとこれ、ソーマの料理を食べて半脱ぎになった=引き分けという判断基準なんすかね。今回の一色先輩は首の皮一枚で助かった、もとい、腰の棒一本で助かった感じです。春の生命力で力強くめばえた下半身と肩紐の三点でぎりぎり支えて、エプロンをキープ。伊達工ばりのブロックテクでした。

* クロガネ(池沢春人) - 第68本目「クロガネ」

アンケ票以外からのプラスワン感想。

池沢先生の作風はとってもマジメで堅実。だけど時々マジメなのにハメを外すんですよ。狙ったお色気(マネ要員)にはびくとも反応しないけど、狙ってないキメセリフ(缶コーヒーが甘すぎる)で笑っちゃう「ちぐはぐ」感。それが最初は、どうにも心地悪くって。だけどいつしか、クセになってゆき。気がつけばクロガネを言及しないと一週間がはじまらないほど、自分の中では存在感のデカいネタマンガになっていました。

クロガネ最大の「ちぐはぐ」は、主人公設定と剣道表現のギャップだったと思うんです。「桜一刀流」「さゆりの存在」「見えすぎる視力」「夢の中でも修行」など、非現実のメタ設定が豊富な主人公の人物設計。対して、剣道というスポーツに関しては、すり足の基礎から、三すくみで読み合う応用まで、かなり具体的に、堅実に、現実派な舞台表現を心がけていました。それらを堅実に融合してみたら、あちこち歯がゆい剣術になった(堅実だけに)。←これ毎回言わないと気が済まなくなってる

そうゆうとこ、リアル・アンリアルなスポーツを読みたい双方の読者から不満を抱かれ、板挟みになってそうでした。類型の『ヒカルの碁』とはなにかと比較しがちだけど、あちらはサイが成仏し「非現実性の切り捨て」を果たしてます。クロガネは「終の太刀」を継いでもさゆりが残留してて、これじゃ非現実を卒業できなくて少年誌でそのアンサーは心地悪い気が……。

最終話に対する純粋なコメントは家族会議の議事録に。一つ付け加えると、乙鳥って男を勘違いさせる仕草がホント極まってる。これってべつに恋愛感情はなくて「黒鉄くんが心配だったけどヒーローになったね! やったね!!」と讃えてるだけなんだけど、心理と行動がものすごく「ちぐはぐ」だぁ。

クロガネのこの感想を書いてる最中に「こうして一つの時代が終わりを告げた。『クロ・クロ時代』よ、安らかに……」とかブツブツ言ってたら、遠くでなんかやってたお嫁さん「クロス・マネジ終わってないよ?」と冷静なツッコミ。あ、うん……オレの中では終わった気になってたから……。


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1792. 週刊少年ジャンプ08号

こちら千葉でも先週明けに雪が積もりました。二週間長にわたるWJのない生活――その寂しさを埋めるように、大はしゃぎで庭の雪をかき集め、雪だるまを2セット作り、その代償に腰がバカになりました。一週間も経ってもこの腰痛、治る気配がありません。心は少年、でも体は今月末で32歳……。今週の感想は、部位破壊された腰との戦いですっ。

今週のWJアンケートハガキ

アンケート票の選考に際しては、純粋に『今週号で面白かったマンガ』へ投票するポリシーです。本号の投票結果はこちら。

今年再開したジャンプ感想ですが、以前とは勝手が違って大苦戦中です。最たる違いは、自分がジャンプを読み終えても感想できない点。そこからさらに、お嫁さんが読み終え、家族会議で本誌を総評し、アンケート対象を決定して、これでようやく感想のお題が決まります。どのマンガを感想するか事前に判断できないので、ネタの下準備もままなりません。以前までの感想はWJ本誌に三色ペンでメモを入れながら読み進めるスキル使いで戦っていた。だが現行のシステムは、以前のノウハウが一切通用しない……。まさにスキルが通用しないスタイルの戦い状態です。

腰痛、感想スタイル、そして合間に子守もしてお嫁さんのご機嫌とりも欠かせません。ジャンプ感想者はいったい何と戦ってるんだ……。

以下、本号でアンケート票を投じた作品を感想します。

* 銀魂空知英秋) - 第431訓「神ゲーと糞ゲーは紙一重

『原作者』という名の免罪符は、はたしてどこまで通用するのか。検証実験のために、超えちゃいけないラインを考えずにアクセル全開で踏み込みました。空知先生の笑いの原点は、このハラハラするスレスレ感だ! そう再認識させてくれた、たいへん満足のいく一本でした。ジャンルは『キミ(読者)が不安になるRPG』です。

銀魂ゲーの購入者は、本誌やコミックス購読者層に包含されていますから、本編でゲームをイジるこの企画は、絶大な宣伝効果があったハズです。けれども、すごろくのゲーム要素を初っ端から切り捨てたのは断捨離しすぎ。ああ、これが『銀魂無双(六)』の正体だったのか。

さらには「別業界だから」と素知らぬ顔で各所のメジャータイトルへ無礼を働くくだりも、読者のこっちが心配してしまうありさまです。新作ゲームを応援する企画が、ふたを開けたらゲーム業界の地雷原をさっそうと駆け抜けてバンナムと正面衝突事故を起こしてしまった……そうこれは事故なのです。

編集が通したネームなのだから、無双六でテイルズオブっても土管工がハザード起こしてもきっと許されるのでしょう。さてギャグ分が補給されたところで、次の9話がシリアスなバトル展開でも戦えますね!(ごめんなさい無理です)


* ONE PIECE尾田栄一郎) - 第695話「任せろ!!!」

役者が揃った! 脇役バトルもスカッと決着した! 久々にワンピを読んで昂ぶった回でした。バッファローとベビー5の実力が不明瞭だったので少し煮え切れませんが、ガロン砲の直撃に耐えるってそれ、実はすごく強かったんじゃあ……。けれどいいんでしょうか、出張版といえどガロン砲をそんな安売りしちゃっても。

パンクハザード編は麦わら一味に個々の敵幹部戦を立てず、それでいて仲間が新戦力を発揮する見せ場もあり、振り返るとバトル構成は工夫されていたと思います。かつての弱腰ペアが、ヘタれ台詞を繰り出しながらキメるシーン、いいですよね。緩急つけた『カッコイイ演出』は見事でした。ウソップの海楼石の錠は、シーザーがルフィたちを捕縛した時に使ったものを、牢から脱走する最中に拝借してたんでしょうね。全体を通してパズルが組み合わさってく感覚も気持ち良いです。

ナミさんが、その握り慣れたテンポの棒を淫靡にもてあそんでくださいました。彼女の白い指先は黒光りの剛直をうっすらと撫であげ、細い手首を返すテクでテンポのソレを天へ仰がせるのでした。『うっ……待ってくれ、急にそんな、乱暴な扱いぃッ』そんな情けない男の声を制するかのように「いいえ 逃げられません♥」とお姉さんがサディスティックにリードする言葉責め。同時にテンポの棒を下方へ「クイッ!!」と動物の躾けのような手際でねじ伏せるのです。バリバリッ、ゴロゴロッ――。そう、テンポの棒はガマンの限界を迎えたのだ。まるで雷にでも打たれたかのように。久々にワンピで昂ぶった回でした。

海上で目覚めた人物は青キジでしょうか。赤イヌに破れて行方知れずだった彼は、パンクハザード周域で傷を癒していたのかな? あるいはスマイリーの爆発で、この地に封じられていた身柄が解放されたとか?

ところで、クザンと麦わら一味の再開は、時系列的にフィルムZが最初なんでしょうか(まだ観てない...)。だとしたら、クザンはルフィらとパンクハザードで出会わないし、ドフラミンゴとぶつかる展開を予感させますね。海軍大将・クザンと王下七武海・ドフラミンゴの衝突となれば、立場の差から双方がどう出るのかも読んでみたいシチュエーションです。

* 新米婦警キルコさん(平方昌宏) - 第8話「キルコの自宅訪問」

いつものドタバタコメディ回、と思うなかれ!

キルコさんの過去設定を、この一話で小気味よく、話の本筋に違和感なく溶け込ませ、平常運転しながらさらっと解説してくるとは! 自分、平方先生を侮ってました。キルコさんの表情を100パターンくらい描写できるすごい萌え作家」と思い違いしてました。確かにこれまでの回も一話ごと無難に畳んでたけれど、平方先生の構成力、ひょっとしたら実はものすごいのかも……。

いやいや、何も平方先生やこの作品を馬鹿にして、こんな感想してんじゃないですよ。昨今は読み切りマンガなんて「ハイ! ここから主人公の過去回想と説明ね!」の紋切り型ばかりじゃないですか。コマの隙間を黒塗りにしたら許されるみたく勘違いしてる作家先生、すっごく多い! 今起こっている出来事に関係ないなら、そんな情報って冗長。隠し玉は絶妙のタイミングで明るみにするから効果的なのに。

そこいくと今週の話ってばスゴく締まってる。「そろそろキルコさんの過去を説明したいな〜。7才からファントムに所属してて〜、16歳の頃には隊長まで張ってて〜、”隻眼の山猫(ワン・アイズ・クーガー)”で〜!」とかゆう雑音が、驚くほどすんなりインプットできました。きっと『キルコの可愛らしい照れリアクション』がご褒美効果になって、説明の小難しさを解消したのでしょうね。

平方先生って、勉強用の教材マンガとか描いたら、その筋で才能発揮できそう。うん、やっぱデビューした雑誌を間違ってる気が……。

* ニセコイ古味直志) - 第58話「フンシツ」

アンケ票以外からのプラスワン感想。

オレがニセコイに抱いていたイメージは、率直にいって、ネガティブな感情ばかりでした。「どうせジャンプのラブコメなんて、毎話ハーレムと輪番でイチャイチャするために、ってつけた都合のいいイベントを用意して、惜しくもくっつかないけど可愛ければ許されて、でも終盤はマトモな人間性を発揮して付き合っちゃうんだろ?」とか、知ったふうに構えてたんです。

ある時、とある予想が思い浮かびました。それに至ったとき、「えっ、古見先生……まさかなの!?」と心底震えたんです。自分が、急に恥ずかしくなりました。ニセコイを甘く見ている読者は、もしかすると、古見先生の掌の上で踊ってただけなのかも……。

楽はハーレムラブコメ主人公が抱える三代疾患を例外なく患っています。これらはは現代日本でハーレムを形成するための技能です。二次オタ業界では長らく蔓延し、もはや常識と化しました。

  • 難聴 : 都合の悪い告白は絶対に聴こえない(でも終盤なら聴こえる)
  • 鈍感 : 都合の悪いアプローチは絶対に気づかない(でも終盤なら気付ける)
  • 痴呆 : 都合の悪い出来事は絶対に記憶から消去される(でも終盤なら思い出せる)


ところで楽は、幼少の頃に少女と「私達が大きくなって再会したら『鍵の中のものを取り出す』から、その時は結婚しよう」と約束しています。その願掛けとして、楽は錠のネックレスを、少女(達)は鍵を所有したのでした。

楽には幼少の記憶はありません。不自然です。楽は『難聴』『鈍感』『痴呆』を患っています。不自然です。楽は周囲の女の子から異様にモテますが、毎回フラグをへし折ります。不自然です。いったい『鍵の中のもの』とは何なのか。

鍵の中のものとは、楽が『誰か一人と結ばれる権利のようなもの』ではないでしょうか。

鍵を持つ三人の女の子。楽が自分の意思で誰か一人を選ばないかぎり、結婚できない制約があるとしたら。錠と鍵にかけた呪い(まじない)は、恋愛成就できない呪い(のろい)として、楽の純潔(!?)を守り続けているのだとしたら。一例をあげるなら、ザクシャインラブの呪いが「とてつもない恋愛成就力を発揮するお守り」の御利益を跳ね除けるほどの力を備えていたとしたら。

楽が選択した誰かの鍵で錠を開けたとき、『ニセコイ』が終わるとしたなら。

これまでバカバカしく感じて、もはや嫌悪感すら抱きはじめていた「イチャイチャするためのご都合展開」そのすべてが、一転して納得の伏線へと変貌します。タイトルの意味や受け止め方まで一変します。ニセコイはもはや、オレの中で「ラブコメマンガを皮肉る邪道マンガ」です。ニセコイの女子キャラに萌えてる読者も、知ってるふうに構えた読者も、双方にダメージを残すことになります。古味先生の一人勝ちですよ。

……という脳内設定を補完して読むと、あんなにも苦手だったニセコイの理不尽な展開が、ものすごく、緊張感たっぷり! 鍵の呪いは頑張り屋さんなので、どんな角度からでもトリッキーなフラグ破壊を見せてくれるのです。


プラスワン枠は読み切り作品を言及するために用意したものだったんですが、今週、天野先生に贈りたい言葉はこの一言だけです。『悪魔の焔』の見開き、めちゃんこカッコイイ! *1

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*1:これ以上の言及は誰も得しないので慎みます……!

1791. 週刊少年ジャンプ06・07号

こないだジャンプ感想したら、その晩には次のWJが店頭に並んでました。今一番書き初めしたい四文字熟語は「今期絶望」。数年前のトラウマがじわじわ思い出されてきます。読んだら感想、書いたら購読、力尽きるまで無限ループ。これすなわちジャンプ感想の呪い。

今週のWJアンケートハガキ

アンケート票の扱いに際しては、ファンの作品だからってごり押ししません。純粋に『今週号で面白かったと思ったマンガ』へ投票するポリシーです。本号の投票結果はこちら。

投票先の選考会議では意見が大きく割れまして。「愛娘さんの進学先は公立でいいか私立にするか」くらい真剣な家族会議が、ド深夜のAM2:00に意見交換されました。「過去のフルカラーは勝負の決着がついて爽快だったけど、今回は黄瀬が主人公みたいでフルカラーのタイミングを見誤ってる」「暗殺教室の全面プッシュがすごくて黒子のフルカラーが霞んだ」「キルコさんは表情の描き分けが細かい!」「ヒナタと結ばれてもカモフラだからナルサス派はまだ諦める必要ない」「スイッチかわいい」「HUNGRY JOKERにハマれない理由をそろそろハッキリさせたい」「食戟のソーマは料理マンガなのに、食材を踏みつけたりちゃぶ台返しするから論外」「銀魂、やっと終わった……」「伊達先パイを評価する前に岡田あーみんのこの話を読んで!(→その場で読まされるハメに)」などと全連載を講評してたらAM4:00を回ってた。

最後は「各自10点で配点して合算トップ3を投票方式」でまとめました。二時間がんばった末の採点結果はこちら。

作品 id:SnowSwallow id:iolite 合算
氷上布武 4 2 6
SKET DANCE 0 5 5
★ 烈!!!伊達先パイ 4 0 4
  ハイキュー!! 2 1 3
  ニセコイ 0 1 1


以下、本号でアンケート票を投じた作品を感想します。

大石先生がWJで読み切りを掲載させるだけで「豪華!」て感じちゃう。メゾペン時代から振り返ると、この貫禄はパないです。

いぬまるだしっ』のラスト一年は、大石先生が新たな作風を開花させた時期でした。100点満点のギャグマンガを描いても、その振り幅では「100点の笑い」しか得られない。そこで大石先生は、笑いとは対極の「泣き」へ読者の感情をいったん寄せて、マイナスからプラスへ感情を揺さぶる手法を確立しました。感動させてからギャグで落とすと、笑いの振り幅は最大で-100点→100点の限界突破・200点を叩き出せるんですよね。

このいわゆる「助走付きギャグ」は喜劇作家が用いる一つの手法です。『泣きゲー』や『泣ける映画』に笑い・ギャグシーンが多いのも、逆をいえば、いったん笑いに感情を振ることで「より深い感動」を狙えます。『氷上布武』はギャグマンガ家ではなく、喜劇作家・大石先生が放った集大成と言っていいでしょう。泣けるマンガは緩オタ層のファンが付きやすいので、次の連載がより盤石になれば嬉しいです。

氷上布武』のシナリオをベタに描くと暗くなりがちです。そこをギャグマンガ家のプライドでもって、「質より量」作戦で、つまらなくても・くどいほどネタを仕込む努力は絶賛したいです。ブログでマジメなこと言おうとすると、ついシリアス一辺倒な文章に寄りがちだけど(今のこれも)、それだと疲れちゃって、最後まで読まれないんですよねぇ。笑い所には個人差があるからネタは多いほどよい! てな精神から、軽妙なネタテキストでマジメなことを語れる人には憧れます。

ただ、トーコが信輔にしか見えない回想シーン(3コマ)を挟んだのは蛇足でした。これいった叙述トリックは、読者が(二周目を読むなりして)自分から気付いてこそ、心を打つものでしょう。作者側の過度なネタバレはせっかくの感動をチープにしちゃいますよ。低年齢層向けに難易度を下げてフォローしたんだろうけど、小中学生の読解力を舐めちゃイケない。大石先生の読み切りマンガを読もうと思うほどの小学生なら、絶対に気付いてもらえましたよ。

* SKET DANCE篠原健太) - 第264話「ゆるキャラサマー」

オレが点数振ってないマンガを感想するハメになるとか、ちょっとした企画倒れになってやしないかなコレ……。

今話は「フィギュア回」「折り紙回」系テンプレート。ボッスンがマニアックな界隈に足を突っ込み、ヒメコが一般人視点であれこれ突っ込んでくれる鉄板ネタでした。このパターンは見慣れてしまい、当初あった強烈な爆発力は損なっています。ただ、こち亀のうんちく回と比べたらコントも十分に捻られていて、個人的には好感を持てますし、今後も読んでみたいパターンです。

今回は変化球として、スイッチがおかしな方向に豹変させたのが面白かったです。本気になれないボッスンを妙な屁理屈コネコネでねじ伏せてくスイッチ。絶好調でしたね。「周囲に流されやすいボッスン」の性格も手伝って、理不尽な説得なのに決してご都合展開とは言わせない流れが楽しいです。

ゆるキャラに扮して「媚びたブログ」を書いたら人気が出ない! というくだりで、「本音垂れ流しだけど憎めない系キャラへ転身する」んだろうとオチが透けて読めました。願わくばもっと予想外で破天荒な落としどころを見たかったです。ワンダフルさんを尋ねてからの中盤以降、笑いはしても、意外性のあるアンサーが提示されなかったは口惜しいところ。まあ、篠原先生の芸風は良くも悪くも「定番」押しだもんね……。

* 烈!!!伊達先パイ(近藤信輔) - 第17話「真田、リバース」

誤解されたくないので断っておきますが、オレ、「烈!!!伊達先パイ」のこと今まで「面白いマンガ」って評価したことないッスからね。今週がすっごく光ってただけなんだから、勘違いしないでよね!!

真田十勇士の残り8人がずっとずっと気になってたんですが(登場しなくて気持ち悪かっただけで、あたしがアンタのこと意識してたってコトじゃないんだから、勘違いしないでよね!?)、まさか一話でチュウチョなく残り全員を投入してくるとは。見直しました、恐れ入りましたよ近藤先生。しかも十勇士の彼ら、全員いい感じに強烈な個性を放ってません? 一見してバラバラなのに「主君に忠誠誓ってる」点でメンバーが一丸となってますし。全体通して、すっごく雰囲気がいいんですよ。十勇士メインの話、もっと読みたいです。近藤先生、打ち切られる前にぜひともお願いしますよッ!

最初から登場していたキャラよりも、最近になって新登場したキャラのが面白い。これって単純に近藤先生が成長してるって証です。画力や脚本力はともかくも、キャラを作る力はあるんです。で、この作品がウケない理由の一つに、見た目が同じなモブキャラの存在があったと思うんですよ。あの手抜き感はまったくイケてません。ギャグマンガはしょせん、シナリオよりもキャラが命です。

リボーン然り、いぬまるだしっ然り、キリコさん然り、新キャラを投入し続け、ウケたキャラにスポットを当てて、そこからマンション転がすみたく話を広げてファンを増やしてかなきゃ。キャラがウケなきゃ沈むのは、一話完結型短編ギャグマンガの宿命でしょう。件のモブキャラ複製は、個性が分散して思い入れが強まらず、ずさんで投げやりな印象だけを置いていきました。

……とまあ、ケチョンケチョンに書いてしまいましたが、その反動を衝いて好感を得たのが、皮肉にも今週の真田十勇士なのです。そういう意味では、この作品の一生命を賭して「引いてダメだから押してみた」作戦を実行し、マイナスから急にプラス印象へ押し上げ、今こうしてオレが感想を書くに至ったわけです。もうわけわかんないけど、なんだかすごくすごい運命力を感じます。

* クロス・マネジ(KAITO) - 第16話「豊口お前が」

アンケ票以外からのプラスワン感想。今週書かないと一度も言及できない予感がしました。なんとなく空気を読んでのチョイスです。

まさか! なんてこった! ついにラクロスの試合が! けれど具体的なラクロスのプレイがさっぱり読み取れませんね。いつぞやに観た練習試合のやりとりと大差ありません、なんてこった! 今作品におけるラクロスってのは、『ヒカルの碁』的なスタンスのアレなんでしょうか。プレイ人数・時間・コート・道具の説明までは描いたから、興味があったら実際にプレイしてみてね! これはステマではない、普及活動だ!

KAITO先生の描く女子にはあまり惹かれるものも無いのですが、しかし、健全な女子たちがスポーツに励むシーンには、心が清まる思いがしました。すくすく育ったうら若き乙女たちが、イビツなかたちの硬いスティックを一生懸命に握りながら、一個のたいせつなボールを時に優しく包み込み、時に激しく奪い合うのでした。豊口の能力も明かされ、「無駄に動き回る体力」「予測不能な動き」でディフェンダーの裏筋を攻め、これでもって棒と玉を丁寧にもてあそぶ射精管理! もとい、クロス・マネジです。

しっかし主人公の櫻井くんは、今までも所々、その無策で場当たり的な局面が目立ちましたが、今回も「腹踊り」て。KAITO先生の発想は狂っとるよ……。ドスベりしたのを豊口は笑ってくれましたが、これ、言っとっけどさ、お情けでフォローしてもらえただけだからね? そんな彼女をして「それでもあいつにあった長所」てどういう了見だ櫻井くん!

そもそも豊口には「理由もなく仲間を惹きつけ信頼される能力」や「ドスベりした空気をいち早く察知・換気する能力」など、社会人なら誰もがあこがれ、欲する、プラスの方のアブノーマルスキルホルダーですよ。しかもWスキルて。「テクニックもないしセンスもからっきし」て、その腹芸でドスベリしといて、よくぞ言えるもんですわ……。

一方で「パスの受け手を探し続けて豊口と出会えた」という種明かしは見事で、ここに至るまでの演出は見事です。このシーンは、ずっと温めていたプロットなんでしょう。この作品は完成度の高い・低い場面の落差が激しいです。作者が深く練っていなかったプロットのワンシーンで、尺と展開の都合から場当たり的に切り抜けようとしたアプローチが多すぎた悪印象が、あまりにも蓄積されすぎたかと思います。


前回の感想から中休憩を入れず、勢いだけで感想しました。仕事が始まったらなぁ、こうはいかないよなぁ……。

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